国際的批判への反論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/26 18:53 UTC 版)
ITER賛成派は、ITER反対派の実験にまつわる「根源的な危険」という典型的な主張に含まれる多くの批判は、誤解であり不正確であるとしている。商業融合動力ステーション設計に関する公表された目標は、分裂炉に比べて数百分の一以下の総放射性廃棄物しか出さず、それらは長命な放射性廃棄物ではなく、また分裂炉のような大規模な核分裂の連鎖反応によるメルトダウンの危険も存在していない。プラズマが炉壁に直接ふれただけで不純物が混じったプラズマは冷えてしまい、融合反応が止まってしまうからだ。さらに、分裂炉が数年持続するのに比べれば、融合炉の中に投入される燃料、総量わずか0.5グラムの重水素/三重水素で反応が長くても1時間持続できるだけである。賛成者たちは、もし完成したら、巨大な核融合炉で実用的な電気が生み出せて、なおかつ一切のCO2 / SO2 / NOxガスを排出しないですむ点を強調している。 日本のデモンストレーション炉の調査員によれば、核融合発電所はおそらく2030年には実現可能としており、どんなに遅くとも2050年には可能であるとしている。日本はさまざまに実際的な角度から独自の研究プログラムをいくつかの研究施設で進めている。 科学的または工学的なプロジェクトのコストは、それから得られる利益によって慎重に計られねばならない。アメリカ合衆国だけでも年間の電気料金の総額は2,100億ドルであった。アジア地域への1990年から1999年までの電力産業への企業投資額の総額は930億ドルであった。 これらの数字は単に現在の価格で計っているに過ぎない。原油価格は上昇してゆき、二酸化炭素の排出に圧力がかかり、今後も電力需要は伸び続ける限り、この数字は疑いなく増えてゆく。賛成派は、経済的に見ても現在の研究への投資が近い将来の大きな利益に結びつくと主張している。そして、世界中集めても年間10億ドル以下のITERへの投資が見合うだけの、他に代わりうる発電に関する同じような研究は存在しない。批判派の話と正反対に、ITERの推進派はこのプロジェクトが大きな雇用の機会を生み出すと主張している。ITERは数百の物理学者、エンジニア、物性科学者、建設作業者、技術者を短期的に雇用する。また、融合炉発電所が完成すればそれを中心とした大きな雇用を生むこととなることが予想される。 ITERを支持する人達は、猛烈な中性子束に耐えるという、考えを納得させ立証する唯一の方法は、その耐ええる被験材料を実験に基づいて示すことである、と強調する。そしてそれは、2つの実験施設にとって、実際のD-T燃焼プラズマとIFMIFで得られるものとの中性子のパワー分布の違いは、極めて重要な目的である。 ITERの目的は、将来適切に発電プラントが建設できるように、核融合発電に関する科学的で工学的な疑問を解明することである。材質の特性に関して、理論どおりの結果を得るには、あまりにも強力な中性子束のためにほとんど不可能に近い。また、実際のプラズマは外部で加熱して作ったプラズマとは全く違った特性を持つ[要出典]。 支持する人達によれば、ITERの実験によって融合炉に関するこれらの疑問が解決した時、経済的な研究投資に対して、途方もなく大きな利益が得られるという。 最後に、支持派の人達は、現在の化石燃料資源の使用を何か選択肢へと切り替えることは、我々自身の環境問題であると指摘している。太陽光発電、風力発電、水力発電 などはすべて面積あたりの発電効率が低い点で劣っている。ITERの次のDEMOでは5,000 MWを発電する予定であり、これは大きな核分裂発電プラントを超える規模となる。もし融合技術が商業的に成功すれば、火力発電などからの温室効果ガスの発生が完全に抑えられるので、環境に与える影響は最小限になり、同時に長命な核廃棄物の問題は消滅する。
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