主な印相
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/23 13:37 UTC 版)
施無畏印(英語版)(せむいいん)(Abhaya Mudrā アバヤ・ムドラー) 手を上げて手の平を前に向けた印相。漢字の示す意味通り「恐れなくてよい」と相手を励ますサインである。不空成就如来が結ぶ。 与願印(よがんいん)(Varada Mudrā) 手を下げて手の平を前に向けた印相。坐像の場合などでは手の平を上に向ける場合もあるが、その場合も指先側を下げるように傾けて相手に手の平が見えるようにする。相手に何かを与える仕草を模したもので宝生如来などが結ぶ。 施無畏与願印(せむい よがんいん) 右手を施無畏印にし、左手を与願印にした印。坐像の場合は左手の平を上に向け、膝上に乗せる。これは信者の願いを叶えようというサインである。施無畏与願印は、如来像の示す印相として一般的なものの1つで、釈迦如来にこの印相を示すものが多い。与願印を示す左手の上に薬壷が載っていれば薬師如来である。ただし、薬師如来像には、本来あった薬壷の失われたものや、薬箱に乗るなど、もともと薬壺を持たない像もある。また、阿弥陀如来像の中にも施無畏与願印を表すものがあり、この印相のみで何仏かを判別することは不可能な場合が多い。図1は香港・ランタオ島の天壇大仏で、施無畏与願印を結ぶ。 転法輪印(てんぽうりんいん)(Dharmachakra Mudrā) 釈迦如来の印相の1つで、両手を胸の高さまで上げ、親指と他の指の先を合わせて輪を作る。手振りで相手に何かを説明している仕草を模したもので「説法印」ともいう。「転法輪」(法輪を転ずる)とは、「真理を説く」ことの比喩である。 親指とどの指を合わせるか、手の平を前に向けるか自分に向けるか上に向けるかなどによってさまざまなバリエーションがある。例えば胎蔵界曼荼羅釈迦院の釈迦如来の場合、両手の指先を上に向け、右手は前に、左手は自分側に向ける。この場合、右手は聴衆への説法を意味し左手は自分への説法を意味する。 定印(じょういん)(Dhyāna Mudrā) 禅定印、法界定印とも。坐像で、両手の手のひらを上にして腹前(膝上)で上下に重ね合わせた形である。これは仏が思惟(瞑想)に入っていることを指す印相である。 釈迦如来、大日如来(胎蔵界)の定印は左手の上に右手を重ね、両手の親指の先を合わせて他の指は伸ばす。これを法界定印(ほっかいじょういん)という。阿弥陀如来の定印は密教では法界定印とされるが、浄土教などでの場合は同じように両手を重ねて親指と人差し指(または中指、薬指)で輪を作るものもある。阿弥陀如来の印相には沢山のバリエーションがあるので、後に詳述する。 触地印(英語版)(そくちいん)(Bhūmisparśa Mudrā) 降魔印ともいう。坐像で、手の平を下に伏せて指先で地面に触れる。伝説によると、釈迦は修行中に悪魔の妨害を受けた。その時釈迦は指先で地面に触れて大地の神を出現させ、それによって悪魔を退けたという。このため触地印は、誘惑や障害に負けずに真理を求める強い心を象徴する。釈迦如来のほか、阿閦如来や天鼓雷音如来が結ぶ。 智拳印(ちけんいん)(Vajra Mudrā) 左手は人差し指を伸ばし、中指、薬指、小指は親指を握る。右手は左手人指し指を握り、右親指の先と左人指し指の先を合わせる。大日如来(金剛界)、一字金輪仏頂、多宝如来が結ぶ。 降三世印(こうざんぜいん) 小指を絡めて胸の前で交差させる印。 忿怒印(ふんぬいん)(Karana Mudrā) 中指と薬指と親指で輪を作る、いわゆるコルナに似た形をとる。 遊戯坐(英語版)(ゆげざ)(Lalitasana) 片脚を立てるか反対側の脚に乗せて椅座する。菩薩や天の像にはよく見られるが、仏陀においては弥勒仏以外の作例は少ない。日本美術においては鎌倉を中心として流行した。 施無畏印 与願印 転法輪印 禅定印 降魔印
※この「主な印相」の解説は、「印相」の解説の一部です。
「主な印相」を含む「印相」の記事については、「印相」の概要を参照ください。
- 主な印相のページへのリンク