アメリカ側の関心
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/11 07:15 UTC 版)
来るべきケネディ政権はアメリカとイギリスの特別な関係(英語版)に異なる意見を持っていた。特にロバート・マクナマラはイギリスが独立した核戦力を持つことに反対していた。アン・アーバーでの1962年6月16日の演説で、マクナマラは次のように述べた、「限定された核能力、作戦上の独立性は、危険で高価、陳腐化しやすく、抑止力としては信頼性を欠いている」。さらに、「相対的に弱い国家の核戦力とその標的としての敵国の都市は、抑止の機能すら実現し得ない」。ディーン・アチソンはさらに辛辣であり、ウエスト・ポイント士官学校での演説で次のように述べた。「イギリスは帝国を失い、もはや役割を見つけられないでいる。独立したパワーとしての役割を演じようとする企て、すなわちヨーロッパから隔たり、アメリカとの『特別な関係』に基づく役割などもう時代遅れなのだ」。 ケネディ政権はスエズ危機の様に、ソビエトの反応をまたもや誘発するような状況が再発するのを懸念していた。イギリスの抑止力を信頼できないと見なすのであれば、アメリカの対応を必要とするような攻勢が続くかもしれなかった。アメリカは、イギリスの核戦力を、自国を望まれざる戦争に引きずり込む潜在的な目標と見ていた。アメリカが考案したのは、イギリスに「多角的核戦力」、すなわち両国が同意するときにのみ使用できる「二重の鍵」配置を強要することであり、それによってイギリスの戦力を確実な標的としては縮減もしくは除去することであった。両国の兵器が単一の戦力の一部であれば、その核戦力を攻撃するには、イギリスとアメリカ両方への攻撃を必要とするため、攻撃の成算はいっそう見込みがたいものになる。アメリカはまた、イギリスに引き続いて独自の抑止戦力を開発しようとする他国が欲し、同盟国間での核拡散が導かれることを恐れていた。抑止力が大規模な国際的戦力によって提供されるのであれば、個々の戦力の必要性は減じられてしまうであろう。 初期の試射が失敗したことで、スカイボルトはテストの早い段階で信頼できないことが判明した。アメリカはもはやスカイボルトを必要としなかったが、それというのも改良型のサイロ配置型ミサイルとポラリス潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)により、アメリカの反撃能力は大幅に脆弱性を減じていたからである。SLBMは空中発射型ミサイルに比べて大きく有利であって、より大きな範囲を移動させることができ、数時間単位ではなく数ヶ月単位の待機時間を得ることができた。もうひとつの長射程・中精度兵器であるスカイボルトは、それらの兵器の有用な能力になんら付け加えるところが無かった。 一方でイギリスは、スカイボルトに注力するために他のあらゆるプロジェクトをキャンセルしていた。このことが意味するのは、アメリカにとってはスカイボルト開発を継続することにほとんど利点がないが、同時にスカイボルト開発をキャンセルすることは、イギリスを多角的核戦力に引き込むきわめて強力な政治的道具になるということであった。しかしながら、アメリカはイギリスがとるであろう反応を予測することができなかった。
※この「アメリカ側の関心」の解説は、「ナッソー協定」の解説の一部です。
「アメリカ側の関心」を含む「ナッソー協定」の記事については、「ナッソー協定」の概要を参照ください。
- アメリカ側の関心のページへのリンク