芸術論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/30 02:46 UTC 版)
「ヘルマン・シュミッツ」の記事における「芸術論」の解説
雰囲気との不安定な関わりをある程度でもコントロールする人間の営みには、大きく分けて三つある。一つは「居住(Wohnung)」であり、これは家や身の回りの調度を整え、周囲から襲いかかるさまざまな雰囲気と選択的に関わり、安定して心地よい空間を作り出すことである。広い意味では街づくりもこれに含まれよう。他の二つの雰囲気との関わりは特殊なもので、一つが上述した宗教、もう一つが芸術である。シュミッツによれば、芸術とは雰囲気を対象化し、それと適度な距離をとりつつ安定した関係をもつ営みである。建築にせよ絵画や彫刻にせよ、さまざまな事物を加工し、色彩を施し、光を加減しつつ作品を作ることで、身体的・情動的に特定の仕方で働きかけるようにする。それは雰囲気を巧みに制御することであり、これを享受することは、作品を通じてその意図された雰囲気を受け取ることなのある。 シュミッツは、身体と感情から人間の経験、自己と世界、自己と社会、自己と他者との関わりを捉え、それらが相互にどのように連関し合っているか、それらが人間の生のうちでどのように位置づけられ、どのような意義をもっているのかを示す。彼の思想の特徴は、きわめて具体的かつ詳細に事象を追求しつつ、全体を緻密に連関づけていくその体系性にある。彼の主著のタイトル『哲学体系』は、たんなる概念的、理論的な体系ではなく、まさに経験、現象の体系をも提示していると言える。『哲学体系』第一巻の冒頭に挙げられているゲーテの言葉は、シュミッツ現象学の本質を表している――「もっとも重要なのは、事実的なもののすべてがすでに理論であると悟ることだ。現象の背後に何も求めてはならない。現象そのものが理論なのである。」
※この「芸術論」の解説は、「ヘルマン・シュミッツ」の解説の一部です。
「芸術論」を含む「ヘルマン・シュミッツ」の記事については、「ヘルマン・シュミッツ」の概要を参照ください。
「芸術論」の例文・使い方・用例・文例
- 芸術論のページへのリンク