導入と普及
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/12 05:29 UTC 版)
日本語DTPはOCFフォントによって黎明を告げた。その時点で標準に躍り出たモリサワのフォントは、当初文字の輪郭情報(アウトライン情報)の抽出が不可能という仕様であった。これには、コピープロテクト(コピー防止機能)とアウトラインプロテクトが同一のプログラムとして提供されていたためでもあった。のちのNew-CIDと呼ばれる製品では、アウトライン抽出は問題なくおこなえる。 フォント製品として当初提供されたのは、モリサワのリュウミンと中ゴシックのみであったが、他社も含めて次第にラインナップは増大し、日本語DTPのスタンダードとして広く普及した。 その後、データ構造を改善し軽量・高速化した(といわれる)CIDフォントが登場し、ベンダー(販売社)はこちらへの交換を利用者に促した。しかし、交換手数料に比してその利便性が高くないなどといった理由から、そののちもOCFというフォントフォーマットは事実上の標準でありつづけた。 OCFフォントから撤退するための影響は個人運営やSOHOでは予算・規模共に軽微だが、商業印刷では仕事のシステム全体に大きな影響が及ぶ。DTP導入時に大変な労力を割いてOCFベースの運用で安定させたシステムを、敢えて崩す必要性を多くのユーザー(印刷会社、出版社など)は認めなかったといった説明がなされる。またその背景として、日本国内における組版料金の単価低下という要素も見逃せないであろう。写植の時代に比して相対的に売り上げが低下する中、交換せずとも使用できる製品を既に持っているユーザーは、経済的理由からも既存のOCFフォントを使い続けたのである。
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