アメリカの対日経済制裁と仏印中立化の大統領提案
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 13:58 UTC 版)
「日米交渉」の記事における「アメリカの対日経済制裁と仏印中立化の大統領提案」の解説
「若杉要#『米国共産党調書』発行」も参照 ルーズベルト大統領は、対抗措置としてフィリピン防衛の強化および対日資産凍結をとることにした。ただし、ハル国務長官や米海軍が、強硬な経済制裁は日本の蘭印侵攻、ひいては日米衝突を招くと反対していたこともあり、ルーズベルトは資産凍結が全面禁輸をもたらさないことを確約していたという。 7月24日朝、ルーズベルトは対日石油供給の問題について次のように言及した。 「もしアメリカが石油を絶っていたら、日本はおそらく一年前に蘭領インドに赴き、アメリカは日本と戦争したであろう。アメリカは自己の利益のため、イギリス防衛のため、海洋自由のため、南太平洋から戦争を締め出す希望をもって、日本に石油を供給した。それは過去二年間役に立った」 24日午後の閣議でルーズベルトは在米日本資産の凍結を決定した。その後、野村大使を引見したルーズベルトは、日本への石油の禁輸を強く主張する世論を説得してきたが、いまやその論拠は失われつつある、日本が石油獲得のためオランダ、イギリスと戦争をすればアメリカは援英政策をとっているため事態は重大となると述べた。そのうえで、もし日本軍が仏印から撤兵すれば、中国、イギリス、オランダ、アメリカの各政府はその中立を保障すると仏印の中立化を提案した(ルーズベルトは各国が自由公平に仏印の物資を入手する方法があれば尽力するとも述べている)。 7月26日、アメリカは在米日本資産の凍結を実施した(イギリス、蘭印もこれに続き、日蘭民間石油協定は停止された)。 7月27日、本国から大統領提案の通報を受けたジョセフ・グルー駐日アメリカ大使は「これは日本が自称する困難と、これまた日本が自称する自国の安全をおびやかすABCD国家の包囲的手段とからぬけ出す、理屈にあった方法を、日本に提供している」と考え、豊田外相と会談、大統領提案の受け入れを要請した。グルーは、日本がこの提案を受諾するか否かが太平洋の平和を決定するとして懸命に説得を行ったが、豊田はあまりに重大な提案なので即答できないなどと消極的反応を示した。なお、グルーが、日本の現在の政策はドイツの圧力によって行われていると米国民一般に信じられていることを指摘すると、豊田はドイツは日本の政策決定には無関係だと強く否定したという。
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