天文学的・科学的考察
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/29 04:36 UTC 版)
「ゼカリア・シッチン」の記事における「天文学的・科学的考察」の解説
シッチンの「惑星の衝突」の考え方は、45億年前に新しく形成されたばかりの地球にある天体が衝突することにより月が形成されたとする、現代の天文学者の間で真剣に議論されているジャイアント・インパクト説と一見似ているように見える。しかしながら、シッチンは、内容および時期の異なる複数の惑星の衝突があったとしている。イマヌエル・ヴェリコフスキーの「衝突する宇宙」の理論と同様、シッチンは原因となる天体運動について、古代人類の知識なかに証拠を見つけたとしている。 ヴェリコフスキーは、このような惑星間の衝突は人類が発生した後に起こったものと考えている。一方で、シッチンは、これらは(人類が発生する前の)惑星形成の初期段階のうちに起こったものの、これらの事件に遭遇した後もニビルにおいて進化を続けたとされている地球外生命体の種族により、神話的な説明として、人類に伝えられているとしている。 シッチンの太陽系創造のシナリオは、地球の軌道離心率がわずか0.0167に過ぎない点とうまく調和が取ることが困難である。彼の支持者は、これは天体の衝突からもたらされる分裂に起因する地球に固有の初期の地勢、つまり大陸が一方に偏り大洋が一方に偏っていることから説明されるとする立場を崩していない。 ヴェリコフスキーの助手であった C・リーロイ・エレンバーガー(C. Leroy Ellenberger)によれば「ネフィリムはニビルにおいて、地球の人類の進化に先立つこと45億年前に、地球より明らかに良好な環境のもとで進化していた。」とシッチンが述べている。しかし、ニビルの軌道の99%以上が冥王星の外側であったとされることから、そのような結果となる可能性は少ない。 放射性減衰からもたらされる熱と大気の層の厚さからニビルの温度が保たれていたとシッチンは説明するが、太陽から離れた宇宙空間では放射線が届きにくいことと整合が取れない。また、ニビルがどのようにして太陽系に入ってきたのかについて、ネフィリム自身がどのようにして知識を得たのかに関しても、説明されていない。 ニビルが太陽系の内側まで3,600年ごとに規則的に戻ってくるという、シッチンが描くシナリオは、ニビルの軌道長半径が235天文単位にのぼり、最遠点はアステロイド・ベルトを超えて太陽と冥王星の距離の12倍のところまで至ることを示している。 「初歩的な天体の摂動論によれば、他の惑星との近接遭遇を避けるための最も好ましい環境にあったとしても、このような離心軌道(楕円軌道)をもつ惑星は、既存の惑星の軌道の通過帯域と同じ周期を維持することができないことが知られている。惑星の数が12以下の太陽系では、このような軌道を持つ天体は太陽系から排出されるか、周期の短い新たな軌道上を周回するようになるかのどちらかである。このような経緯から、アメリカ海軍天文台のトム・ヴァン・フランデルン(Tom Van Flandern)による冥王星以遠の惑星の探索活動からは、シッチンは彼らを従来より支持してきたものの、何の支援も得られていない。」 生物の遺伝子配列の系統樹において、人間の遺伝子には、進化の過程での枝分かれの元にあたる動物の遺伝子をもたない、いわゆる固有の遺伝子が223におよぶことが、ヒトゲノム決定コンソーシアムによって発見されたと、シッチンは「アダムのもつ宇宙人遺伝子の真相」において述べている。しかし、その後の研究者たちの間では、包括的な比較用遺伝子データベースが整備されていないために、このような結論は導くことができないという議論になっている。ザルツバーグ(Steven Salzberg)の分析によれば、他の原核生物から水平伝播(細胞分裂時に同じ生物の母細胞から娘細胞に遺伝情報が転写されるのではなく、生体内の細菌やミトコンドリアなどから何らかの原因で転写されること)した遺伝子は40にのぼる可能性がある。 ザルツバーグはまた、上記のような固有の遺伝子は、認識する遺伝子サンプルのサイズ・進化速度のばらつきに伴う遺伝子損失が原因であると考えるのが、より生物学的に妥当な代替的説明となると述べている。
※この「天文学的・科学的考察」の解説は、「ゼカリア・シッチン」の解説の一部です。
「天文学的・科学的考察」を含む「ゼカリア・シッチン」の記事については、「ゼカリア・シッチン」の概要を参照ください。
- 天文学的・科学的考察のページへのリンク