国際的批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/26 18:53 UTC 版)
国際グリーンピースのジャン・バンデ・プット(Jan Vande Putte)は「各国政府は、使えるエネルギーを一度も産み出したことがない危険なオモチャに、われわれの金をむだにするべきではない。その代わりに彼らは2080年ではなく今、豊富に存在する再生可能なエネルギーに投資すべきだ。」と発言した。 コストで考えればITERは、米軍が開発している新型戦闘機のひとつ ジョイント・ストライク・ファイター(Joint Strike Fighter,JSF、統合打撃戦闘機)のプロジェクト費のおよそ5分の1である。 フランスの環境団体は、プロジェクトITERは「危険」で「金がかかる」それでいて「雇用は産まない」といっている。およそ700の反核団体からなるフランスの協会「Sortir du nucléaire(核エネルギーは出て行け)」は、ITERは科学者がいまだ融合過程で扱う高エネルギーの重水素とトリチウム水素同位体を扱う方法を知らないので危険である、といっている。 ITERプロジェクトは多くの技術的な挑戦課題に直面している。フランスのノーベル物理学賞受賞者、ピエール=ジル・ド・ジャンヌ(Pierre-Gilles de Gennes)(融合の専門家ではない)は「我々は太陽を箱に入れると言っている。これはすばらしい。問題は、我々がその箱の作り方を知らないことだ」と述べている。 技術的な懸念として核融合反応によって生じる 14MeV(1,400万電子ボルト)もの高エネルギー中性子が、製造された時点から障害を与える。猛烈な中性子の爆撃に曝される中にあって、十分に長期間に渡って商業動力炉として成長しうるような炉壁の設計が行なえるか、それが可能ならばどうやって実現するか、国際核融合材料照射施設(IFMIF)において開発が進められている。障害は主として高エネルギー中性子が結晶格子中の原子を正しい位置から叩き出すことで発生する。未来の商業融合炉プラントでの関連する問題は、中性子の爆撃が反応炉自体の中の放射性を誘発することである。商業炉の保守と廃棄は困難で高価なものとなるだろう。また中性子束による超伝導電磁石の障害も問題である。 欧州議会の工業・研究・エネルギー委員会のGreen/EFA(European Greens ? European Free Alliance)のメンバーのレベッカ・ハームス(Rebecca Harms)は「今後50年間、核融合は気象変動を止めることはできないし、エネルギー供給の安定化を保障することもない」と主張。EUのエネルギー研究はどこか他の方向へ集中するべきだとするレベッカは「Green/EFAグループはそれらの予算をエネルギー開発に使うよりも、未来のために当を得た使い方を要求する。今こそ再生可能エネルギーに集中すべきである」とも述べている。フランスの緑の党の弁護士 ノエル・マメールは、現在の地球温暖化との戦いにさらに集中すべきなのに、ITERの結果によって無視されることになるとし、「これは温室効果との戦いにとっていいニュースではない。効果がないと判明するまでの30-50年間に総額100億ユーロの予算が1つのプロジェクトにつぎ込まれようとしている」とコメントしている。ロバートバサード(Robert Bussard)やエリック・ラーナー(Eric Lerner)のような幾人かのトカマクでないシステムで作業している研究者は、よりリーズナブルでより費用対効果の高い核融合動力プラントの設計に予算を振り換えるべきだとITERを批判し、また「批判はいつもITER支持者の抵抗にぶつかる。彼らを潜在的な技術的・経済的問題に目を向けさせようとしても、多くの科学者の仕事がトカマク研究にかかっているのだ」とも述べている。
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