ホメーロスは歴史家か?とは? わかりやすく解説

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ホメーロスは歴史家か?

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 02:13 UTC 版)

ホメーロス」の記事における「ホメーロスは歴史家か?」の解説

古代作家たちはホメーロス本当に存在した出来事歌ったのであり、トロイア戦争本当に起きたのだと考えていた。彼らはオデュッセウスアオイドスデーモドコスにかけた言葉信じていた[訳語疑問点]―― 「 アカイア軍の運命アカイア軍の行動と、その成功受難とをいみじく君は述べ歌ふ、さながら之を見し如く或は他より聞く如く。 」 —『オデュッセイア』第8歌489-491 土井晩翠19世紀に、ハインリヒ・シュリーマン小アジア発掘調査実施したのも叙事詩描かれた場所を再発見するためであったシュリーマンがまずトロイア呼ばれる都市を、それからミケーネの諸都市発見した時、これでホメーロス物語真実性証明されたと考えられた。アガメムノーンの顔を象ったマスク大アイアースネストールの杯などが次々と発見されたと思われ、彼らもまた実在した考えられた。アオイドスによって描かれ社会ミケーネ文明同一視したのである。 この文明に関する諸々発見とりわけ線文字B解読)により、この説は急速に疑問視されるようになったアカイア社会は、戦士たちによる国体なき貴族政治というよりもメソポタミア文明に近い、行政・官支配よるものだった。ジャクリーヌ・ド・ロミリ(フランス語版)はこう説明している――「最近発見された諸文書と、詩に書かれ内容との間には、『ローランの歌』と、ローラン時代公正証書との間にあるのと変わらぬぐらいの繋がりしかない。」 モーゼス・フィンリーは『オデュッセイア世界』(1969) において、描かれている社会は、多少時代錯誤はあるにせよ、本当に存在したのだと断言した――ミケーネ文明と、紀元前8世紀都市国家時代との中間位置する紀元前10-9世紀頃の「暗黒時代」だったのであるフィンリーは「暗黒時代ホメーロスの詩」(『古代ギリシア』、1971年)でこう書いている―― 「 吟遊詩人たちの懐古趣味的な意志部分的に成功収めたかのようである。ミケーネ社会記憶はほぼ全て失われしまっていたにせよ、吟遊詩人たちは、暗黒時代の(終わり頃よりも)始め頃をある程度正確に描くために自分たちの時代より遅れたままに留まっていた――片やミケーネ残滓片や同時代表現という時代錯誤断片を常に残存させて。 」 フィンリー立場もまた今日では疑問付されており、これは紀元前8-7世紀特徴見せ時代錯誤による部分大きい。まず、『イーリアス』ファランクス似た3つの記述含んでいる―― 「 かくて彼らは兜と円き整えた、兜、そして人が互いにひしめきあい、彼らが身を屈めると、馬の髪に覆われた兜が隣の見事な飾冠にぶつかる、さほどに彼らは密集していた。 」 ファランクス導入時期に論争があるが、大部分論者紀元前675年であったとしている。 戦車二輪馬車)も、辻褄の合わない使われ方をしている――英雄たちは戦車乗って出発し飛び降りて足で立って戦っている。詩人ミケーネ人が戦車使っていたことは知っていたが、当時使用法知らず戦車対戦車で、投げ槍用いていた)、同時代の馬の用法戦場まで馬に乗って赴き、降りて立って戦闘していた)を当時戦車移し替えたのである物語青銅器時代ただなか進行しており、英雄たちの武具実際に青銅でできていた。しかしホメーロス英雄たちに「心臓」を与え『オデュッセイア』では鍛冶場焼きを入れられた鉄斧立て音のことを語っている。 こうした異なった時代から発している慣習存在は、ホメーロス言語同様にホメーロス世界もそれ自体としては存在しなかったことを示している。オデュッセイア旅程地理関係もそうであるように、これは混淆による詩的な世界表している。

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