内容と分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 07:31 UTC 版)
サガが扱う内容は、歴代のノルウェー王の伝記、アイスランドの植民とキリスト教化の歴史、島民の諍いと裁判、古代ゲルマン民族の伝説など多岐にわたる。 各種のサガは伝統的に、主題をもとに「王のサガ(英語版)」、「司教のサガ(英語版)」、「アイスランド人のサガ(英語版)」、「古代のサガ(英語版)」の4つに分類される。ただし、この分類のほかにも様々な分類方法がある。またこれらの分類に収まらないサガや、複数の分野にまたがるサガも存在する。例えば「同時代のサガ(英語版)」や「騎士のサガ(英語版)」、「聖人のサガ(英語版)」といった分類が存在する。 王のサガ (konungasögur) スカンディナヴィア諸国の王侯の事績を扱う。最大のものはスノッリ・ストゥルルソンの作とされる『ヘイムスクリングラ』で、神話時代から初のノルウェー統一王であるハーラル美髪王を経て、スノッリの同時代のマグヌス・エルリングソン王に至るまでの歴代ノルウェー王の生涯を記した16のサガが収められている。ほかにバルト海沿岸のヨムスボルグを拠点に活躍したとされる伝説的なヴァイキング集団を扱った『ヨームのヴァイキングのサガ』などがある。 司教のサガ (biskupasögur) アイスランドにおけるキリスト教化の歴史と同地で活躍した聖職者の生涯を扱う。ほかのサガよりも史実性が高いとされる。『キリスト教徒のサガ』、『司教パールのサガ』『聖ソルラークのサガ』などがある。 アイスランド人のサガ (Íslendingasögur) 家族のサガ、氏族のサガとも。植民から内乱の末ノルウェー王に服属するまでの期間のアイスランド人の活動を扱うサガで、その洗練された文体と完成された叙述により文学的観点から最重要の作品群とされる。内容は「血の復讐」と呼ばれる一族同士の報復行為の応酬とアルシング(全島集会)での調停を扱ったものが多い。 アイスランド人のサガは大小30作ほどが知られているが、卓越した詩人にして戦士のエギル・スカラグリームソンとその一族を扱う『エギルのサガ』、偉大な戦士グンナルと賢人ニャールの友情と死を描く『ニャールのサガ』、サガでは珍しく女性を中心人物としている『ラックサー谷の人々のサガ』、数世代に渡る首長たちの抗争を主題とする『エイルの人々のサガ』、アイスランドを追放になり、放浪のすえ殺された不運な男の生涯を空想を交えて描く『グレティルのサガ』の5作は質、量ともに最大級のサガであり、日本では「五大サガ」と称される。ほかに、ノルド人のアメリカ大陸探検の様子を描く『赤毛のエイリークのサガ』などがある。共和国時代末期の内乱状態を描いたサガの集成『ストゥルルンガ・サガ』は、単体で「同時代のサガ」(Samtíðarsögur)という独自のジャンルに分類されることもある。 古代のサガ (fornaldarsögur) 伝説的サガとも。アイスランド植民以前のノルド人の伝承や古来より伝わるゲルマン民族の伝説を扱うサガである。古代のサガが書かれたのはアイスランド人のサガよりも後の時代で、空想的な内容を多く含む点に特徴がある。ニーベルンゲン伝説を題材とする『ヴォルスンガ・サガ』、デンマークの首長ラグナルとその息子達を扱った『皮ズボンのラグナルのサガ(ラグナル・ロズブロークのサガ)』などがある。 同時代のサガ (samtíðarsögur) サガの作成者と同時代の出来事を題材としたもの。『ストゥルルンガ・サガ(英語版)』など。 騎士のサガ (riddarasögur) アーサー王伝説など、外国語の騎士文学がアイスランド語などに翻訳・翻案されたもの。 聖人のサガ (heilagra manna sögur) 聖人伝を題材とするもの。
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