ホメーロス言語とは? わかりやすく解説

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ホメーロス言語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/02 16:23 UTC 版)

ホメーロス言語: Homeric Greek)は、ホメーロス叙事詩イーリアス』『オデュッセイア』に使われている古代ギリシア語変種イオーニアー方言アイオリス方言・特殊な要素が混在しており、教科書的な古代ギリシア語(アッティカ方言)と大きく異なる。

解説

イオーニアー方言(古イオーニアー方言)を中核として[6]アイオリス方言の要素や、ミュケーナイ・ギリシア語の残滓らしき語彙、不統一な文法規則が混在している[7]枕詞エピテトン)などの技巧[8][9]、固有名詞の異形も多い[10](例: アテーナイエー[10]ポセイダーオーン[10]アイデース[11])。

複雑さの理由は諸説あり[7][8][12]ホメーロス問題とも関わる。口誦叙事詩のために作られた人工言語とも言われる[9][13]。ホメーロス言語の要素はヘーシオドス[13]テュルタイオス英語版[3]などにも見られる。

18世紀のベントレー英語版は、ホメーロスにディガンマの痕跡を見出した[12][14]

関連項目

関連文献

脚注

  1. ^ 池田英三「ホメーロスの比喩 : その問題点を尋ねて」『北海道大學文學部紀要』19、1971年。 NAID 120000952199。8頁。
  2. ^ 松本 1972.
  3. ^ a b G・ハイエット 著、村島義彦 訳「翻訳 パイデイア(その5) : ギリシア文化を彩る理想の数々」『立命館文学』632、立命館大学人文学会、2013頁。 NAID 110009691530。57;64頁。
  4. ^ 松本 2014.
  5. ^ 吉田 1997.
  6. ^ マルティン・チエシュコ 著、平山 晃司 訳『古典ギリシア語文典』白水社、2016年。 ISBN 9784560086964 352頁。
  7. ^ a b 逸身喜一郎『ギリシャ・ラテン文学 韻文の系譜をたどる15章』研究社、2018年。 ISBN 9784327510015 54頁。
  8. ^ a b 松平千秋「語り物としてのホメロス」『ホメロスとヘロドトス : ギリシア文学論考』筑摩書房、1985年。NDLJP:12575436/10。9頁。
  9. ^ a b 高津春繁『ホメーロスの英雄叙事詩』岩波書店〈岩波新書〉、1966年。NDLJP:1698446/73。134-144頁。
  10. ^ a b c 中務哲郎 訳『オデュッセイア』京都大学学術出版会〈西洋古典叢書〉、2022年。 ISBN 9784814004225 凡例。
  11. ^ 松原國師『西洋古典学事典』京都大学学術出版会、2010年。 ISBN 9784876989256 918頁。
  12. ^ a b ミシェル・ブレアル 著、工藤進 訳「ホメーロスをよりよく知るために 文学史としての問題」『言語文化』26、明治学院大学言語文化研究所、2009年。 CRID 1050001202552650880。13-14頁。
  13. ^ a b 沓掛良彦『ギリシアの抒情詩人たち 竪琴の音にあわせ』京都大学学術出版会、2018年。 ISBN 9784814001309 30頁。
  14. ^ 片山英男、平凡社、改訂新版 世界大百科事典『ベントリー』 - コトバンク

ホメーロス言語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 02:13 UTC 版)

ホメーロス」の記事における「ホメーロス言語」の解説

ホメーロス言語フランス語版)は叙事詩用いられ言語であり、紀元前8世紀には既に古風なもので、テクスト固定され紀元前6世紀にはなおのことそうであった。ただし、固定が行われる前に古風な表現一部置き換えられテクストにはアッティカ語法フランス語版)も入り込んだ長短六歩格韻律は、当初の形を復元できる場合があり、またある種言い回しが行われる理由説明できることがある。この例として、紀元前1千年紀のうちに消滅した音素であるディガンマ(Ϝ /w/)が、ホメーロスにおいては依然として韻律上の問題解消のために表記発音もされないながらも用いられことがある例え『イーリアス』第1歌108行は―― 「 ἐσθλὸν δ’ οὔτέ τί πω [Ϝ]εἶπες [Ϝ]έπος οὔτ’ ἐτέλεσσας(汝、好事を口にせず、はた又之を行はず。〔土井晩翠訳〕) 」 古風な-οιοとより新しい-ουの2種属格や、また2種複数与格(-οισιと-οις)が競合して用いられることは、アオイドス自分意向古風新風活用形切り替えられたことを示している――「ホメーロス言語は、通常決し同時に用いられることのなかった様々な時代形式混淆物であり、これらの組み合わせ純粋に文学的な自由さ属するものであった。」(ジャクリーヌ・ド・ロミリ(フランス語版)) その上、ホメーロス言語は異なった方言組み合わせるアッティカ語法や、テクスト固定の際の変化取り除くことができる。イオニア方言アイオリス方言2つ残り、それらの特徴一部読者にも明白である――例えば、イオニア人アッティカイオニア人[訳語疑問点]が長音アルファ(ᾱ)を用いるところでエータ(η)を用い、よって古典的なアテーナー」や「ヘーラー」の代わりに「アテーネー」ヤ「ヘーレー」と言うこうした2つ方言の「還元不可能な共在」(ピエール・シャントレーヌ(フランス語版)の表現)は、様々な方法説明しうる―― アイオリス創作されイオニアへと渡った2つ方言両方用いられていた地域創作された。 異な時代形式混淆同様に、主に韻律などのためにアオイドス自由な選択行なった実際のところ、ホメーロス言語は詩人たちにとってしか存在しなかった混合言語であり、現実には話されず、そのこと叙事詩日常現実との間に作り出す断絶強めている。ホメーロス時代よりもずっと後になると、ギリシア作家たちはまさに「文学らしくする」ためにこホメーロス的な語法模倣するうになる

※この「ホメーロス言語」の解説は、「ホメーロス」の解説の一部です。
「ホメーロス言語」を含む「ホメーロス」の記事については、「ホメーロス」の概要を参照ください。

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