プーチン政権の国家観・歴史観
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「ロシア・ウクライナ危機 (2021年-2022年)」の記事における「プーチン政権の国家観・歴史観」の解説
常盤伸はプーチンについて、エカテリーナ女帝がウクライナを「小ロシア」として併合し同化させたロシア帝国のような「帝国復活」の願望を持っていると指摘した。2012年の民主化運動の大弾圧以降、プーチン政権では、対欧米協調派が衰退し、旧KGB出身のニコライ・パトルシェフロシア連邦安全保障会議書記ら強硬派のチェキストが主導権を握り、欧米のリベラルな価値観がロシアの精神的基盤を破壊するという危機感を持ち、2021年に改訂された戦略文書「安全保障戦略」にも明記された。 2021年7月のプーチンの論文では「ウクライナとロシアは一つの民族」「ウクライナの真の主権はロシアとのパートナーシップによってのみ可能だ」と結論づけ、ウクライナの主権を否定した。アメリカの歴史家ティモシー・スナイダーは、プーチンの論文の思想を帝国主義と表現し、イギリスのジャーナリスト、エドワード・ルーカスはそれを修正主義者と表現した。他のオブザーバーは、ロシアの指導部が現代ウクライナとその歴史について歪んだ見方をしていると指摘している。 ウクライナ侵攻直前の2月22日の演説で「ウクライナは真の国家として安定した伝統がない」とウクライナ国家の正統性を否定した。 プーチンの側近には、パトルシェフ安保会議書記、ナルイシキン対外情報庁長官、ボルトニコフ保安庁長官、ショイグ国防相の4人がおり、ショイグを除く3人はKGBでプーチンの同僚だった。これらはシロビキ(武闘派)のサンクトペテルブルク派ともいわれ、特にパトルシェフ安保会議書記はプーチンが最も信頼する側近とされ、その権力は強いと政治学者ワレリー・ソロベイは指摘する。パトルシェフ書記は2021年末にウクライナ指導部は「ヒトラー並みの悪人」「人間以下」だと語っており、これはウクライナ侵攻後のプーチンの非ナチ化発言と関連しているとみられている。ウクライナ国内には、ナチス・ドイツに加担したウクライナ民族主義者ステパーン・バンデーラを英雄視する風潮や、極右政党スヴォボーダなどネオナチ勢力の存在がある。その一方でウクライナ東部の紛争に影響を受け、2015年5月にポロシェンコ政権下で「脱共産主義法」(ウクライナ語: «Про засудження комуністичного та націонал-соціалістичного режимів»)が発効し、共産主義およびナチスのプロパガンダが禁止されている。 筑波大学の中村逸郎教授は、プーチン大統領は自らの政治を正当化するため、国家・国益・国家主権を重視して、「ロシアの神話」シリーズの著者であるウラジーミル・メジンスキー大統領補佐官の思想を必要としていたと指摘する。 ロシアの政治評論家アンドレイ・コレスニコフは、ウクライナ危機はロシアの帝国主義の結果であり、プーチン政権の目標はロシア帝国の復活にあると指摘した。 プーチン大統領の関連人物 ニコライ・パトルシェフ連邦安全保障会議書記 セルゲイ・ナルイシキン対外情報庁長官 アレクサンドル・ボルトニコフ保安庁長官、 ウラジスラフ・スルコフ大統領補佐官(2013〜2020)- メディア戦略を担当。ロシアの伝統的な民主政治を「主権民主主義」として主張。 ウラジーミル・メジンスキー大統領補佐官(2020〜)- ロシアについての神話、歴史、軍事の著作多数。 ミハイル・ミシュスティン連邦政府議長 セルゲイ・ショイグ国防大臣 セルゲイ・ラブロフ外務大臣 ワレリー・ゲラシモフ参謀総長
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