形成逆転
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/24 14:24 UTC 版)
20年ぶりに白い人の乗ったロケットが来ると聞いて、黒い人たちは空を見上げた。20年前、黒人たちはロケットで火星にやってきた。地球では原子戦争が始まり、数年後にはロケットが1つも無くなっていた。やっと新しいロケットができてようやく訪ねてきたのだった。ウィリーは地球で白人から受けた差別を忘れていなかった。彼の両親はさんざん働いた挙句、吊るされてしまったのだった。ウィリーは町の人々を煽動して、銃と塗料とロープを持ってこさせた。バスと電車に塗料で「FOR WHITES:REAR SECTION(白人は後ろの座席へ)」と書いた。劇場の一番うしろの2列をロープで囲って白人専用の座席をつくった。ウィリーは言った「黒人と白人の結婚を禁止する法律をつくろう。最低賃金法を決めよう、白人の最低賃金は一時間10セント」。町では通りという通りに<外来客お断り>の看板が立った。ロケットが到着した。ひとりの白人が降りてきて話を始めた。第三次世界大戦は去年ようやく終わりを迎えた。世界中の都市が爆撃されて灰燼に帰した。放射能で何もかも汚染された。現在の地球にはせいぜい50万人しか残っていない。彼らは廃墟に残った金属をかき集めて、ロケットを1台つくった。地球人たちはようやく自分たちの愚かさに気づき、新しい世界をつくるために火星に助力を求めてやって来たのだという。今やウィリーの両親が殺された場所も、吊るされた木も消えていた。黒人たちは看板を壊し、銃の弾を抜き、ペンキを塗りなおした。ウィリーは言った「馬鹿者の時代は終わったよ。おれたちは馬鹿者ではない何者かにならなきゃいかん」
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