公的領域と政治
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/17 06:13 UTC 版)
アーレントの政治思想における政治概念は古代ギリシアの都市国家、ポリスでの政治が参照されている。ポリスで政治生活を営むことは暴力ではなく説得によって意志を決めることであり、ポリスの外部にあるものは家庭、オイコスの生活と捉えた。ポリスとオイコスは相容れない領域であり、ポリスの領域は、そこでの行為が活動であるために公的領域(public realm)である。その一方でオイコスの領域での行為は労働であるためにオイコスの性質は私的領域と言える。 公的領域は他者に働きかけることで自己が誰かを明らかにする領域であり、逆に私的領域ではそのような性格が根本的に奪われている。ただし人間は公的領域での生活と私的生活での生活の両方が不可欠である。私的領域が存在しなければ人間の生命維持のための生活が成り立たないからである。しかし公的領域と私的領域を混合すると大きな問題が生じる。 つまり自己の生命維持という私的領域で扱うべき問題が公的領域で扱われる事態が生じるのである。もしも政治の役割を富の再配分と考えれば、それは公的領域が持つ本来的な政治が失われることになるのである。政治にとって重要なことは個々人の生命を超えて存在する共通の世界である。したがって私的領域から公的領域へ移るためには自己の存在を超えなければならない。
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