《渡す》の敬語
「渡す」の敬語表現
自分から相手に物や権利を与える際に使う「渡す」という言葉は、「渡します」にすれば丁寧語となります。これは動詞である「渡す」を連用形「渡し」に変え、丁寧の助動詞「ます」を付けた形です。同僚や部下などに使う場合は丁寧語「渡します」で問題ありません。しかし、上司など目上の人に自分から何かを与える際には、謙譲語を使う必要があります。「渡す」を謙譲語にするためには、まずは連用形「渡し」に変え、謙譲の意味を含む接頭語「お」を付けましょう。そしてさらに謙譲の意味を含む助動詞「する」を付けて「お渡しする」という形にすれば、「渡す」の謙譲語となるのです。「お渡しする」は基本的に「する」を連用形にし、丁寧の助動詞「ます」を付けて「お渡しします」という形で使います。一方目上の人が誰かに何かを与えることを表現する場合は、「渡す」を尊敬語にしなければなりません。「渡す」の尊敬語は「渡される」で、こちらは「渡す」を未然形「渡さ」に変え、尊敬の意味を含む助動詞「れる」を付けた形となります。
「渡す」の敬語の最上級の表現
「渡す」の謙譲語「お渡しする」よりも、さらに謙譲の意味が強くなる表現もあります。それは「お渡しいたす」です。「お渡しいたす」は「お渡しする」の「する」を、謙譲語の一種である丁重語「いたす」に変えた形となります。丁重語は改まった場で使うものなので、「お渡しいたす」は「渡す」の謙譲語としての最上級の表現と言えるのです。「お渡しいたす」は基本的に「いたす」を連用形「いたし」にし、丁寧の助動詞「ます」を付けた「お渡しいたします」という形で使います。他にも「お渡し申し上げる」も、「渡す」の最上級の謙譲表現です。「お渡し申し上げる」の「申し上げる」は、「する」という意味の補助動詞になります。また、「渡す」の尊敬語「渡される」よりも「お渡しになる」と表現した方が尊敬の意味が強いです。「お渡しになる」は、尊敬の意味を含む「お」と「なる」を付けているため、「渡す」の最上級の尊敬表現となります。
「渡す」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
「渡す」をビジネスメールや手紙で使う際は、同僚や部下宛てならば丁寧語「渡します」にしましょう。例えば「明日の会議の資料は午後に渡します」という使い方ができます。取引先など特に敬意を表す必要がある人に、自分が何かを渡すことをビジネスメールで伝えたい場合は最上級の謙譲語「お渡しいたす」を使いましょう。例えば「商品の詳細についての資料は来週までにお渡しいたします」といった使い方があります。「お渡し申し上げる」を使い、「明日の会議後に新商品のサンプルをお渡し申し上げます」と表現しても良いでしょう。一方取引先の方が何かを渡すことをビジネスメールで表現したい時は、尊敬語を使う必要があります。この場合、最上級の尊敬表現「お渡しになる」を使うのが最適です。例えば「昨日のイベントの来場者にお渡しになった資料の在庫はまだございますか」という使い方ができます。
「渡す」を上司に伝える際の敬語表現
上司に自分が何かを渡す時には、謙譲語「お渡しする」を使いましょう。例えば「必要な書類は私が準備して部長にお渡しします」といったように使います。また、社長など特に敬意を表す必要がある上司の場合、最上級の謙譲表現「お渡しいたす」を使った方が無難です。例えば「新商品についての資料は社長に昨日お渡しいたしました」という使い方があります。一方上司が誰かに何かを渡すことを表現したい時には、「渡す」の尊敬語「渡される」を使いましょう。「部長が昨日Aさんに渡された書類は私が預かっています」「必要な資料はすでに社員全員に渡されましたか」というように使います。尊敬語の場合もやはり、特に敬意を表す必要のある上司の場合は、最上級の尊敬表現「お渡しになる」を使った方が良いです。上記例文は、「部長が昨日Aさんにお渡しになった書類は私が預かっています」「必要な資料はすでに社員全員にお渡しになりましたか」と言い換えられます。
