実用ソフトウェアの登場
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/27 00:17 UTC 版)
「GPGPU」の記事における「実用ソフトウェアの登場」の解説
GPGPU技術の話題は、コンピュータ(特に資源やスペースの制約が強いパーソナルコンピュータ)の進化において2000年代中盤までのトレンドであり課題であった。しかし、デモンストレーションばかりが先行し、実際に活用できるソフトウェアが発売されることはなかった。そもそも、CUDAやOpenCLなどの汎用APIや、それらに対応するDirectX 10世代の統合型シェーダーアーキテクチャGPUが出現するまでは、GPGPU開発環境は制約の強いリアルタイムグラフィックス向けのAPIやシェーディング言語を直接利用したものか、もしくは研究機関が独自開発した固有のプログラミング言語基盤であり、ハードルも高く、決して開発効率や再利用性が良いとは言えなかった 。 2008年秋から、S3がGPUを利用したGPGPU用写真修正ソフトウェア「S3FotoPro」を発表、また動画編集加工ソフトでは動画エンコードソフトの代表格であるTMPGEncがCUDAに対応したことを皮切りに、サイバーリンクのPowerDirector 7がCUDAとATI Streamに対応した。さらに、2009年にはSuper LoiLoScope (Pixel Shader 2.0を活用) が発売、サイバーリンクがMediaShow Espresso (CUDAとATI Streamに対応) を発売している。GPGPUを利用した無料で利用可能な動画エンコードソフトとして、AMDのATI AVIVO (完全無料) やNvidiaのBadaboom (30日間無料体験版) 、MediacoderのCUDAエンコーダが挙げられる。 米アドビはCreative Suite 4 (CS4) の一部製品においてCUDAベースのGPUアクセラレーションをサポートしていたが、2010年5月28日に発売したCreative Suite 5 (CS5) においてGPGPUを正式にサポートした[要出典]。CS5はOpenCLベースで開発されており、ほとんどすべての機能において[要出典]GPGPUによる演算を行うことができる。本来GPUは画像処理を得意とするため、画像処理を主体とする同社のアプリケーションへの適性は高い。また、After Effects CCでは、レイトレーシングエンジンにNVIDIA OptiX(英語版)を採用している。その他にも、V-Rayなど、レイトレーシングのアクセラレータとしてGPUを活用しているレンダラーが存在する。AMDもOpenCLベースのレイトレーシングエンジンとして、Radeon ProRender (旧称AMD FireRender) を開発・公開している 。 オープンソースの統合型3DCG作成ソフトウェアBlenderでは、GIレンダリングエンジンであるCyclesにおいてNVIDIA CUDAによるGPUレンダリングが可能となっている。なお、バージョン2.6時点ではOpenCLによるGPUレンダリングも試験的に実装が進められている。また、Autodesk 3ds Maxサブスクリプションなどに搭載されている物理ベースのGIレンダリングエンジンであるNVIDIA Irayでは、CUDAベースのGPUアクセラレーションが行なわれる 。 その他、ビットコインをはじめとした暗号通貨の採掘処理にもGPUが使われている。 倍精度浮動小数点数への対応も進みつつあり、中堅クラスのスーパーコンピュータの演算装置としても普及しつつある。 このように、学術・研究目的や産業用途以外にも、一般的なプロダクション向け・コンシューマー向けに関してもGPGPU技術を利用したソフトウェアが続々と登場しており、ようやくGPGPUを本格的に活用できる環境が整ってきたといえる。しかし、万能に処理をこなすCPUと比較して、GPUはピーキーな特性を持ち、ソフトウェア開発においてはパイプライン処理や並列計算等の知識だけでなく、ハードウェア仕様およびAPIの知識も必要になるため、未だにGPGPU活用のノウハウが一般化したとは言い難い。
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