ガスカートリッジ式ストーブ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 14:45 UTC 版)
「ポータブルストーブ」の記事における「ガスカートリッジ式ストーブ」の解説
ガスカートリッジ式ストーブとは、燃料にブタンやプロパン等の液化石油ガスを用いるもののうち、ガスタンクをカートリッジとして容易に交換可能な構造としたものを指す。広義の分類では家庭用の簡易な携帯調理器具であるカセット焜炉もガスカートリッジ式ストーブに含まれうる。 殆どのガスカートリッジ式ストーブの形状は、前述のガソリン式ポータブルストーブのデザインに準じており、大きく分けてガスカートリッジとバーナーが一体となるものと、柔軟なチューブでバーナーとガスカートリッジが分離された構造を持つ物に大別できる。大型のキャンピング・ストーブの中にはツーバーナー構成を採るガスカートリッジ式ストーブも存在する。なお、ある程度以上の大きさのキャンピングストーブの場合、カートリッジ式ガスではなくプロパンガスのボンベを直接繋ぐ、家庭用ガステーブルに似た構成のものも登場する。プロパンガスボンベは大きく重く携帯用途ではあまり用いられないが、オートキャンプなどの輸送手段が存在する場合や、バーベキューなどの大火力を要するアウトドア料理などに広く用いられる他、日本ではこのような大型ガスストーブは屋台などでの調理でも広く用いられている。 燃料の液化ガスはカートリッジ内部に存在する間は液体であるが、バーナーのバルブが開かれてバーナーヘッドから大気圧に触れることで直ちに気化が行なわれる。そのため一般的にガスカートリッジ式ストーブは面倒で経験を要するプレヒート作業が全く必要なく、マッチの火や電気着火装置の火花など火種となるものをバーナーに近づけてバルブを開くだけで直ちに調理を開始できる事が最大の特徴である。またガスの流量調整が一つのバルブで非常にきめ細かに行なえるので火力の調整も極めて容易であり、最大火力も液体燃料に劣らない程大きなものである。また液化ガスは非常にクリーンな燃焼を行なうのでバーナーヘッドのメンテナンスも殆ど必要ない。ガスカートリッジ式ストーブの登場はポータブルストーブを使用するための個々人の技術的障壁を一挙に取り除き、ポータブルストーブが登山やハイキングを趣味とする本格的な趣味人以外の一般人に広く普及することに非常に大きな役割を果たしたとも言える。 ガスカートリッジ式ストーブは性能面や使い勝手では申し分のないものではあるが、従来型ポータブルストーブに対して幾つかの決定的な劣位も存在する。一つは燃料のコストで、一般的にアウトドア向けのガスカートリッジは液体燃料などより高価であり、詰め替えなどによる容器の再利用も原則としては行なわれない。またスーパーやコンビニでカセットガスが手軽に手に入る日本とは違い、日本国外では交換用ガスカートリッジの入手が難しい場合もあり、必然的に単価も高くなる傾向もある。 もう一つの欠点は、気温の高低により器具の熱出力が左右されやすい点である。特に個人向け小型ガスカートリッジ式ストーブに顕著であるが、あまりにも寒冷な気候の場合、ガスカートリッジが冷えて充分な液化ガスの気化が行なわれなくなり、着火自体が行なえなくなったり、十分な熱出力が得られなくなる危険性が存在する。一般的なカセットコンロであれば10度以下で性能低下が発生し、5度以下で気化が行われず使用不可に陥る。アウトドア向けのカートリッジであれば0度まで利用可能な製品も存在し、極限環境向けとして-20度でも使用可能なことを謳う製品も存在する。このような環境でも利用する直前に懐炉や人肌でカートリッジを温めるなどの工夫で運用を行うことも不可能ではない。製品次第ではあるが、ストーブ側にカートリッジを温める機巧が取り入れられていたりする場合もある。
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