構えの理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/18 10:25 UTC 版)
「ドミトリー・ウズナーゼ」の記事における「構えの理論」の解説
学派の中心をなす概念が「構え」(ウスタノーフカ:установка)の概念であるので、人格についての体系は「構えの理論」と呼ばれている。心理学の出発点は心理諸過程にではなく、生きている個人にある。現実との能動的な関係を維持するものは、個々別々の心理活動ではなく、主体である。そのため、心理学も主体とその人格の研究を中核とするものであるべきである。意識現象は、主体の変形であるとみなされる。 また、欲求の概念抜きに生活を考えることはできない。主体の研究にあっては、この欲求の概念が基本的な役割を果たす。さて、欲求の充足のためには、適切な「場面―手段」が不可欠である。欲求及び「場面―手段」の双方が既に存在するとすると、主体の中には欲求充足のための行為を行う準備性が現れてくる。これが、行為遂行のための「構え」である。構えは環境と心理機能との間の必要不可欠な環である。 構えは環境の作用を媒介し、主体の活動の性格を決定するが、構え自体は、個々の体験として意識の中に反映されるわけではなく、また、意識現象でもない。 構えの実験の例。問題を解こうとする欲求が予め生起している被験者が目の前に提示された大きさの異なる物体の大小を15~16回重ねて判断すると、被験者には、それらの物体が等しくないと評価する構えが現れる。この構えはかなり強固なものであり、次に二つの大きさの等しい物体を提示すると、被験者には、それらは等しくないように見える。 ここでは、次の点が重要である。ここで示したようなやり方である一つの感覚様相(ここでは視覚様相)に固定された構えは、他の感覚様相(例えば触覚様相)にも現れてくるのである。構えは特別の心理現象ではなく、「局在する」現象でもなく、人格の一般的な状態、全体としての主体の状態の様態であることを、それは意味する。構えの変化の中に主体の心理学的な本質が現れてくるのである。人格の様態としての構えの詳細な研究、構えの変種、構えの個人差、構えの病理的な形態、構えの発達的特質についての研究は、グルジア心理学の成果である。
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