カミンズ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 02:46 UTC 版)
戦後、日本の気動車用エンジンは国産技術振興や補修部品の入手性の問題もあって徹底して国産で押し通されてきたが、1989年にJR東海が特急用のキハ85系搭載用として、世界的なディーゼルエンジンメーカーであるアメリカのカミンズ社 (Cummins Inc) 製NT-855系エンジンを輸入し、鉄道業界の注目を集めた。もっとも実際に採用されたのは同社のイギリス工場製水平シリンダ形エンジンであるNTA855-R1 (350 PS) であった。 NT-855系エンジンは古く1960年代に設計された14 L級の直列6気筒機関であるが、鉄道・船舶・自動車・定置動力など広範に用いられ、世界各国で多数の使用実績があるベストセラーであり、日本においてもJR東海の沿線の大井川鐵道が同業他社の先陣を切ってNT-855L (355 PS) を1982年以降、井川線向けDD20形で採用、安定した性能で高評価を得ていた。大井川鉄道でこの系列の機関が採用された背景には、静岡県内の漁船でカミンズ製エンジンが大量に採用されており、補修部品の調達コストや納期の面で国産品に遜色ない条件を提示できた、という事情があった。JR東海の場合にもメーカーにこだわらず高性能で廉価なエンジンを求めた結果の選択ではあったが、この選択はアフターサービスの充実やランニングコストの低さをも重視したものである。NT-855系は以後その他のJR各社にも採用例が生じている。 しかしながら、2010年代以降、NT-855系・N14系を含むカミンズのNシリーズエンジンは、排出ガス規制の関係で後継形式エンジンに代替され、製品ラインナップから除かれた「過去の形式」となっているが、にもかかわらずJR東海は、全ての気動車用エンジンをNシリーズに統一した後は後継形式の導入はせず、2010年代に至ってもNシリーズの調達を続けている(カミンズは、製品ラインナップから除かれた過去の形式であっても調達には応じている)。日本では鉄道車両に排出ガス規制が設けられていないという背景もあるとは言え、新形式の導入に消極的となって環境性能に劣る旧形式機関の調達を続けるという状態であり、過去の国鉄が、過度の標準化思考から脱することができず、旧式化したDMH17系エンジンを採用し続けたのと似た状況が生じつつある。 これら3系統の11 - 15 L級の直列6気筒エンジンが、21世紀初頭現在の日本における気動車用エンジンの主流であり、必要に応じたチューニングをすることで、普通列車用のレールバスから特急形車両に至るまで、広範に用いる手法がJR各社において半ば常識化している。しかし、上記のように、標準化を達成してしまうとそれ以上の刷新が阻まれるという状況も再び生じつつある。 また従前の日本の気動車では、1両あたり400 PS以上の出力を要する場合には、構造の複雑なDML30HS/HZ系機関を搭載する以外に選択肢がなかったが、整備性や経済性の改善された新世代の直列6気筒直噴エンジンが出現すると、特急形車両を中心にこれを1両に2基搭載する事例が多く見られるようになった。また、非力だったキハ40系を中心に、これらの新型エンジンと新しい変速機に換装することにより走行性能を改善させることも行われている。あわせて、換装後の機関の余裕出力により冷房化を図るケースも見られる。詳細は次項を参照のこと。
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