「渡す」の敬語での誤用表現・注意事項
「渡す」の尊敬語「渡される」は、受身や可能の意味を表す場合もあります。そのため尊敬語として「渡される」を使っても、相手に上手く伝わらず誤解を招いてしまうおそれもあるのです。トラブルを避けたい場合、「お渡しになる」の方を使いましょう。また、「渡す」の謙譲語として「お渡しさせていただく」と表現するのは間違いです。「お渡しする」という謙譲語に、さらに謙譲の意味を含む「いただく」を付けると二重敬語になってしまいます。「渡す」の敬語での言い換え表現
「渡す」は「提出する」に言い換えられます。謙譲語は「提出いたす」、尊敬語は「ご提出くださる」です。例えば「新しい案件についての書類は明日提出いたします」「昨日部長がご提出くださった資料を確認いたしました」などといった使い方があります。他にも「送る」も「渡す」の言い換え表現です。謙譲語は「お送りする」、尊敬語は「お送りになる」と表現します。また、「届ける」を「渡す」の言い換えとして使う場合もあるでしょう。「届ける」の謙譲語は「お届けする」、尊敬語は「お届けなさる」です。特に取引先に郵送で資料などを渡す場合には、「資料は郵送にてお届けします」というように使った方が分かりやすいでしょう。この際、「お届けします」を「お届けいたします」に変えると、より謙譲の意味が強くなります。
《渡す》の敬語
渡すの敬語表現
渡すという言葉の基本的な意味には、物や人をこちらから向こうへと移動させるがあります。幅広い意味を持った渡すという言葉の敬語表現には「お渡しになる」・「渡される」・「お渡し下さい」などがあります。使い方はそれぞれ違うので確認していきましょう。「お渡しになる」は「常務がお渡しになった手紙」といった形で利用されます。基本的な尊敬表現として使われている「お渡しになる」は動詞を連用形にして名詞化したものに、尊敬の接頭辞「お」をつけて尊敬語にします。これに助詞の「に」と敬語の「なる」を加えて再び動詞化するとこの形になります。「渡される」は、「大統領から渡された勲章」といった形で利用されています。「渡される」は渡すに助動詞の「れる」・「られる」をつけて、尊敬語にしたものです。この形は受動態や可能表現と似通っているので、誤解されないように注意して利用しなければなりません。「お渡しください」の例文は「当方の見積もりを担当者様にお渡しください」になります。「お渡し」は渡すを名詞化したものに「ください」をつけたものです。厳密に言えば渡すではなく「渡してほしい」の尊敬表現となっています。渡すの敬語での誤用表現・注意事項
渡すの敬語表現を使う時に注意しなければならないのは、「お渡しさせていただく」という形で使ってしまうときです。この言葉は一見謙譲語のように見えますが、この表現は二重敬語になっています。「お渡し」という言葉にはすでに「お」という謙譲の言葉が入っているので、「させていただく」をつけてしまうと謙譲語が重複してしまうのです。この場合は「お渡しします」・「お渡しいたします」などの表現にすると適切になります。「お渡しになられてください」という使い方も、一見敬語に見えますが、二重敬語になっています。「お渡しください」という尊敬表現に「なられる」という言葉が重ねられているのです。渡すの敬語での言い換え表現
渡すの敬語の言い換え表現には、「差し上げる」・「お与えになる」・「お譲りする」の3つがあります。「差し上げる」は「与える」の謙譲語で「お渡しする」のかわりに使用することができます。「お与えになる」は、ものを渡すだけでなく、相手にあげたいときに言い換えられます。「お譲りする」は譲るの敬語表現で、謙譲語に当たります。渡すには単純にものを渡すという意味もありますが、相手にものを「受け渡す」という意味も含まれています。この「受け渡す」という面を言い換えて敬語表現にすると、「お与えになる」となるのです。- 《渡す》の敬語のページへのリンク