放物型
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 07:21 UTC 版)
SL(2, C) の放物型要素は P 4 = [ 1 α 0 1 ] {\displaystyle P_{4}=\left[{\begin{matrix}1&\alpha \\0&1\end{matrix}}\right]} で、リーマン球面上に ξ = ∞ を唯一の不動点として持つ。立体射影の下、実軸に沿った通常の平行移動として現れる。 スピノル変換により、次の(ローレンツ変換を表わす)行列に対応づけられる。 Q 4 = [ 1 + | α | 2 / 2 Re ( α ) Im ( α ) − | α | 2 / 2 Re ( α ) 1 0 − Re ( α ) − Im ( α ) 0 1 Im ( α ) | α | 2 / 2 Re ( α ) Im ( α ) 1 − | α | 2 / 2 ] {\displaystyle Q_{4}=\left[{\begin{matrix}1+\vert \alpha \vert ^{2}/2&\operatorname {Re} (\alpha )&\operatorname {Im} (\alpha )&-\vert \alpha \vert ^{2}/2\\\operatorname {Re} (\alpha )&1&0&-\operatorname {Re} (\alpha )\\-\operatorname {Im} (\alpha )&0&1&\operatorname {Im} (\alpha )\\\vert \alpha \vert ^{2}/2&\operatorname {Re} (\alpha )&\operatorname {Im} (\alpha )&1-\vert \alpha \vert ^{2}/2\end{matrix}}\right]} = exp [ 0 Re ( α ) Im ( α ) 0 Re ( α ) 0 0 − Re ( α ) − Im ( α ) 0 0 Im ( α ) 0 Re ( α ) Im ( α ) 0 ] {\displaystyle ~=\exp \left[{\begin{matrix}0&\operatorname {Re} (\alpha )&\operatorname {Im} (\alpha )&0\\\operatorname {Re} (\alpha )&0&0&-\operatorname {Re} (\alpha )\\-\operatorname {Im} (\alpha )&0&0&\operatorname {Im} (\alpha )\\0&\operatorname {Re} (\alpha )&\operatorname {Im} (\alpha )&0\end{matrix}}\right]} これにより生成される2パラメータアーベル部分群は、α を複素変数とすることにより得られる。対応する天球状の連続変換は(恒等変換以外は)北極においてある大円に接する円に沿って点を動かす。北極以外の点は全てこの円に沿って動く。 放物型ローレンツ変換はしばしばヌル回転 (null rotations) と呼ばれる。なぜなら、回転が時間的ベクトルを保存したりブーストが空間的ベクトルを保存するのと同様に、ヌルベクトルが保存されるからである。この型のローレンツ変換は恒等変換以外の四種類のローレンツ変換(楕円型、双曲型、斜航型、放物型)の中でも最もなじみのないなので、放物型ローレンツ変換の例がどのような影響をミンコフスキー時空上に与えるのかをここで例示する。 上の行列は次の変換を与える。 [ t x y z ] → [ t x y z ] + Re ( α ) [ x t − z 0 x ] + Im ( α ) [ y 0 z − t y ] + | α | 2 2 [ t − z 0 0 t − z ] {\displaystyle \left[{\begin{matrix}t\\x\\y\\z\end{matrix}}\right]\rightarrow \left[{\begin{matrix}t\\x\\y\\z\end{matrix}}\right]+\operatorname {Re} (\alpha )\;\left[{\begin{matrix}x\\t-z\\0\\x\end{matrix}}\right]+\operatorname {Im} (\alpha )\;\left[{\begin{matrix}y\\0\\z-t\\y\end{matrix}}\right]+{\frac {\vert \alpha \vert ^{2}}{2}}\;\left[{\begin{matrix}t-z\\0\\0\\t-z\end{matrix}}\right]} ここで、一般性を失うことなく Im(α) = 0 とする。この変換を実パラメータ α で微分し、α = 0 で評価することにより、次の対応するベクトル場(一次線形微分作用素)が生成される。 x ( ∂ t + ∂ z ) + ( t − z ) ∂ x {\displaystyle x\,\left(\partial _{t}+\partial _{z}\right)+(t-z)\,\partial _{x}} これを関数 f(t, x, y, z) に適用し、不変であること、つまりこの変換により消滅することを要請すると、その結果得られる一次線形偏微分方程式は次の形式で表現できる。 f ( t , x , y , z ) = F ( y , t − z , t 2 − x 2 − z 2 ) {\displaystyle f(t,x,y,z)=F(y,\,t-z,\,t^{2}-x^{2}-z^{2})} ここで F は「任意の」滑らかな関数である。F の引数は、この放物型変換により世界点がどのように移動するかを記述する三つの「回転不変量」で、これらは不変に保たれる。 y = c 1 , t − z = c 2 , t 2 − x 2 − z 2 = c 3 {\displaystyle y=c_{1},\quad t-z=c_{2},\quad t^{2}-x^{2}-z^{2}=c_{3}} これらの右辺の定数に実数値を選ぶことにより三つの条件が得られ、それがミンコフスキー時空上の曲線を指定する。この曲線は変換の軌道である。 これらの回転不変量の形式から、フロー線(軌道)がシンプルに説明できることがわかる。あまり重要でない座標 y を無視すると、各軌道は「ヌル平面」 t = z + c2 と「双曲面」 t2 − x2 − z2 = c3 との交差線となる。c3 = 0 の場合は放物面は光円錐へと縮退し、軌道は対応するヌル平面上の放物線になる。 光円錐上のある特定のヌルラインは不変に保たれる。これは上述したリーマン球面上の不動点に対応する。原点を通る別のヌルラインは変換により「円錐の周りに振り回される」。そのようなヌルラインが α が増えるにつれどのように動くかは、上述の天球上のある円形フロー線に沿って動く点に対応する。 代わりに Re(α) = 0 とすると、似た軌道ではあるが x と y の役割が逆転したものが得られる。 放物型変換はヘリシティ |h| ≥ 1 の質量のない粒子(たとえば光子)のゲージ対称性に繋がる。さきほど明示した例では、z 方向に質量のない粒子は運動しており、その四元運動量は P=(p,0,0,p) であり、運動中の「小群」内では上で示した x-ブーストと y-回転の組み合わせ Kx−Jy により変化しない。このことは明示した変換則から明らかである。P は光的ベクトルであるから不変であり、したがって α を変化させても何も影響を受けない。上の特殊な場合では c1 = c2 = c3 = 0 である。(類似の生成子 Ky+Jx と Jz も E(2) と同型な光的ベクトルの小群を構成する。)
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