取り巻く環境と課題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 06:21 UTC 版)
「私設取引システム」の記事における「取り巻く環境と課題」の解説
金融庁監督指針によると適切な市場間競争が促進されることで、市場全体の業務効率化や取引システムの高度化など投資家の利便性が向上し、国内投資家のみならず海外投資家にとっても魅力的な市場形成に資することが期待されていた。 2010年7月に日本証券クリアリング機構 (JSCC) での清算・決済が開始されたことや、2010年10月には空売り注文の取扱いが開始されたことなどが契機となり、PTS利用が進むことになった。2011年夏以降には月間売買代金が大阪証券取引所の一部・二部合計を上回るなど近年、着実に利用が進んできているが、東京証券取引所が依然として圧倒的な地位を占めており、海外での利用状況と比較すると日本におけるPTS利用水準は未だ低いものと言われている。なお、これについては2016年の段階では、さらなる改善を図ることで市場間競争を活発化し、1つの取引所に取引が集中することが阻害要因となっているとIOSCOの「Regulatory Issues Raised by the Impact of Technological Changes on Market Integrity and Efficiency」(2011年10月)や「Transparency and Market Fragmentation」(2001年11月)でも述べられている、独占的慣行の打破と効率性の向上、取引手数料の引下げ効果、ノベーションの喚起によるより利用者のニーズに合った様々な取引手法の提供促進がなされることが期待されていた。 そのほか、利用促進の足かせとなっている要因には法制度面の整備の遅れも課題としてあげられる。特に「市場外での5%超の買い付けは公開買付けを行う」と金商法に規定されていることで、機関投資家の利用が実質的に制限されている。 2012年4月には日本証券業協会のガイドラインが変更され、東京証券取引所など取引所のシステム障害時には、取引所外取引は原則停止せず、運営を継続できることが出来るようになるなど、進展が見られる。株式市場には従来の伝統的な取引や取引所集中義務を前提とした制度が残っている中で、公正な取引の確保や投資家保護は担保しつつも、今後の制度設計・運営を適切に行っていくためのさらなる議論が必要である[要出典]。 また、その他の課題としては、主要な取引参加者である個人投資家の接続手段が限られていることが挙げられる[要出典]。2018年4月時点で個人投資家がPTSを利用する場合には、SBI証券か松井証券もしくは楽天証券のいずれかに注文を出すしかなく、他の証券会社は個人投資家向けにはPTSへの接続を提供していない 。2012年以降、長期にわたりSBI証券においてのみ個人投資家がPTSが利用できる状況が続いていた。2018年に入り松井証券と楽天証券がPTSの取扱いを開始することを公表し、複数の会社でPTSが利用できる状況にはなってきている。また、2019年より証券会社各社において東証及びPTSへの注文を自動的に判断する「SOR注文」が導入されている。 個人投資家の株式売買形態の6割超を占めている信用取引が2019年8月までPTSでは行えなかったことや、そもそも日本で本格的にPTS市場が整備される契機となった2000年12月の事務ガイドライン改正の時点で、既に東京証券取引所をはじめ国内の各取引所のシステムが高い流動性と低コストを実現できていたため手数料面で両者の間に大きな差がないことなどが、投資家にとってPTSのメリットを損ない、結果的に日本市場での株式取引において、PTSのシェアが低くなる要因となっている。
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