マントヴァのゴンザーガ家とイングランド王チャールズ1世
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「オルレアン・コレクション」の記事における「マントヴァのゴンザーガ家とイングランド王チャールズ1世」の解説
オルレアン公爵家以外にオルレアン・コレクションの成立に関係する歴史的人物として、マントヴァの貴族ゴンザーガ家、特にマントヴァ侯フランチェスコ2世(1466年 - 1519年)とその息子マントヴァ公フェデリーコ2世(1500年 - 1540年)があげられる。マンテーニャ、ジュリオ・ロマーノらマントヴァ家の宮廷画家たちや、ティツィアーノ、ラファエロ、コレッジョらにゴンザーガ一族が依頼して描かせた絵画は、マントヴァ公国と神聖ローマ帝国との結び付きを深めるために神聖ローマ皇帝カール5世に贈与されることがあった。これら贈与絵画の中でももっとも重要な作品とされるのが、後年パリでフィリップ2世の息子ルイに切り裂かれることになる神話をモチーフとしたコレッジョの絵画群である。 17世紀初頭には神聖ローマ帝国は末期的衰退を見せ始め、神聖ローマ皇帝のコレクションの多くが1625年から1627年ごろにかけて、熱心な美術品コレクターだったイングランド王チャールズ1世によって購入されている。チャールズ1世は他にもシスティーナ礼拝堂内部装飾タペストリーの下絵としてラファエロが描いた7点の『ラファエロのカルトン』や、レオナルド・ダ・ヴィンチのドローイングなどを購入しており、ルーベンスやヴァン・ダイクらの重要な作品のパトロンでもあった。これら貴重なコレクションはイングランド内戦で1649年にチャールズ1世が処刑されると押収されて売却されてしまい、重要な絵画のなかにはイタリアへ流出してしまったものもある。そしてチャールズ1世のコレクションが売却された後にマントヴァはローマ皇帝軍に侵攻され、残された絵画が戦利品として皇帝の居城プラハ城のコレクションに加えられている。 マントヴァ公家コレクションの絵画のなかには、ローマ皇帝コレクションからスウェーデン王室コレクション、そしてオルレアン・コレクションへと渡った作品もあり、1650年にロンドンで売却された際にフランス人コレクターに購入された作品もあった。フランス人コレクターが購入した絵画で、後年オルレアン・コレクションに加えられた作品も見受けられる。例えばジュリオ・ロマーノの『少年ユピテル』はもともとゴマントヴァ公家コレクションにあったもので、その後ローマ皇室コレクション、チャールズ1世、オルレアン・コレクションと所有が変わっている。そしてロンドンで売却された後に短期間フランスへと戻されてから再びイングランドに渡り、さらに後年の1859年になってロンドンのナショナル・ギャラリーが購入した。 チャールズ1世のコレクションの多くは、1660年の王政復古時にロイヤル・コレクションへと戻された。1660年にイングランド王位に就いたチャールズ2世は、父チャールズ1世のコレクションを取り戻すようイングランド中の画商に圧力をかけたが、イングランド国外へと流出した絵画は返還させることができなかった。ルーベンスの『聖ジョージとドラゴン』は、聖ジョージ(聖ゲオルギオス)はチャールズ1世を、助け出される姫君は王妃ヘンリエッタ・マリアをそれぞれモデルにしており、チャールズ1世のコレクションのなかでも重要な作品で、リシュリュー枢機卿のコレクションを経てオルレアン・コレクションへと加えられたが、1814年にイギリス王ジョージ4世が購入してロイヤル・コレクションに戻されている。 グリニッジのクイーンズ・ハウスに飾られていた、チャールズ1世の依頼で描かれたオラツィオ・ジェンティレスキの『モーセの発見』は、1660年にフランスからチャールズ1世の未亡人ヘンリエッタ・マリアへと返還された。この絵画は50年後にオルレアン・コレクションに加えられ、当時はディエゴ・ベラスケスの絵画だと考えられていた。もともとヨークシャーのカースル・ハワードに所蔵されていた絵画の一つで、後にジェンティレスキが同じ主題で描いた『川から救われるモーセ』(現在はプラド美術館所蔵)の存在がイングランドで知られるようになってから、ベラスケスではなくジェンティレスキの作品であると正確に同定された。『モーセの発見』は1995年に売却され、現在の所有者からナショナル・ギャラリーが貸与を受けて展示されている。 オルレアン公フィリップ1世の最初の妻アンリエッタ・アンヌはイングランド王チャールズ1世と王妃ヘンリエッタ・マリアの娘である。アンリエッタ・アンヌが所有していた小規模だが優れた美術コレクションの大半は、取り戻したロイヤル・コレクションのなかから兄チャールズ2世が1661年の結婚祝いに贈ったものだった。1670年にアンリエッタ・アンヌが死去するとこれらのコレクションはフィリップ1世が相続した。
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