ガスエンジンヒートポンプ(GHP)・灯油エンジンヒートポンプ(KHP)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 22:49 UTC 版)
「エア・コンディショナー」の記事における「ガスエンジンヒートポンプ(GHP)・灯油エンジンヒートポンプ(KHP)」の解説
ガスエンジンで圧縮機を駆動し、冷暖房を行うガスエンジンヒートポンプも近年普及が進んでいて、以下のような特徴がある。 消費電力が小さく、電力ピークカットの効果も高い。 空調用の受電設備が不要なため、新規導入時のイニシャルコスト面でメリットがある。 KHPは2011年7月31日に生産が終了しており、最新モデルで補給品供給期は2020年11月が最後である。 発電機を搭載した機種も登場、自己消費電力のほとんどをまかなう為、商用の消費電力はごく僅かである。 電気式のものより、ガスエンジン回りの整備・点検や、消耗品の交換費用が多くかかる。 機器本体のみを比較すると、初期導入費用が電気式より高い。 多くのガス事業者で、通常より安価な空調用のガス料金を別途設定しているため、メータと配管を他の系統と別にすることが多い。 室外機の設置スペースまたは高さが電気式に比べ大きく必要(20馬力システムだと電気式と比較した場合占有面積は2割増し、高さは1.5倍、重量は2倍ある)。 レシプロエンジンでコンプレッサーを駆動するもの(この分野では、レシプロエンジン以外のエンジンが採用された例はない)はモーターに比べ騒音が大きい。またガス燃焼特有の主として窒素酸化物に加えて、燃料ガスの付臭剤がTBMに代表される硫黄化合物であれば硫黄酸化物いわゆる亜硫酸ガスによる臭気が発生する(エンジン自体はLPGタクシーやCNG車と同じだが、排気ガスに関する厳しい規制が無く野放し状態だった。2003年時点では陸用内燃機関としての自主規制により100ppm、東京都における火力発電所の10ppmより一桁甘い規制がなされ、現在はほぼ使用されていない)。当然、一酸化炭素も排出される。 上記窒素酸化物を含んだ燃焼排気ガスから亜硝酸を含んだドレイン排水が発生するが、強酸性であるため中和処置を行わず垂れ流しにするとコンクリートの腐食を誘発する。 ガスエンジンの廃熱を暖房に利用できるため、寒冷地においても暖房運転の立ち上がりが良い。また暖房時の室外熱交換器の除霜にもエンジン廃熱を用いるため、暖房能力の低下を抑えることができる。 エンジンがコスト面から旧式を使っており総合効率は1を少し上回る程度(エンジンが30%程度、ヒートポンプがEER値が3〜4の場合システムCOP値は1〜1.2)で近年の電気式の省エネ化(特にマルチでなく1:1システムが顕著)でCOP値が4以上と従来機の半分の電気代で運転できる事から、導入費用+保守費用+ガス代を考えてもGHPが割高となるケースがある。上記の排気ガス規制とあいまって新規採用が減少、特に店舗用の小型機器業界は壊滅状態である。 エンジン式の構造上、現状では冷媒漏れが避けられない。 燃料(特に都市ガス)の供給が絶たれると運転できない。 商用電力を利用して運転するため、原則停電時には運転できない。ただし、電源自立型と呼ばれるタイプでは、発電機とバッテリを内蔵することで停電時でも起動、運転が可能となる。発電した電力のうち余剰分は、通常の電力として使用することも可能である。 LPGは災害時に供給が止まることが少なく、発電機で少量の電気を供給すれば稼動する。一方運搬に必要な道路のインフラストラクチャーの損傷具合によっては都市ガス同様に復旧が遅くなる事もある。ただし、都市ガスは復旧が遅く長期に渡って空調が使えなくなる。したがって都市ガスが無ければ営業自体ができない店舗(飲食店やガス炊きボイラーの浴場)はともかく、病院や事務所など直接ガスに依存しない施設ではGHPのみに依存すると空調に支障をきたす場合がある。なお現行のGHPにおいては、使用燃料を都市ガス(13A)とLPG間で相互に切り替えることが可能であるため、必要に応じて都市ガスからLPGに切り替えたうえでボンベを接続することで、運転の継続が可能となる。 電力ピークカットを目的とした税優遇措置は、2011年現在も有効である。
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