形状からみたドブソニアンの特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 08:32 UTC 版)
「ドブソニアン望遠鏡」の記事における「形状からみたドブソニアンの特徴」の解説
ドブソニアンは、伝統的な分類としては単に経緯台式架台をもつニュートン式望遠鏡の一種と言えるが、前述の目的に沿って実用上の様々な工夫を施した形式である。すべてのドブソニアンが同一の決まった形式を持つわけではないものの、ジョン・ドブソンが作った元々のドブソニアン望遠鏡を参考にドブソニアンの各部の特徴を挙げるなら次のようになる。 主鏡 反射望遠鏡の主鏡は、高精度な放物面に仕上げられなければならない。また高い面精度を維持するために、傾けても自重で主鏡がたわまないように、主鏡は充分に厚いガラスである必要があるが、一般的に直径に対して厚みが1/6以上であるように設計されていた。さらに熱膨張によるたわみを防ぐためにパイレックスや合成石英のような低膨張ガラスが用いられる。ほとんどのドブソニアンでは、従来の反射望遠鏡よりも薄い(具体的には直径に対して1/8から1/12)主鏡が用いられている。コストの側面もあるが、一義的には軽量化と外気との温度順応性の要請によるものである。また、従来は大口径で高精度な主鏡は非常に高価であり、低倍率では精度の低さがそれほど目立たないため、精度の低い主鏡が用いられることもあった。しかし、2000 年代以降はコンピューター制御式の研磨装置が普及したため、高精度で安価な主鏡が登場している。また従来は、青板ガラスなど膨張率が特別低くない安価なガラスが用いられることもあったが、現在市販されている製品はホウケイ酸ガラスや合成石英が使用されている。なおこの点につきドブソンの制作した望遠鏡では、大胆にも主鏡に難破船の円い舷窓を研磨した薄いガラスが使われていた。通常の小型望遠鏡では鏡の向きを精密に合わせる(光軸を合わせる)ために調整用の数本のネジで固定されているのと違って、カーペットで裏打された容器に固定し重さを全体で支えてひずみを軽減していた。現在では、コンピュータシミュレーションによって最適化された6点支持、9点支持法などを採用したものが主流となっている。支持体全体で鏡面の安定を保つというのは、数m超級の超大型望遠鏡では一般的な手法でもある。 鏡筒 ドブソンは、望遠鏡本体の筒に頑丈で防水性の厚紙の筒を利用した。これはとして非常に大きなものでも比較的安価に手に入れることができ、光路をひずませる鏡筒内の熱対流を防ぎ、衝撃に強く加工も容易であるメリットもあった。元鏡筒は形を保つという目的の他には、余計な光や人体等から発する熱が光路に侵入することを防ぐ役割を持っており、逆に熱対流の原因となったりする。現在市販されているドブソンの筒では、アルミニウムや鉄が主流になっており、高価なものでは軽量で熱膨張率の小さいカーボンファイバー材が使われている。十分に暗い環境で望遠鏡が用いられるなら、鏡筒接眼部分や斜鏡および架台との接合部が支えられさえすれば、鏡筒は必ずしも要るものではない。このため鏡筒をなくしてパイプや合板を部分的に取り付けただけのドブソニアンも存在する。 架台 ドブソンは、「過去数世紀の間、戦争はドブソニアン架台の上に乗った大砲によって戦われてきた」のだとドブソニアンの架台の特徴を表現している。この架台の形状がドブソニアン望遠鏡を一見したときの最大の特徴である。架台は全体としてU字溝のような「三脚を省いたフォーク式経緯台」の形状をしており、左右の壁(経緯台の耳軸に相当する部分)には半円形の窪みがある。クランプも微動装置もなく、回転軸が滑らかに回り回転軸を中心とし重量バランスが取れていなければならない。鏡筒の重さがバランスする重心から鏡筒の左右に突き出た円盤をこれらの窪みに載せ回転させることによって水平線から天頂までの高度方向の向きを変えることができる。回転部分はテフロンなどで摩擦を減らしてある。鏡筒の重心は主鏡が重いことから充分に主鏡のそばにあり、架台の高さは鏡筒に比べてそれほど高くならない。U字溝状の架台は底の部分で別の板の上に乗っている。ドブソンの望遠鏡では合成樹脂の板の上にテフロンのブロックが乗せられていた。これらは中心軸の回りで回転できるようになっており、もうひとつの架台の回転軸である水平の方位方向の動きを架台に与えている。回転軸の摩擦は望遠鏡を手で楽にかつスムーズに動かせるだけ軽く、また勝手に動かないぐらいに重くなるように調節されなければならない。 ドブソニアンのデザインは年とともにさまざまに発展し工夫がなされてきているが、自作・商品を問わずその多くは上に挙げたような特徴の多くを有している。
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