ソフト面での対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 09:37 UTC 版)
他の自然災害と同じくハザードマップの整備や避難訓練の実施による住民の防災意識の向上などがあげられることが多い。津波における防潮堤と同じく、砂防ダムが整備されたからと言って必ずしも安全なわけではなく、砂防ダムによって力を減衰しきれなかった土石による被害や、砂防ダム自体が決壊してしまう場合もあり、土石流の恐れがあるときは渓流沿いから適宜避難することが求められる。 日本における土石流関連のハザードマップにはいくつか種類があり、法的な規制がつくものとつかないものがある。法律で最も有名なのは土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(土砂災害防止法。平成12年5月8日法律第57号)である。この法律では砂防ダムのさらに下流にある住宅地等に着目しており、住宅地等が法律における土砂災害警戒区域(もしくは特別警戒区域)に指定された場合には、定期的な避難訓練の実施義務化、高齢者や子供などが関わる一部施設の建設制限、増改築時の建築確認義務化、安全な区域への移転勧告や移転費用の一部補助などの規制がある。土砂災害防止法による2つの警戒区域への指定地は年々増加しているが、保有する不動産価値の低下への懸念などを理由に住民が警戒区域への指定を拒む場合もあり、まだ完璧なハザードマップにはなっていない。 土砂災害防止法とは別に国土交通省及び林野庁が主管となっている都道府県の土木系部署、林業系部署が土石流発生の危険性が高い渓流をそれぞれ地図上で公開している。土石流危険渓流(国土交通省系での用語。林野庁系では崩壊土砂流出危険地区)などと呼ばれるが、開発に対しての制限などは無く各々が作る砂防・治山施設の整備根拠や整備進捗状況を測るために使われている。2000年代以降各都道府県では部署間を跨いだ地理情報システム(GIS、統合型GIS)の開発や公開に力を入れており、管轄する官庁の違いに捕らわれずにパソコンで一目で確認できるような場合も多くなった。 国土交通省及び林野庁(およびこれらが主管する都道府県の各部署)では砂防ダムの周辺に砂防法における砂防指定地への指定、森林法における保安林への指定などによって開発規制をかけているが、土地所有者の意向もあり必要最小限の範囲しか指定できない場合も多い。開発規制の内容としては区域内における建築物の建築の制限、立木の伐採瀬減、土石の移動制限等がある。京都市の天神川では堆砂敷に住宅が建てられた砂防ダムが存在するが、これは規制に抵触し違法に当たる。 また、砂防ダムより上流の森林地帯では保安林に指定されていなくとも林地開発許可制度という規制で、大規模な開発には制限をかける仕組みがある。林地開発許可制度では森林を伐採したことに対して、森林に相当する代替設備を求める場合があり、沈砂池、水路工、土留工などを申請者が作ることを条件に開発許可を出す。 土石流(火山泥流)のハザードマップ(コロンビア) 土砂災害警戒区域(黄色)と特別警戒区域(赤) 土石流危険渓流の標識(愛媛県) 保安林の標識 土石流(debris flow)の危険を訴える看板(アメリカ)
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