人工超知能の実現可能性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/07 22:26 UTC 版)
哲学者デイヴィッド・チャーマーズは、 汎用人工知能が超知能実現への経路となる可能性が極めて高いと主張している。チャーマーズはこの主張を分解して説明し、AIは人類の知能と「同等」になることができること、AIは「拡張」されることで人類の知能を超えることができること、そしてAIの知能はさらに「増幅」されることで任意のタスクにおいて人類を圧倒できることを述べた。 人類レベルの知能の実現について、チャーマーズは人間の脳が機械的システムであり、したがって人工的な材料で再現することができると主張する。チャーマーズはまた、人類の知能が生物学的に進化することができた事実に言及し、人間のエンジニアが同様の過程でAIを進化させることができる可能性は高いとしている。特に進化的アルゴリズムは高い可能性で人類レベルの知能のAIをつくり出すことができるとされる。知能の拡張ならびに増幅についてチャーマーズは、新たに登場するAI技術は一般的に改良可能なものであり、AIが新技術の開発に力を貸す場合は特に(改良がなされる)可能性は高いと主張している。 強いAIに関する研究が進み、十分に高知能なソフトウェアが開発された場合、そのソフトウェアは自らを再プログラムし、自己を改善することができる。この特性は「再帰的自己改善」と呼ばれる。再帰的自己改善型のAIは、自己改善により自己を改善する能力をさらに向上させ、急激に増加する周期のなかで自己改善を続けることになり、結果的に超知能の獲得に至ると考えられる。このシナリオは知能爆発として知られている。 コンピュータの構成部品は、速度において既に人類のパフォーマンスを大幅に上回っている。ボストロムは次のように述べた。「生物のニューロンは約200ヘルツをピーク速度として動作している。この数値は、現代のマイクロプロセッサ(ピーク速度2ギガヘルツ)と比較すると7桁も遅い。」さらに、ニューロンの軸索上でスパイク信号が伝達される速度が最高でも秒速120メートルであることに関しては、「既存のプロセッシングコアは、光学的な交信を光の速さ(秒速約30万キロメートル)で行うことができる」と指摘した。 ボストロムはまた、「集団的超知能」が実現する可能性を指摘している。「集団的超知能」では、多数の独立した推理システムが互いに十分な連絡・協調することで、構成要素の主体をはるかに上回る知能を有す集合体として機能する可能性があるとされる。 その他の可能性として、「定性的」に人類が持つ推理能力・意思決定能力を改良する方法が考えられる。人類とチンパンジー属との大きな違いは、脳のサイズまたはスピードの差異よりも、むしろ思考方法の違いから生まれているように見える。人類が非人類の動物との競争において優位に立つことができるのは、長期的計画の立案能力・言語を使用する能力などの、新たに獲得または改良された推理能力に依るところが大きい。(人類の知能の進化・霊長類の認識力(英語版) を参照)同様に大きな影響をもたらすであろう推理能力における向上の余地が存在する場合、人類のチンパンジーに対する優位性と同等の優位性を、人類に対して有する主体が創造される可能性は高まる。 生物の脳のスピードとサイズが生理的な制約を受ける一方で、それらの制約は人工知能には当てはまらない。したがって、超知能を取り扱う著述家は超知能AIのシナリオの方にはるかに大きな関心を寄せている。
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