フッ酸
別名:ふっ酸、フッ化水素酸、ふっ化水素酸、弗化水素酸
英語:Hydrofluoric acid
フッ化水素の水溶液。無色透明で刺激臭がある。第2類特定化学物質に指定されている劇物である。
フッ酸には強い腐食作用がある。そのため、ガラスや半導体の表面加工、金属類の洗浄・サビ落としなど、多種多様な用途に用いられる。
フッ酸の人体に対する毒性はきわめて高い。皮膚や粘膜を著しく刺激し、腐食させる。皮膚に付着した場合、重度の化学火傷を負う。細胞をぼろぼろに破壊しつつ深部に浸透していき、骨までダメージをもたらす危険がある。目に入ると失明する可能性が高い。
蒸発して大気中に含まれたフッ酸も危険である。フッ酸を吸い込むと呼吸器がダメージを受ける。胸焼け、咳、喉の痛み、頭痛、下痢、だるさ、吐き気などの症状に加え、心不全をはじめとする内臓の機能不全に陥る危険がある。
フッ酸を取り扱う場合には、ポリエチレンをはじめとするプラスチック素材の手袋で肌を防護することが必須となる。もし皮膚に触れた場合は大量の水で長時間洗い流す必要がある。
2012年9月27日、韓国慶尚北道亀尾市内の化学工場で、数トンのフッ酸を積載したタンクローリーからフッ酸が漏出する事故が発生した。2012年10月23日までに5名が死亡し、1万人を超える人が異常を訴えて病院で診療を受けたという。
関連サイト:
化学物質等安全データシート フッ化水素酸 - 昭和化学
ふっか‐すいそさん〔フツクワ‐〕【×弗化水素酸】
フッ化水素酸
(弗化水素酸 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/15 17:09 UTC 版)
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| 物質名 | |||
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別名
Fluorhydric acid |
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| 識別情報 | |||
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3D model (JSmol)
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| ChEBI | |||
| ChemSpider | |||
| EC番号 |
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PubChem CID
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| RTECS number |
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| UNII | |||
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CompTox Dashboard (EPA)
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| 性質 | |||
| HF (aq) | |||
| 外観 | 無色の液体 | ||
| 密度 | 1.15 g/mL (for 48% soln.) | ||
| 酸解離定数 pKa | 3.17[2] | ||
| 危険性[3] | |||
| GHS表示: | |||
| Danger | |||
| H280, H300+H310+H330, H314 | |||
| P260, P262, P264, P270, P271, P280, P284, P301+P310, P301+P330+P331, P302+P350, P303+P361+P353, P304+P340, P305+P351+P338, P310, P320, P321, P322, P330, P361, P363, P403+P233, P405, P410+P403, P501 | |||
| NFPA 704(ファイア・ダイアモンド) | |||
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特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
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フッ化水素酸(フッかすいそさん、英語: Hydrofluoric acid)は、フッ化水素の水溶液である。俗にフッ酸(フッさん)と呼ばれ、工業的に重要であるが、触れると激しく体を腐食する危険な毒物としても知られる。
概要
フッ化水素酸はフッ化水素と共に、フッ素を含む多くの薬品、重合体(例:テフロン)および合成繊維の前駆体である。
濃フッ化水素酸は一般にガラス (SiO2) と反応して溶かすことがよく知られている。
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フッ化水素酸の鉄道輸送コンテナ - 各種フッ素化合物の原料として重要であるほか、ガラスの化学加工や、半導体製造時のシリコン酸化膜のエッチング・歯科技工の分野に用いられる。ステンレスやアルミニウムの酸化被膜除去には、硝酸との混酸が使用される。
- 伝統的木造建築物など黒く経年劣化した木材のシミ抜き(特殊洗浄剤)として、フッ化水素酸 5〜15%の製品が市販されている。[6]
危険性
骨や血液中のカルシウムイオンと容易に結合することにより、骨を侵し低カルシウム血症の原因ともなる。応急処置には、接触部位の流水洗浄ののちグルコン酸カルシウムが使用される。
→詳細は「フッ化水素 § 毒性」を参照主な事故・事件
- 1982年には東京都八王子市で歯科医師からフッ化物洗口用のフッ化ナトリウムと間違えてフッ化水素酸を歯に塗布された女児が死亡する医療事故が発生した[7][8]。(八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故)
- 2012年には韓国の化学工場でタンクローリーからの積み替え作業中、ヒューマンエラーによってフッ化水素酸が漏出し、作業員5人が死亡、4000人を超える健康被害が起きた(慶尚北道フッ化水素酸漏出事故)。
- 2013年3月、静岡県でフッ酸を塗られた靴を履いた女性が、足の壊疽(えそ)を起こし、5本の指すべてを切断する重傷を負う事件が起きた[10]。これは故意に塗られたもので、犯人は殺人未遂容疑で逮捕された[10]。検察の判断で傷害罪に切り替えて起訴され[11]、傷害罪で有罪判決を受けた。
- 2015年8月、神戸市東灘区の民間の産業廃棄物処理施設で、山口組総本部からごみとして出されていたポリタンクに入っていたフッ化水素酸の液体から気化したガスを吸って、作業員ら14人が軽症を負う事故が発生[12]。
- 2020年6月、東京都千代田区神田須田町2の路上でフッ化水素酸と思われる液体250mLが路上にこぼれていた。そのため、周囲約100メートルを通行止めにし、ガスマスクを付けた東京消防庁の化学機動中隊員らが2時間以上かけて処理した。けが人はいなかった[13]。
脚注
- ^ Favre, Henri A.; Powell, Warren H., eds (2014). Nomenclature of Organic Chemistry: IUPAC Recommendations and Preferred Names 2013. Cambridge: The Royal Society of Chemistry. p. 131. ISBN 9781849733069
- ^ Harris, Daniel C. (2010). Quantitative Chemical Analysis (8th international ed.). New York: W. H. Freeman. pp. AP14. ISBN 978-1429263092
- ^ “Hydrofluoric Acid”. PubChem. National Institute of Health. 2017年10月12日閲覧。
- ^ 村田徳治『新訂・廃棄物のやさしい化学 第3巻 廃酸・廃アルカリ・汚泥の巻』日報出版、2004年、83-91頁。 ISBN 978-4-89086-235-1。
- ^ D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982)
- ^ 「レブライト 白木のシミ抜き」 ミヤキ産業株式会社
- ^ 1982年4月22日・24日付毎日新聞(縮刷版)
- ^ 昭和57年(1982年)4月22日(水曜日)読売新聞
- ^ “三星(サムスン) 再びフッ酸事故…3ヶ月ぶり‘同じ場所・同じ原因’”. ハンギョレ. (2013年5月2日)
- ^ a b “靴に毒,同僚女性が足の指切断。殺人未遂容疑で男逮捕”. 朝日新聞 (朝日新聞社). (2013年3月28日). オリジナルの2013年3月28日時点におけるアーカイブ。 2013年3月29日閲覧。
- ^ “「女性の靴に毒」で同僚男を起訴 地検沼津支部、傷害罪で”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2013年5月8日)
- ^ “山口組のごみから猛毒のフッ化水素検出、14人軽症-山口組総本部家宅捜索へ”. 産経新聞. (2015年8月25日)
- ^ “猛毒「フッ化水素酸」か、こぼれ異臭 東京・秋葉原の路上、けが人なし”. 毎日新聞. (2020年6月4日)
関連項目
「弗化水素酸」の例文・使い方・用例・文例
- 弗化水素酸という化合物
- 弗化水素酸のページへのリンク





