性質と主予想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/03 14:24 UTC 版)
正整数 r に対し、正整数 r 個の組 k = (k1, ... , kr) をインデックス (index) と呼び、最後の成分 kr が 2 以上であるときとくに許容インデックス (admissible index) と呼ぶ。また、インデックス k = (k1, ... , kr) の成分の個数 r を k の深さ (depth)、成分の総和 k1 + … + kr を k の重さ (weight) と呼び、それぞれ dep(k)、wt(k) と書く。このとき上述したように多重ゼータ値 ζ ( k ) {\displaystyle \zeta ({\boldsymbol {k}})} が定義され、k が許容インデックスなら定義の級数は収束する。 2 以上の整数 k に対し、重さが k のインデックスからできる多重ゼータ値が Q 上を張る空間、つまり Z k = s p a n Q { ζ ( k ) ∣ w t ( k ) = k } {\displaystyle {\mathcal {Z}}_{k}=\mathrm {span} _{\mathbb {Q} }\{\zeta ({\boldsymbol {k}})\mid \mathrm {wt} ({\boldsymbol {k}})=k\}} を考え、これを Z k {\displaystyle {\mathcal {Z}}_{k}} と書く。また、 Z 0 = Q {\displaystyle {\mathcal {Z}}_{0}=\mathbb {Q} } , Z 1 = { 0 } {\displaystyle {\mathcal {Z}}_{1}=\{0\}} と考えることにする。このとき、ザギエによって以下が予想されている: 数列 {dk} を d0 = d2 = 1、d1 = 0、dk+3 = dk+1 + dk (k ≧ 0) で定義すると、 d i m Q Z k = d k {\displaystyle \mathrm {dim} _{\mathbb {Q} }{\mathcal {Z}}_{k}=d_{k}} であろう。 重さ k の許容インデックスの個数は 2k-2 なので、2k-2 は Z k {\displaystyle {\mathcal {Z}}_{k}} の上界である。以下は k = 12 までの値の表である: 重さ k予想次元 dk上界 2k-201 10 21 1 31 2 41 4 52 8 62 16 73 32 84 64 95 128 107 256 119 512 1212 1024 このように、一般に dk は 2k-2 よりはるかに小さいので、予想が正しければその分 Q 上で多重ゼータ値間の線形関係式が成り立つことになる。よって、多重ゼータ値の研究の中心はその間に成り立つ関係式族を発見することとなっている。そのようなすべての関係式を導出できることが証明された族は発見されていないが、全関係式を導くと予想されている関係式として アソシエータ関係式 正規化複シャッフル関係式 合流関係式 川島関係式 積分級数等式 がある。なお、ピエール・ドリーニュ、アレクサンダー・ゴンチャロフ、寺杣友秀によって不等式 d i m Q Z k ≤ d k {\displaystyle \mathrm {dim} _{\mathbb {Q} }{\mathcal {Z}}_{k}\leq d_{k}} が証明されている。この結果の証明はモチーフ論に依存しておりそれ自身難解であるが、残された逆向きの不等式は多重ゼータ値間の代数独立性などの問題を孕んでおり、非常に難しい問題とされている。
※この「性質と主予想」の解説は、「多重ゼータ値」の解説の一部です。
「性質と主予想」を含む「多重ゼータ値」の記事については、「多重ゼータ値」の概要を参照ください。
- 性質と主予想のページへのリンク