導入と背景
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 22:35 UTC 版)
「プログレッシブエンハンスメント」の記事における「導入と背景」の解説
この戦略は、古いバージョンのブラウザーソフトウェアでも動作する最新ブラウザー向けウェブページをデザイナーが制作するという点で、グレイスフルデグラデーション (Graceful Degradation)として知られている従来のウェブデザイン戦略の進化版であると言える。グレイスフルデグラデーションではページが「退化 (degradation)」、つまりデザイン上想定されたテクノロジーが存在しない場合でも表示できるとされていた。しかし実際には、エンドユーザーは「とにかくアップグレード」すべきだという考え方に取って代わられた。 プログレッシブエンハンスメント (以下、PE) では、熟慮の末、戦略が逆転された。最小公分母となるブラウザーソフトウェアの機能性に合わせて基本となるマークアップ文書を作成し、デザイナーがCSSやJavaScript (またはFlash、Javaアプレット、SVG等、他の高度なテクノロジー) を用いてページのプレゼンテーションや振る舞いに機能性または拡張内容を追加するのである。そのような拡張内容はすべて外部リンクとするので、特定のブラウザーで使用できないデータが不必要にダウンロードされることはない。 PE手法は、チャンピオンがHTMLまたは他のウェブプレゼンテーション言語に取り組む前に行ったSGMLに関する初期の実験 (1993~1994年頃)、またその後ブラウザーのバグに対処するためのCSSに取り組んだ際の経験に由来している。その初期のSGMLの文脈においては、セマンティックなマークアップが重要とされ、プレゼンテーションはマークアップ自体に組み込まれず、ほぼ必ず別途検討されていた。このコンセプトは、マークアップ界隈では「プレゼンテーションとコンテンツの分離」の原則、「コンテンツとスタイルの分離」の原則、あるいは「セマンティクスとプレゼンテーションの分離」の原則等、様々に呼ばれていた。1990年代半ば、CSSの導入と普及の前、ウェブが進化するにつれてSGMLの根本規則はHTML拡張派が度々破るところとなった。その結果、ウェブデザイナーは新しい破壊的技術とタグを採用してデザインせざるを得なくなった。誰もが最新のブラウザーを使っているわけではないということが認知され、グレイスフルデグラデーションに賛同が集まったが、最新、または1つ前のメジャーリリースのブラウザーでしかサポートされていないデザイン方法やテクノロジーが使われることが多くなり始めた。数年間、大半のウェブは最新の、最も人気のあるブラウザーでしか利用できなくなった。これはCSSの登場、採用、そして普及、ならびにウェブデザイナーにCSSを使ったレイアウトのしかたを教える (エリック・コステロ、オーウェン・ブリッグス、デイブ・シェアらによる) 人道主義的な草の根の教育活動が起こるまで続いた。 PEの根拠は、「グレイスフルデグラデーション」の背後にある根本的な仮定——ブラウザーは必ずより高速かつ強力になるということ——が、低機能なブラウザーと深刻な帯域制限を有するハンドヘルド機器とPDAの台頭によって誤りだったと証明されたという認識にある。さらに、ウェブの黎明期におけるHTMLと関連技術の急激な進化が減速したこと、また非常に古いブラウザーが使われなくなったことで、デザイナーは、CSS等の強力なテクノロジーを使ってプレゼンテーション作業をすべて行い、JavaScript等でクライアントサイドの複雑な振る舞いを拡張することが自由にできるようになった。 当初、PEは「文書構造とコンテンツのセマンティクス、プレゼンテーション、そして振る舞いからの分離」という繊細な技術を説明するための幾分使いやすいキャッチオールなフレーズとして提案された。また、特定のブラウザーのレンダリングバグに対処するための、当時広く使われていたCSSハックをベースにしていた。新人デザイナーがPEのコンセプトを受け入れ、PEの手法の拡張と修正を行うにつれて、PEの戦略は形成されていった。
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