公益事業に対する規制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/30 08:32 UTC 版)
「労働関係調整法#公益事業」も参照 労働関係調整法第8条で、公衆の日常生活に欠くことのできない「公益事業」として次の業種が指定され、これらの業種ではストライキの実施には事前の予告が必要となる。 運輸事業 郵便、信書便又は電気通信の事業 水道、電気又はガスの供給の事業 医療又は公衆衛生の事業 また電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律で、電気事業・石炭鉱業事業においてはストライキ時の禁止行為が規定されている。 特にストライキが予定されることが多いのは、運輸事業のうち鉄道や路線バスなどの日常生活に密着した公共交通機関を経営する鉄道事業者、バス事業者である。ストライキが実施されると列車やバスなどの運休が発生するため利用者への影響が大きく、プロ野球が鉄道ストで試合中止になるなど各種イベントへの影響も大きかった。ただし近畿日本鉄道など一部の私鉄はストライキを行わないか、あるいは集改札ストに留まり、平常どおり電車を運転した。1990年代以降は大手私鉄ではストライキはほとんど行われなくなり、仮に突入しても朝のラッシュアワー前に収束されることが多い。事業者も、大手私鉄の春闘が妥結した後に春闘交渉が行われる地方の中小私鉄やバス会社の一部のみで、使用者側の回答を不満としたストライキが行われる程度である。ただし、北海道内の私鉄総連では1980年代以降も組合側の連帯責任を名目に集団交渉が継承されたため、1991年までは毎年春闘ストが行われていた。 このストライキの影響は、主に通勤・通学の乗客に見られた。当時は現在と比較して公共交通機関への依存度が高くまた大都市への人口集中も盛んだったので、ストライキの際の通勤客の負担(運行している代替交通機関での通勤での混雑など)は近年では考えられないほどだった。しかし通学客の場合、学校が休校になる場合もあり、負担は通勤客ほどではなかった。また春休みを除き行楽シーズンには通常ストライキは行われなかったので、主に行楽・観光旅行などで公共交通機関を用いる乗客にはストライキ自体あまり認知されていなかったようである。 国鉄や民営化以降のJRにおいては、千葉エリアを根城とする国鉄千葉動力車労働組合(通称:動労千葉)によるストライキが毎年のように行われており、千葉駅以東のJR各線では、本線運転士の春闘のストライキにより2001年から2010年まで9年連続で列車の全面運休や大幅な運行本数の減少が発生していた。ただし、近年はJR側も要員の代替等の措置により影響を最小限にとどめるようにしており、実際に2013年は列車の運行に影響がでるストライキまでは至らなかった。 前述のように大手私鉄では1990年代以降、ストライキはほとんど行われなくなったが、相模鉄道が2014年にストライキを決行した。バス事業者でも同年に関東バス、2016年には臨港バス、2019年には京成バスで決行している。 大手航空会社では、乗員組合によるストライキが実施される場合が多い。かつて、日本航空では盛んにストライキが行われていた。しかし、近年は特定の組合が一部ストに突入しても、管理職や他の組合に所属する社員である程度はカバーできるため、実際の運航への影響は限定的なものとなっている。さらに、航空業界では深夜になって交渉が妥結し、回避されることも多い。 放送事業者でも、組合によるストライキが実施される場合がある。生放送番組(主にニュース番組・情報番組)においては管理職のアナウンサーや外部のフリーアナウンサーを起用することで影響を最小限にしている。担当者が元から管理職のアナウンサーや外部のフリーアナウンサーを起用している番組もある。地方民放局では労働組合自体が結成されていないところもある。
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