廃止・統合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/27 08:27 UTC 版)
「大阪府立国際児童文学館」の記事における「廃止・統合」の解説
2008年2月、大阪府知事の橋下徹は大阪府の厳しい財政再建問題の中で、国際児童文学館が所蔵する約70万点の図書資料を確実に保存・活用し、府民利用の向上と子どもの読書振興を図るためには、児童文学館を大阪府立中央図書館に移転することが適切と判断した。国際児童文学館の知名度の低さ、立地の不便さ、来館者が少ないことなどを理由に「マーケティングの観点から、場所は中央図書館のほうがいい。圧倒的に子供たちに見られる所へ移し、本を生かせるようにしたい」と主張した。 これに対し、館を運営する財団法人大阪国際児童文学館は一般の図書館とは目的が異なり児童文学に特化した文学館であるからこそ出版社から年間1万点の蔵書の寄贈を受けている点を始め、国際的に高い評価を受けているとして統廃合案に反対を表明。作家や研究者、日本マンガ学会、地元自治体である吹田市も統廃合案に反対を表明した。同年6月には、朝日新聞社が主宰する「手塚治虫文化賞」において「貴重な資料となるマンガや児童書の収集と、こども文化の総合的研究などの四半世紀に及ぶ活動」に対して「特別賞」が授与された。 大阪府教育委員会には同年6月9日までに8万5606筆の存続を求める署名が提出されたが、教育委員会は7月の臨時府議会で知事案に沿って2009年度中の早い時期に中央図書館との統廃合を実施する方針を表明した。なお、6月から7月にかけて実施された財政再建案に対するパブリックコメントでは統廃合案に反対が475件・賛成が17件であった。 同年9月6日、橋下は「勤務状況の評価」を目的として自身の私設秘書に命じ、館内の状況を無断で撮影させていたことを明らかにし「映像を見る限り、来場者を増やす努力を行っている形跡は全く見られない」と酷評、改めて統廃合案の正当性を強調すると共に1階のこども室で来場者の児童が漫画ばかり読んでいるとして「漫画図書館にでも改称すべきだ」とした。なお、児童文学館における漫画単行本・雑誌の所蔵資料全体に占める比率は蔵書全体の14%とされる。 2009年3月、橋下及び教育委員会の方針に対し、府議会では大阪府立国際児童文学館条例廃止を賛成多数で可決をした。 同館の廃止統合への流れが強まったことに対し、開館時に多数の資料を寄贈した児童文学者の鳥越信らが、寄贈した資料の返還を府に対し求め、橋下知事も「配慮したい」として、府教委に対して返還を検討するよう要請した。なお、鳥越信は国際児童文学館の総括専門員、常任理事を歴任し、寄贈者としての立場だけではなく、利用者が少ないと指摘される文学館を運営してきた責任者としての立場ももっている。 同館の廃止統合が決まった後の2009年3月16日、寄贈した鳥越信たち児童文学者ら29人は、寄贈資料約1,200点の返還を求め、大阪地裁に提訴したが、2011年8月26日、判決が下り、原告らの訴えは棄却された。その後、大阪高裁でも2013年9月5日に控訴棄却となった。さらに、最高裁が2014年9月4日に、大阪高裁判決を支持して、原告の上告を棄却し、原告敗訴が確定した。 2009年12月27日に閉館、2010年3月末に廃止され、児童書等の資料は中央図書館に移管され、2010年5月に大阪府立中央図書館国際児童文学館として再び公開されることとなった。
※この「廃止・統合」の解説は、「大阪府立国際児童文学館」の解説の一部です。
「廃止・統合」を含む「大阪府立国際児童文学館」の記事については、「大阪府立国際児童文学館」の概要を参照ください。
- 廃止・統合のページへのリンク