性質および諸概念
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/06/20 15:03 UTC 版)
フレシェ空間に連続ノルムが存在するときには、半ノルム族の各半ノルムに連続ノルムを加えて、ノルムにすることができる。C∞([a,b]) や X がコンパクトなときの C∞(X, V) あるいは H などのバナッハ空間はノルムを持っているが、 Rω や C(R) は持っていない。 フレシェ空間の閉部分空間はフレシェ空間である。また、フレシェ空間の閉部分空間による商はフレシェ空間である。フレシェ空間の有限個の直和もフレシェ空間になる。 ベールの範疇定理に基づく関数解析学の重要な主張のいくらかはフレシェ空間においても成立する。例えば、閉グラフ定理、開写像定理など。 X と Y がともにフレシェ空間のとき、X から Y への連続線型作用素全体の成す空間 L(X,Y) は自然にフレシェ空間になることはない。これはバナッハ空間論とフレシェ空間論との大きな違いであり、フレシェ空間上の写像の連続的微分可能の定義を改めることが必要となる(ガトー微分): X と Y がフレシェ空間、U が X の開部分集合とし、写像 P: U → Y および x ∈ U, h ∈ X をとる。写像 P が点 x において h の方向へ微分可能であるとは、 D ( P ) ( x ) ( h ) = lim t → 0 1 t ( P ( x + t h ) − P ( x ) ) {\displaystyle D(P)(x)(h)=\lim _{t\to 0}\,{\frac {1}{t}}{\Big (}P(x+th)-P(x){\Big )}} D ( P ) : U × X → Y {\displaystyle D(P):U\times X\to Y} が連続であることとする。フレシェ空間の積はやはりフレシェ空間になるので、さらに D(P) を微分することを考えることができて、この方法論で P の高階導関数を定義することができる。 P(ƒ) = ƒ′ で定義される微分作用素 P: C∞([0,1]) → C∞([0,1]) はそれ自身無限回微分可能であり、一階導関数は C∞([0,1]) の任意の二元 ƒ および h に対して D ( P ) ( f ) ( h ) = h ′ {\displaystyle D(P)(f)(h)=h'} で与えられる。これはフレシェ空間 C∞([0,1]) の(有限な k に対する)バナッハ空間 Ck([0,1]) に対する優位性である。 連続的微分可能写像 P: U → Y に対して、微分方程式 x ′ ( t ) = P ( x ( t ) ) , x ( 0 ) = x 0 ∈ U {\displaystyle x'(t)=P(x(t)),\quad x(0)=x_{0}\in U} は解を持たないかもしれないし、持ったとしても必ずしも一意ではない。これもバナッハ空間の場合との明確な違いである。 逆写像定理はフレシェ空間においては成り立たない(部分的にはナッシュ・モーザーの定理で置き換えられる)。
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