地名に関する考え方
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/12 00:42 UTC 版)
日本のみならず、アメリカ、中国(北京、香港)などでの長い居住経験、欧米、アジア諸国での勤務経験があるため、世界の地名資料を多年にわたって収集し、それによって、地名はどう研究されるべきか、地名はどう保存、活用されるべきかを独自の視点から説く。また、中国の専門雑誌(『中国地名』『地名知識』など)への寄稿を行い、日本の地名研究の状況を紹介している。 地名変更の問題については、特に日本の明治以来の地名改変の歴史について批判的であり、地名は時の行政当局者によって無原則に切り刻まれてきたもので、革命、占領、植民地化、戦争などによらない自国民の手による、これほどの地名変更が行われた国は日本をおいてほかにはないと主張し、無原則に使用される外来語のカタカナ表示への批判とあわせ、日本文化の継承という点から、地名は正名(=地名を正す)と穏定(=むやみに変更させない。)が基本であるとし、地名の管理保護の必要性を主張する。 また地名は一部の地名研究家が主張するような、「大地の索引」などといった情緒的なものではなく、地名はそれ自体、実用価値のあるもので、過去の「索引」にとどまらず、過去から現在未来をつなぎ、IT時代になっても地名の活用、保存の継続はなされることが文化のみならず経済効果をも生むことを主張する。また文化的にも古い町並みが残る都市だけでなく、戦災や大火で町並みが失われても、町の歴史や文化、町に住んだ人たちの営みは、「場所」の記憶をつなぐ「地名」という言語の伝達により、地名をもとに継承・復元され、将来の都市の発展につなげることが可能であり、景観が変わっても改称すべきでないと、無形文化財としての地名の存在意義を主張する。 また最近の「地名研究」「地名辞典」や、マスコミ、テレビ番組などの「地名解説」は、依然として民間語源説が主流で、科学的でなく、地名理論が理解されていないところから、学問としての地名研究の科学性の必要を説き、高名な研究者までもが影響されている民間語源説による地名解説を「バスガイド地名学」と呼んでするどく批判している。 食品などの原産地表示問題や、中国や台湾での日本の地名や有名ブランドの商標登録問題に対しても、これが行政や地方自治体、企業、外交関係者などの、これまでの由緒ある地名や、地名を冠する商標保護への無関心に原因があるとして、これまでのような行政、法律、経済などに偏重した対応だけでなく、地名、固有名詞、言語など人文系の研究者が参加した、専門的、総合的な研究の必要性を説く。 そのような視点から、経済優先の、流行を追った、歴史や伝統的な言語に根ざさない平成の市町村合併時に生まれた新市名、とりわけカタカナ(外国語、外来語)、ひらがなの市名に対しては批判的。
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