御標
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「モノトーンミュージアムRPG」の記事における「御標」の解説
御標(みしるべ)とはこの世界を創造した神が世界に住まうものに与える「導き」と信じられている預言詩であり、運命と同一のものとされる。『モノトーンミュージアムRPG』におけるもっとも重要な設定である。 御標は詩のような「言葉」として人々の前に予告なく現れる。それは天からの声として現れることもあれば、路地の童子が何かに憑かれたように御標の言葉を語りだすこともある。自動書記のように無意識に御標の文を綴りだすこともあれば、城壁に落書きのように御標の文がいきなりに現れることもある。御標はそれを直接認識した者に対して「これは御標である」と絶対的な理解を与える。しかし、御標が下された後に、その内容をただ言葉や文にしても絶対理解の力は二度と与えられない。御標の内容を人づてに聞いたとしてそれが本当に御標なのかどうかは誰にもわからないのである。ただし、「語り部」と呼ばれる能力を持つものだけは、誰かから聞いた御標の内容を「これは御標である」という絶対的な理解を付与して他人に伝える力をもつ。 御標を直接に認識してしまった者は、その御標に従うことがこの世界の住人において常識となっている。御標は特定個人に与えられることもあれば、集団へ同時に与えられることもある。御標が集団に与えられた場合は、その御標を守るためのコミュニティを形成することとなり、すなわちそれが「国」の元となることもある。御標が王だけに与えられて、何も知らない国民に御標に沿った生活を強制するようなケースもある。 ある御標の例をあげればこのようになる。 「 そして、お姫様が怪物に飲み込まれたとき青い眼の青年が立ち上がったのです青年はお姫様を助け出しふたりはいつまでも幸せに暮らしましためでたし、めでたし 」 —『モノトーンミュージアムRPG』P182より この御標がもしも「青い眼の青年」に与えられた場合、彼はこの御標を成立させるためにお姫様を助ける冒険に出ることが求められる。御標は世界の理に従って語られるため、御標が語っていることに従えば、御標が語っている通りの出来事が発生する。ただし、人々が自由意志を持って行動することだけは御標は強制することはできない。逆に言えば、自由意志の行動を防ぐために御標は「物語の主要なキャスト」(この例で言えば主人公役である「青い眼の青年」)に脚本を先に提示していると捉えることもできる。もしもお姫様でも怪物でも青い眼の青年でもない、物語の無関係者に御標が与えられた場合でも、その人物は御標を成立させるために努力しなくてはならない。自分が「青い眼の青年」でないならば、この青年を探し出す努力が求められる。自分に御標が与えられたならばそこには神の深遠な意図が隠されているはずと考えるのがこの世界の一般的な住人の姿である。 左の地の住人がなぜ御標を守るのかというと、それには主に二つの理由が存在する。 まず一つは、御標に従えば、必ず人にその御標に語られる幸福な結末を約束するからである。御標の多くは「めでたし、めでたし」という結句で終わる。これは御標が歪められない限りは必ず幸福な結末を持つという証明である。上述の御標が達成されれば、「ふたりはいつまでも幸せに暮らす」というハッピーエンドは物理法則のように必然として発生する。お姫様が青年と暮らすようになる理由はいろいろなことが考えられるが、一緒に暮らすという結末は固定化される。そのために、人々は幸福を求めて御標を達成することを求める。 二つ目は、御標に逆らった行動を取ると異形の呪いがふりかかるからである。御標は人に幸福を約束する代わりに、それに背を向けるものには容赦をしない。なお、御標に背を向けるというのは意思と行動が伴った問題である。もしも青年が御標をなぞったものの、力不足でお姫様を助けることに失敗しただけならば、御標が達成されなかったためハッピーエンドが得られなかっただけですむ。しかし、青年がお姫様を助けようという行動そのものをとらなかったり、御標で語られる過程を意図的に無視した場合は、「御標に背いた」とみなされる。また、もしもこの御標が青年だけでなくお姫様にも与えられてしまえば、お姫様は「怪物に飲み込まれる」義務が発生する。怪物がお姫様を飲み込むことに失敗したとかならば御標の未達成に過ぎないが、お姫様が自発的に怪物から逃げようとした場合は御標に逆らったこととなり異形化の呪いを受ける。そこには容赦も温情もなく、ただ御標に従ったか逆らったかだけが問われる。 御標はこの世界ではあらゆる倫理や道徳を超えた絶対の指標である。御標で語られたことは一切の理屈や感情抜きに守るものというのがこの世界の住人の基本的な考え方である。それはあたかも、物語の登場人物が作者に逆らわないのと同じようなものととることもできる。人々は御標がいつか自分に下ることを渇望してこの世界で生きている。
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