内容(文章)と外見(装飾要素)の混在に対する非難
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 16:38 UTC 版)
「WYSIWYG」の記事における「内容(文章)と外見(装飾要素)の混在に対する非難」の解説
近年、コンテンツに対するアクセシビリティが提唱されるようになってきており、特にウェブコンテンツに対するガイドラインとして、World Wide Web Consortium (W3C) が提唱するWeb Content Accessibility Guidelines (WCAG) というガイドラインが提唱されるようになった。つまり、「多くの人」が「多くの環境」で情報を取得できるように、コンテンツである「文章そのもの」と、文字の大きさや色などの「装飾要素」を分けるべきという考えである。 これにより、ひとつの文章を、印刷物や、ウェブサイト、ソフトウェア、テレビ番組、ラジオ番組などの多くのメディアにおいて、それぞれの装飾方法で情報公開することができるようになる。この概念は、「ワンソース・マルチユース」とも呼ばれ、現在におけるXMLによるコンテンツ管理技術へと発展している。現在では、ウェブページにおけるXHTML言語や、地上デジタル放送などにおけるBML言語などにも広く応用されるようになった。 しかし、WYSIWYGなワープロソフト等では、文章の論理的な内容(章立て・見出しなどアウトライン)と外見のデザイン(文字の大きさ・色)が、必ずしも明確に分離されていない点が指摘される。具体的にはユーザーが好き勝手に強調したい文字を大きく見せたりすることが簡単にでき、デザイン的な自由度は高いが、論理性は二の次となる。 このため、双方に意識が散漫となり、内容も支離滅裂で外見の統一感も無い、中途半端な文書ができてしまいやすい。また、一定のデザインを多くの文書に適用したり、一つの文書に対し適用するデザインを切り替えて多様な出力を得ること(ワンソース・マルチユース)も難しくなる。 多くのワープロソフト等では、アウトラインプロセッサなど文書の論理構成とデザインを分離する機能を備えているが、正しく使いこなすには多くのスキルを必要とする。また内容と外見の分離の必要性を感じない人も多く、広く利用されているとは言い難い。正しく作成された文書も、熟練していない者が加筆すると章立てや見出しの設定が破壊され台無しになることもある。多くのユーザーは論理的に見出しのレベルを選択すべきケースで、単純に文字の大きさを選択してしまう。 特に数学や情報工学の分野において、上のような非難をする人が多く見られる。このため、TeXやDocBookを愛用する者や、HTMLやCSSを直接編集してWebページを作成する者も多い。コンピュータの専門家であるのに、Microsoft Wordの操作方法を全く知らず、一般人に驚かれるという話も聞かれる。このように1枚の文書をマルチユースを前提とした論文のようにとらえるか、読み捨てのチラシのようにとらえるかの差は大きい。 ひとつのスタイルとして、内容と外見を分離するため、文章編集は専らテキストエディタで行い、印刷時にのみワープロソフトで整形する者もいる。よく似た慣行として印刷や出版業界では、最初から執筆者に整形しないテキストのみの提出を求めるケースが多い。一方でインデザインなどDTPソフトを指定して、熟練した執筆者にページ丸ごと編集をまかせるケースもある。 なお、Wikipediaの編集画面もWYSIWYGではないため、見出し以外の文字を故意に大きく見せるようなことはできない。そのため内容と外見が分離され不特定多数が編集してもデザインの統一性が保たれている。これは非WYSIWYG環境の有効性を証明する好例と言えよう。
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