性質および例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/05 08:02 UTC 版)
正規数の概念は、1909年にボレルによって導入された。彼は「ほとんど全ての」実数は正規数であることを証明した。彼が証明したことを正確に述べると、2 以上の任意の整数 r に対して r 進正規でない数の集合はルベーグ零集合(ルベーグ測度が 0 である集合)である。可算個のルベーグ零集合の和集合はやはりルベーグ零集合であるから、正規でない数の集合もルベーグ零集合である。この事実から正規数が存在することが従うが、その例は1917年にシェルピンスキーによって初めて与えられた。 有理数はいかなる基数に関しても循環小数なので、定義より明らかに正規ではない。非正規数の集合はルベーグ零集合であるのである意味「小さい」が、非可算無限集合であるのでその意味では十分「大きい」とも言える。実際、例えば十進小数表示において 5 を含まない実数は明らかに非正規であり、そのような数は非可算無限個存在する。 チャンパーノウン定数 0.1234567891011121314151617... は、十進小数表示において自然数が順に連なっている実数である。これは基数 10 に関して正規であるが (Champernowne, 1933)、他の基数に関しては正規か否かわかっていない。 コープランド-エルデシュ定数 0.235711131719232931374143..., は、十進小数表示において素数が順に連なっている実数であり、これもまた基数 10 に関して正規である (Copeland and Erdős, 1946)。 正規数の例として人工的に作られたものではない数たちの正規性を示すことは一般には難しい。例えば、2の平方根、円周率、ネイピア数、log 2 といった数学的に重要な定数が正規数であるか否かは未だに知られていない。いくつかの傍証によってこれらは正規数であると強く信じられているが、十進小数表示においてそれぞれの数字が無限回現れるか否かさえ知られていない。2001年の論文で、Bailey と Crandall は「無理数かつ代数的数である数は正規数である」と予想した。しかし解決への道のりは遠く、反例も知られていないし、正規である代数的数の例も知られていない。 以下、その他の正規数の性質を列挙する。 正規列に対して、有限個の文字を加えたり取り除いたり変更したりといった操作をしても、正規列のままである。この事実は文字列の正規性の定義より明らかである。故に正規数の定義において、小数点より前の部分を含めるか否かは本質的ではない。 任意の正の数は二つの正規数の積である。これはより一般的な次の事実より導かれる。正の実数全体の集合を R+ とする。その部分集合 X について、差集合 R+ - X のルベーグ測度が 0 ならば、任意の正の数は二つの X の元の積に表せる。 x が r 進正規数かつ q が有理数であるとき、q x は r 進正規数である (Wall, 1949)。 整数の増大列 (an) が条件「任意の実数 α < 1 と十分大きな自然数 N に対して N 以下の an の個数が Nα 以上となる」を満たすとき、an の r 進表示を順に小数点以下に並べてできる実数は r 進正規数となる (Copeland and Erdős, 1946)。このことから、チャンパノウン定数やコープランド-エルデシュ定数が十進正規数であることが従う(素数の列が条件を満たすことは素数定理より直ちにわかる)。 文字列が正規であることは、次のように定義をやや修正した条件を満たすことと同値である。「自然数 k に対して、文字列を k 個ずつのブロックに区切る(無限列 S に対して、最初のブロックは S [1 ... k]、次のブロックは S [k + 1 ... 2 k] のように)。これらのブロックたちにおいて、長さが k の文字列たちが漸近的に同じ頻度で現れる、という性質を任意の k に対して満たす。」この同値性は、本質的には Ziv, Lempel (1978) の仕事であるが、明示的に述べたのは Bourke, Hitchcock, Vinodchandran (2005) である。 このことより直ちに次の事実が従う。r 進正規数であることと、任意の自然数 k に対して基数 rk に関する単正規数であることは同値である。 したがって、正規数であることと、全ての基数に関して単正規であることは同値である。 x が r 進正規であることは、数列 (rn x)n の小数部分がワイルの意味で一様分布することと同値であり、ワイルの判定法(英語版)により任意の自然数 m に対して次の式を満たすことと同値である 。 lim n → ∞ 1 n ∑ k = 0 n − 1 e 2 π i m r k x = 0 {\displaystyle \lim _{n\to \infty }{\frac {1}{n}}\sum _{k=0}^{n-1}e^{2\pi imr^{k}x}=0}
※この「性質および例」の解説は、「正規数」の解説の一部です。
「性質および例」を含む「正規数」の記事については、「正規数」の概要を参照ください。
- 性質および例のページへのリンク