最初の和英辞典
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/10 16:57 UTC 版)
詳細は「和英語林集成」を参照 日本最初の和英辞典は1867年(慶應3年)に横浜で出版された、美国平文(アメリカのジェームス・カーティス・ヘボン)編集による『和英語林集成』である。和英20772語と英和10030語を、アルファベット順のローマ字の見出しに片仮名表記と漢字表記を添え、品詞を明示し、英語による語釈を加えた上で、用例と同義語を記した。 ヘボンは幕府洋学調所に印刷を打診したが、未だ印刷技術や資源が十分でなく、やむなく上海の美華書院 (American Presbyterian Press) に原稿を運び、印刷した。片仮名と平仮名及び日本の漢字の活字は、同行した岸田吟香の書による。印刷費は約1万ドル、紙は英国製で2千ドルかかったため、販売価格は約20両と言われている。日本語を初めて横組みした出版物でもあり、明治30年頃まで他の辞典を寄せ付けないほどの影響力を持った。ヘボンは後に聖書を日本語に翻訳しており、そのためにも日本語を学習する必要があった。出来上がったこの辞典は聖書翻訳のためのものに留まらず、広く一般の用を目的に売り出され、日本を世界に広く開いたといえる。また、同時にロンドンでも発売され、初めての近代日本語辞典として列国が使用した。 1872年(明治5年)には、和英22949語と英和14266語を収録し、政治的・社会的な変化と西洋科学・文学・制度の導入を反映した第2版が出た。Introductionでの日本語概説と日本文法を大幅に増加している。この編纂には奥野昌綱が協力した。1877年(明治10年)発行の日本初の和独辞典『和獨對譯字林』(ルドルフ・レーマン)は、このヘボン辞書第2版の独訳である。 1886年(明治19年)には第3版が出る。和英35618語、英和15697語と、新しい時代の語彙とともに、古事記・万葉集などから古語も収録した。現代語の発音に近いローマ字綴りとし、これがヘボン式(標準式)ローマ字と呼ばれるものである。日本人は高橋五郎が編集に協力した。 ヘボンは編纂に当たって、江戸末期の諸文献にあたり、医者として接した様々な身分の日本人と接し、どの発音がもっとも正式かと生きた日本語の収集に当たっているため、この辞典は当時の日本語を反映する資料として重要なものとなっている。このため、現代でも小学館『日本国語大辞典』や新潮社『新潮現代国語辞典』には、ヘボン語彙とヘボンの用例が掲載されている。金田一春彦によれば、高橋五郎の『和漢雅俗いろは辞典』や大槻文彦の『言海』などの近代的国語辞典に影響を与えているという。 『和英語林集成』は明治学院大学図書館が2006年3月、デジタルアーカイブを作り、原稿から各版・縮約版・偽版までを比較検索できるシステムを公開している。
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