スペイン法廷と人道に対する罪
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/16 04:24 UTC 版)
「チベット問題」の記事における「スペイン法廷と人道に対する罪」の解説
「人道に対する罪」を参照 2006年9月30日に起きたナンパラ峠襲撃事件をきっかけに国際的に中国政府を批判する運動が展開されるとともに、中国当局によるチベット地区弾圧も強化された。これらについてスペインの活動団体 Tibet Support Committee of Spain (CAT) と Fundacion Casa Del Tibet(在バルセロナ、チベットハウスファンデーション)が提訴、スペイン最高裁判所は普遍的管轄権(普遍的司法権の原則)に基づき「チベット人ジェノサイド事件」として受理した。 2009年5月5日、スペイン最高裁判所サンチャゴ・ペドラズ(Santiago Pedráz)判事が、中国におけるチベット問題に関して、中国政府高官8人を「人道に対する罪」を犯した容疑で裁判に召還することを発表、翌日には中国に通知された。容疑者はチベット自治区党委員会書記張慶黎(Zhang Qingli)、ウイグル自治区党委員会書記王楽泉、中国少数民族対外交流教会前会長李德洙(Li Dezhu)。国防部部長梁光烈、国家安全部部長耿恵昌、公安部部長孟建柱、チベット軍区司令・中国人民解放軍中将董貴山、チベット自治区初代第一書記張国華(1972年死去)ら。ペドラズ裁判官は中国当局に対して、2005年に締結された中国とスペイン二国間司法協力協定に基づき、司法協力を要請し、さらに告訴内容が実証されれば、人道に対する罪侵害の罪でスペイン法と国際法の両方で裁かれることを通告した。しかし、中国政府は「虚偽訴訟」として訴訟に応じないと6月16日に発表した。また、ペドラズ裁判官が中国に渡航した場合は逮捕されると口頭で応じられたともいわれる。 なお、バレンシア大学のホセ・モルト(Jose Elias Esteve Molto)国際法学科教授は「もし起訴された中国指導者らに対する出頭要求に従うことが拒否された場合には、スペインと犯罪者引渡条約を結ぶ国の国内で、彼等の逮捕が可能になる。これは国際刑事警察機構(インターポール)による規約であり、個々の政府の域を越えて施行される 」と語っている。普遍的管轄権に基づき、インターポールを通じて国際逮捕状の発布をし、逮捕した例としては、スペイン判事のバルタサール・ガルソンによるチリの独裁者アウグスト・ピノチェトへの国際手配がある。 2013年11月19日、スペインの全国管区裁判所はチベット族虐殺に関与した容疑で江沢民(元中国共産党中央委員会総書記)、李鵬(元国務院総理)、喬石(元全国人民代表大会常務委員会委員長)、陳奎元(元チベット自治区党委員書記)、彭珮雲(元国家人口計画生育委員会主任)の5人に逮捕状を出した。また、2014年2月10日には同容疑で5人を国際手配し、国際刑事警察機構(ICPO)への引き渡しを求めた。 しかし、中国政府からの反発を受けたこともあり、スペイン政府は2014年2月、「普遍的管轄権」の制度を改正して訴追対象を「スペイン人、もしくはスペイン在住者」に限定することとした。これを受けたスペイン全国管区裁判所はこの改正を遡及適用し、同年6月23日に5人に対する訴追を却下した。
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