「弟子の暴走」論の登場と麻原主犯説に関する論争
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/29 07:35 UTC 版)
「オウム真理教の歴史」の記事における「「弟子の暴走」論の登場と麻原主犯説に関する論争」の解説
事件後、メディアのオウム真理教の描き方が善悪二元論的、画一的であるとして批判したのが映像作家の森達也であった。森は「弟子の暴走」論に立脚した書籍を出版し、死刑執行直前の2018年6月4日には、森、宮台真司、田原総一朗、想田和弘、香山リカ、山中幸男、鈴木邦男、高橋裕樹、雨宮処凛らが「オウム事件真相究明の会」を立ち上げ、麻原は重度の意識障害にあり、またサリン事件の動機解明も不十分などと訴えた。 これに対してジャーナリスト江川紹子は裁判を通じて多くの事実が明らかになっているとし、「麻原の弁護人や検察官、裁判官だけでなく、かつての弟子たちが、全身全霊をかけて語りかけ、血がほとばしるように説得をしても、彼(麻原)は頑強に真実を語ることを拒んだ」、さらに著名人の利用はオウムの得意技であり、教団の勢力回復に貢献してしまうリスクについて「真相究明の会」は無自覚だと批判した。 死刑執行後に森達也は「それでも麻原を治療して、語らせるべきだった」「意識を取り戻した麻原を徹底的に追い詰めて、公開の場でとどめを刺すべきだった」などと江川に反論した。 これについて被害対策弁護団の滝本太郎弁護士は「公開の場でとどめを刺すべき」というのは制度上ありえず、新制度としても憲法上の黙秘権保障や人民裁判禁止に反したことでデマゴギーだと批判。また、森はリムジン謀議のことばかり言うが、つまり地下鉄サリン事件の2日前の1995年3月18日リムジンの中で麻原の指示を受けたという井上嘉浩の証言があって、井上が後でそれを否定していることから、麻原主犯説の根拠はないと論じるが、リムジン謀議だけで共謀共同正犯は立証されるわけではなく(同乗した他2人は不起訴)、同じ3月18日に麻原が遠藤誠一にサリン生成を指示したことや、事件当日の3月20日未明にはサリンの入った段ボール箱に麻原は『修法』という儀式を行ったことなど、ほかのこともすべて絡んで麻原は主犯とされている、したがって森は判決を読んでいないと言えると反論した。また、訴訟能力を争いたいのならば、控訴審、高裁、最高裁まで争えば良かった、「森氏は裁判所に責任があるように言っているけど、弁護人のチキンゲームで一審だけで終わってしまった」と反論した。また、滝本も理事をつとめる日本脱カルト協会は、麻原の弟子の12名に関して死ぬまで事件への自らの関わりを分析・反芻させること以外に償いはないとして無期懲役刑に減刑する恩赦申請を提出したが、一方、「真相究明の会」は弟子12名の死刑囚には触れてないと批判している。 このほか、森が第33回講談社ノンフィクション賞(選考委員の一人は中沢新一)を受賞した『A3』において一審弁護団の「弟子の暴走論」支持を表明したことに対して、日本脱カルト協会と滝本弁護士、青沼陽一郎、藤田庄市らは裏付けもなく事実関係を歪めていると抗議した。
※この「「弟子の暴走」論の登場と麻原主犯説に関する論争」の解説は、「オウム真理教の歴史」の解説の一部です。
「「弟子の暴走」論の登場と麻原主犯説に関する論争」を含む「オウム真理教の歴史」の記事については、「オウム真理教の歴史」の概要を参照ください。
- 「弟子の暴走」論の登場と麻原主犯説に関する論争のページへのリンク