ランド以降の発展
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「オブジェクティビズム」の記事における「ランド以降の発展」の解説
1982年に出版されたレナード・ピーコフの『不吉な相似:アメリカにおける自由の終焉』(The Ominous Parallels: The End of Freedom in America)を、ランドは「私以外のオブジェクティスト哲学者による最初の本」と評した。ピーコフは1991年に、ランドの哲学の包括的な解説書である『オブジェクティビズム:アイン・ランドの哲学』(Objectivism: The Philosophy of Ayn Rand)を出版した。クリス・マシュー・シャバラ(Chris Matthew Sciabarra)は、『アイン・ランド:ロシアのラディカル』(Ayn Rand: The Russian Radical、1995年)でランドの諸見解を論じ、その知的起源を理論化した。アラン・ゴットヘルフ (Allan Gotthelf)の『アイン・ランド論』(On Ayn Rand、1999年)、ティボー・R・マチャン(Tibor R. Machan)の『アイン・ランド』(Ayn Rand、2000年)、アンドリュー・バーンスタイン(Andrew Bernstein)の『一気に学ぶオブジェクティビズム』(Objectivism in One Lesson、2009)など、ランドの思想を簡潔にまとめた概説書も出版された。 オブジェクティビズムを、より専門的な領域に適用した学者もいた。マチャンは『客観性』(Objectivity、2004年)等の著作で、人間の知識に関するランドの文脈依存的な理論を、ジョン・L・オースティン(J. L. Austin)やギルバート・ハーマン(Gilbert Harman)による洞察にも依拠しながら展開した。デヴィッド・ケリー (David Kelley)は、ランドの認識論を『感覚の証拠』(The Evidence of the Senses、1986年)、『抽象作用に関する考察』(A Theory of Abstraction、2001年)等の著作で展開した。倫理学の分野では、ケリーが『洗練された個人主義』(Unrugged Individualism、1996年)、『争われるアイン・ランドの遺産』(The Contested Legacy of Ayn Rand、2000年)等の著作で、オブジェクティビズム支持者は仁愛(benevolence)という美徳により多くの注意を払うべきであり、道徳的制裁の強調を減らすべきであると主張した。ケリーのこうした見解に関しては多くの議論がある。ピーコフやピーター・シュワルツ(Peter Schwartz)は、ケリーはオブジェクティビズムの重要な諸原則を否定していると主張している。ケリーは、「理性に依拠した、教条主義的にならない議論・討論へのコミットメント」、「“オブジェクティビズムは拡大、洗練、修正に対して開かれている”という認識」、および「同調者も批判者も含む他者に対する仁愛のポリシー」を伴うオブジェクティビズムという意味で、「開かれたオブジェクティビズム」(Open Objectivism)という用語を使用している。 ランドの倫理学に焦点を当てている研究者タラ・スミス (Tara Smith) は、『道徳的諸権利と政治的自由』(Moral Rights and Political Freedom、1995年)、『存続可能な価値』(Viable Values、2000年)、『アイン・ランドの規範倫理学』(Ayn Rand's Normative Ethics、2006年)等の著書で、ランドの思想の原型に迫っている。デイヴィッド・ハリマン(David Harriman)は、著書『論理的飛躍:物理における帰納』(The Logical Leap: Induction in Physics、2010年)で、ピーコフと協同し、ランドの概念論に基づく科学的帰納の理論を展開した。 バーンスタインは、『資本主義者宣言』(The Capitalist Manifesto、2005年)でランドの思想の政治的側面を論じている。ジョージ・レイズマン(George Reisman)は、『資本主義:経済学についての論考』(Capitalism: A Treatise on Economics、1996年)で、オブジェクティビズムにおける方法論および洞察と、古典派およびオーストリア学派の経済学の統合を試みている。心理学においては、エドウィン・A.ロック (Edwin A. Locke)とエレン・ケナー(Ellen Kenner)が、『ロマンスへの利己的な道:情熱と理性で愛する方法』(The Selfish Path to Romance: How to Love with Passion & Reason)でランドの見解を検討した。ルイス・トーレス(Louis Torres)およびミシェル・マーダー・カムヒ(Michelle Marder Kamhi)は、『芸術とは何か』(What Art Is、2000年)でオブジェクティビズムの芸術論への適用を試みた。ハリー・ビンスワンガー(Harry Binswanger)は、『目的論的概念の生物学的基礎』(The Biological Basis of Teleological Concepts、1990年)でオブジェクティビズムの目的論への適用を試みた。
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