「外へのジハード」の古典的定義とその内容とは? わかりやすく解説

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「外へのジハード」の古典的定義とその内容

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/03 16:37 UTC 版)

ジハード」の記事における「「外へのジハード」の古典的定義とその内容」の解説

イスラーム法シャリーア)は、正統カリフ時代イスラーム共同体ウンマ)からアラブ帝国ウマイヤ朝)、イスラーム帝国アッバース朝)へと発展していった8世紀から10世紀頃にかけて整備された。シャリーアは、初期イスラームの拡大戦争支えたイデオロギーである「外へのジハード」を以下のような観念にまとめた。すなわち、 「(外への)ジハードとは、イスラーム世界拡大あるいは防衛するための行為戦い」 というものである伝統的なシャリーア理念においてはイスラーム共同体主権確立されシャリーア施行される領域、"ダール・アル=イスラーム" دار السلام(「イスラームの家」=イスラーム世界)に全世界その人民が包摂されていなければならない。しかし、現実には「イスラームの家」の外部には、イスラームの力がおよばない"ダール・アル=ハルブ" دار الحرب‎(「戦争の家」=非イスラーム世界)が存在する。したがって、「戦争の家」を「イスラームの家」に組み入れるための努力、すなわちジハードを行うことがムスリム義務とされるのである上の定義から、イスラーム共同体支配に服さない異教徒討伐原則として正し行為であり、極端にいえば、イスラーム共同体最終的に全世界征服し異教徒屈服させなければならないという論理さえ導き出される。この論理根拠としては、『クルアーン第2章193節にある「騒擾がすっかりなくなる時まで。宗教が全くアッラーの(宗教)ただ一条になる時まで、彼等メッカ多神教徒)を相手戦いぬけ」がある。したがって二つの世界(家)の間は常に戦争状態にあり、ジハードムスリム永続的義務である以上、戦争状態がむしろ常態だとの指摘がある。 しかし同時にクルアーン』は、戦争正当なジハードたりうるのは異教徒戦い挑んできた場合限られることも示しており、第2章190節には、「あなたがた戦い挑む者があれば、アッラーの道のために戦え。だが侵略的であってならない本当にアッラーは、侵略者愛さない」とある。加えて前述第2章193後半部分に従えば異教徒から挑まれ戦争であっても相手イスラーム共同体和平を結び、「不義戦争」を停止しようとしているならば、イスラーム共同体の側も害意捨てて和平努めなければならない。つまりイスラーム共同体は、イスラームとの戦い望まない戦争の家」勢力とならば、条約を結び外交関係樹立することが可能であると理解される。これら外交関係取り結んだ諸国は「和平の家」と呼ばれ、「戦争の家」とは区別されるこうしたことから、「戦争の家」観と好戦的ジハード思想古典期成立した法学思想過ぎずクルアーン教えではないとの指摘がある。 もし、ある戦争行為を「ジハード」として遂行することが必要となった場合は、カリフスルタンなどの統治者ムフティー呼ばれる宗教指導者対し、その戦争ジハードとして認められるかどうか諮問なければならないその結果ムフティー合法であるとするファトワー発することで、統治者は「ジハード」を宣言することができる。 ジハードには、このような法的根拠が必要であり、その根拠のないものを「ジハード」とは呼べない。開戦が「防衛的ジハード」であり、法的根拠有する場合は、全ムスリムは、国家民族超えてイスラーム教徒が、直接的にであれ間接的にであれジハード参加しなくてはならない。ただし、歴史的に当該統治者臣民以外にジハード参加強制力を及ぼすことは難しかった。これに対しイスラーム共同体拡大のための侵略戦争場合参戦義務統治者家臣臣民限られるまた、イスラームジハード思想では、異教徒討伐し、その結果として非ムスリム服属させることは認められていても、征服地の異教徒対す強制改宗明確に否定されている。これは、『クルアーン第2章256節の「宗教無理強い禁物」という句を根拠にしており、『クルアーン』では、信じるのも信じないも本人の自由であることが強調されている。したがってジハード布教のための戦争であってならない。 さらにいえば、「イスラームの家」を拡大する行為とは必ずしも戦闘という手段限定されない中央アジア東南アジアでの布教のように平和的な方法によって「イスラームの家」が拡大された例も少なくない。その担い手は、これらの地域赴いたムスリム商人イスラム神秘主義者(スーフィー)の聖人たちであったまた、イスラームの家」の支配下入った異教徒たちは、イスラーム主権下で一定程度人権保障され隷属民ズィンミー」たることを強制され差別待遇甘受さぜるを得なかったが、信教の自由認められるなど比較寛大に扱われたことも少なくなかったまた、時には、「戦争の家」に住む異教徒が、「イスラームの家」に対して戦争仕掛けてくることも当然ありうるこのような場合イスラーム共同体防衛のためのジハードムスリム義務となる。 防衛戦従事する者(聖戦士)を、ムジャーヒド(単数形)およびムジャーヒディーン複数形)という。彼らに対して唯一神アッラーは『クルアーン』を通じて「神の道に戦うものは、戦死して凱旋しても我らがきっと大きな褒美授けよう」と教えジハード戦死すれば殉教者として最後の審判ののち、必ず天国迎えられる約束する一方で、『クルアーン』は「敵に背を向けるものは、たちまち神の怒り背負い込み、その行く先ジャハンナム地獄)である」と語りジハード怠ることを厳しく非難している。

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