地球帰還後の運用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 01:50 UTC 版)
地球帰還後は、2031年7月に小惑星 1998 KY26 を接近探査する拡張ミッションを実施する予定である。これは前述のように、はやぶさ後継機の探査目標の候補だった天体の1つである。 ミッション終了後のはやぶさ2を活用すれば、新たなミッションを立ち上げるよりも低コストで科学的・工学的な成果が見込めることから、電力事情や観測機器の能力に合わせて地球近傍小惑星を対象とした拡張ミッションが検討されていた。拡張ミッションでは以下の3点が目標として設定された。 太陽系長期航行技術の進展 高速自転天体探査の実現 プラネタリー・ディフェンスに資する科学と技術の獲得 2020年7月21日に開催された宇宙開発利用部会で、小惑星 2001 AV43(英語版) または 1998 KY26 の接近探査を検討していることが報告された。いずれも高速自転するタイプの小惑星である。 EVEEAシナリオ (Earth - Venus - Earth - Earth - Asteroid) 地球帰還後、2024年8月に金星フライバイ、2025年12月と2026年12月に地球フライバイした後、2029年11月に 2001 AV43 を接近探査するシナリオ。 EAEEAシナリオ (Earth - Asteroid - Earth - Earth - Asteroid) 地球帰還後、2026年7月に (98943) 2001 CC21 をフライバイした後、2027年12月と2028年6月に地球をスイングバイし、2031年7月に 1998 KY26 を接近探査するシナリオ。 2つのシナリオを比較した際、EVEEAシナリオは設計前提の太陽距離範囲 (0.85〜1.41 au) を逸脱する期間が長く、また金星スイングバイに失敗した際に目標天体への軌道計画が成立しない危険性が高いなど、ミッションの実現性がより低いと評価され、2020年9月に、よりリスクの低いEAEEAシナリオが選定された。 拡張ミッションの目標天体である 1998 KY26 は、直径30メートル前後の非常に小さな小惑星である。2013年にウラル地方に落下したチェリャビンスク隕石は直径17メートル程度の大きさであったと目されており、このサイズの小惑星が地球と衝突した際には地域的に大きな被害をもたらすと考えられている。このような微小小惑星を近傍観測することで、地球史の解明やプラネタリーディフェンスに有益な情報が得られるのではないかと期待されている。 目標天体の 1998 KY26 に到達するまでの間にも様々な科学観測が計画されている。巡行期間となる2026年7月までの間は、黄道光観測と太陽系外惑星観測が実施される予定。黄道光の観測では、光学航法カメラONC-Tによる観測を定期的に実施して星などの天体が写っていない宇宙空間の明るさを測定することで、黄道光の原因となる惑星間塵の地球近傍での分布を明らかにする。また、太陽系外惑星は、同じく光学航法カメラONCを用いた長時間の観測で光量の時間変化を調べることによるトランジット法での検出を目指す。2026年7月の 2001 CC21 フライバイでは、まだ研究の進んでいないスペクトル型であるL型小惑星を近接探査することで、炭素質隕石に見られる白色包有物 (CAI, Calcium-aluminium-rich inclusion) との類似性を判定する。
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