アメリカの対応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/27 10:57 UTC 版)
「中華人民共和国国家情報法」の記事における「アメリカの対応」の解説
これらの懸念から、ファイブアイズ加盟国を中心に中国通信機器の締め出しが始まっている。特にドナルド・トランプ政権下のアメリカ合衆国は、中華人民共和国による産業・軍事スパイ行為に警戒感を顕にした。2018年に成立した2019年度国防権限法(英語版)においては、ファーウェイやハイクビジョンなど、5G・監視カメラ・人工知能(AI)関連の中国企業5社に対する政府調達禁止が盛り込まれた。さらに2020年8月には、マイク・ポンペオ国務長官が通信キャリア・アプリ・クラウド・海底ケーブルの分野で"クリーン"なネットワークを同盟国と構築するとする「クリーンネットワーク計画」を発表。2020年9月現在、30カ国以上の国の企業がこれに参加する一方で、5Gで先行するファーウェイなどをはじめとする中国企業を事実上排除する動きが広がっている。 またアメリカ合衆国司法省は、連邦捜査局(FBI)と合同の対策チーム「チャイナ・イニシアチブ」を設立して中華人民共和国の産業スパイの取り締まりを強化。国際ジャーナリストの山田敏弘氏によれば、180名ほどの中国人留学生らがFBIの捜査対象となり、追及を恐れた女子学生がサンフランシスコの中華人民共和国総領事館に逃げ込み、家宅捜索で発見された軍人の身分を隠して入国していたことを示す人民解放軍の制服を着た写真を提示して、引き渡しに応じさせるという一幕もあったという。アメリカ国内の大学や研究機関に所属する中国人の監視やビザの有効期限の大幅短縮などの措置をとられ、実際に中華人民共和国の諜報員であるとされる人物の逮捕にも至っているが、司法省検事は「氷山の一角にすぎない。中国は国家ぐるみで犯行に及んでいる」としている。このような摘発が続けられる最中、量子物理学の第一者でシリコンバレーで投資会社を設立した張首晟(英語版)が自殺している。 一方で、アメリカでは産業スパイと疑われて逮捕されながら、その後、証拠不十分で釈放された中国系アメリカ人が少なくなく、核兵器の研究施設、ロスアラモス研究所のウェンホー・リー氏。アメリカ海洋大気局のシェリー・チェン氏。テンプル大学の物理学者、シャオシン・シー氏。これらの人物について、アメリカの司法当局はいずれもスパイとして立証できず、謝罪に追い込まれている。中国系アメリカ人の団体「百人会」は2017年に「中国スパイの訴追・産業スパイ活動の分析」という報告書を公表し、産業スパイ容疑での逮捕者は「5人に1人」の割合で無実である可能性が高いとしている。
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