自由貿易
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/13 15:41 UTC 版)
自由貿易(じゆうぼうえき、英: free trade)は、関税や、数量制限などの国家の介入や干渉を排して自由に行う貿易を指す。学説としては、重商主義にもとづく保護貿易に対して、イギリスのアダム・スミスやデヴィッド・リカードらによって唱えられた。貿易が利益になるというのは経済学における最古の命題の一つであり、自由貿易はこの命題にもとづいている[1]。また、営業の自由をはじめとする経済活動の自由や移動の自由と密接に関係している[2][3]。通史は、貿易史#近世・近代および貿易史#現代を参照のこと。今日、主流経済学では、自由貿易は保護貿易よりも各国の経済発展に役立つと一般的に評価されている。
- 1 自由貿易とは
- 2 自由貿易の概要
自由貿易
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 16:28 UTC 版)
「日本のTPP交渉及び諸議論」の記事における「自由貿易」の解説
川崎研一は「日本でEPAの議論が活発になった背景は世界的なFTA競争では出遅れ、主要な輸出産業の競争力の低下が懸念されたからである。貿易自由化によって産業別の勝ち組、負け組の差はより大きくなる。農産物は輸入が増え国内での生産は大きなマイナスになり、自動車は輸出が増え、国内生産もプラスになり、電気機械は海外での現地生産が増加することになる。貿易が活発化するため、運輸や流通、商社を含めた貿易に関連する産業にとっては追い風になる。更に重要なのは『国を開く』というメッセージを海外に伝えることで、海外から資金や人を呼び込むことの方である」「貿易を自由化する国々の間では貿易が促進されるが、第3国にとっては自国との貿易がその他の国々の間に転換される可能性がある。従って、この貿易促進効果と貿易転換効果のトレードオフの関係次第では、必ずしも貿易自由化の参加国の範囲が広くなればなるほど経済効果も大きくなるとは言えない。それぞれの国にとってベストの地域的な枠組みが存在する可能性が示唆される点は、政策当事者にとっては重要な関心事となるだろう」と指摘している。 田中秀臣上武大学教授は「日本はアメリカと比べても貿易の自由度は高い。それは国際的な統計からも出ている。日本はとっくに『開国』しており、戦後ずっとその恩恵を受けている国である」と指摘している。 中野剛志は「『国を開く』という強い意志を示すメッセージ効果」があるとされるが、そのようなメッセージをアピールすることは、TPP交渉における日本の選択の幅を著しく狭めてしまうとしている。また、日本はTPPのルール作りで主導的役割を果たすことができないため、日本の国際的な影響力や交渉力は全く強化されないどころか、TPPへ参加することで、EPAやFTAの交渉との矛盾が生じてしまい、TPP以外の貿易交渉において、日本の交渉範囲を狭め、選択肢を極端に減らしてしまい、むしろ日本の国際的な影響力や交渉力は低下の方向に向かうとしている。 中野はTPPにおける経済産業省の基本的な関心は、欧米中の市場において、韓国との競争に勝ち残るということの一点に集中しており、TPPとは韓国との国際競争に勝つための手段であるとしている。しかし、グローバル化した世界において、国際競争力には、関税よりも通貨の影響が大きく、韓国企業の国際競争力の原因も通貨にあるとしている。また、EUやアメリカの不況は深刻化・長期化しており、高い失業率や需要縮小に悩んでいるため、日韓ともに欧米市場で輸出が伸ばせない可能性も十分にあるとしている。このような世界市場の情勢の中で、韓国が輸出を伸ばそうと努力しているのは、韓国がGDPの4割以上を輸出に依存する外需依存国だからであるが、日本はGDPに占める輸出の割合の比率は2割にも満たないという内需大国であり、韓国とは事情が異なるとしている。さらに、経済産業省の見立てによれば、日本がTPPへの参加を表明すれば、念願のEUとのFTA交渉への道がひらけるとし、TPPはEUとのFTA交渉の手段に過ぎないとしている。 ジョセフ・E・スティグリッツコロンビア大学教授は、東京都内での講演で「TPPは期待するほど役に立たない、悪い影響をおよぼすかもしれない可能性もある。TPPのすべてが明らかになっているわけではないが、医療や知財についても議論されており、イノベーションが失われる危険性もはらんでいる」と指摘している。 高橋洋一は「貿易自由化が望ましいとの理論は経済学の中でも200年程度の長い歴史で実証されており、世界共有財産ともいえる英知である。貿易自由化によってマイナスはあるがプラスのほうが長期的に多いことがわかっている」「自由貿易でメリットを受ける輸出関係者、消費者がいる一方で、デメリットになるのが輸入品と競合する国内生産者である。自由貿易の恩恵というのは、このメリットがデメリットを上回る」「TPPで不利益を受ける人は必ずいる。そうした人に損をさせないように最大3兆円の所得移転をしても、国全体では3兆円のメリットがあるというのが、自由貿易である」と指摘している。 若田部昌澄は「市場の拡大が望ましいのは、それによって多数派が得をするからではなく、少数派の損を上回るだけの得が発生するからである。貿易自由化は典型的なプラスサムの世界である。厄介なのは、TPP推進派の側にも、反対派の側にもかつての重商主義的な、あるいは戦略的通商政策的な、つまるところゼロサム的な世界観が見え隠れすることである」と指摘している。 原田泰は「TPPに参加するのは日本が自ら国を開き、世界の中で重要な国であり続けることを宣言するものである」と指摘している。 伊東光晴京都大学名誉教授は「TPP交渉に参加している10カ国は、地域的に拡散しており、産業特性、制度、伝統、発展の度合い、所得も異なっている。そんな中で、あらゆる規制をともにできない。一律にしたら、世界は先進国は工業、後進国は農業だけになってしまうからである」と指摘している。 国際政治学者の浅野貴昭は「TPP加盟によって農業のみならず、医療、金融、通信、政府調達等々の分野が国際競争にさらされ、海外からの単純労働力流入によって雇用は脅かされる上に、社会としてのアイデンティティーすら危うくなる、と懸念する向きもある。それに対して、TPPによって日本の医療体制が崩壊したり、移民が流入することなどありえず、そうした懸念こそ無知の産物であるとして、賛成派は反対派の声を退けるのだが、そうした懸念は、グローバル化が進む中での、国の医療システム、ビジネス環境、食品安全、人材活用といった諸分野の将来像を問う声でもあると考えるべきである」「本来、通商貿易政策とは、国際社会との関係を取り結ぶための手段の一つである。グローバル化は今や国際社会全体を一定の方向に押し流す潮流であり、日本だけがその流れから逃れることはできない。市場の自由化・統合はもはや世界規模の現象であり、少なくとも一律に国境の周りに壁を積み上げるような措置だけで何かを守るようなことは難しいと認識すべきである」「自由貿易協定は一義的には経済政策でありながらも、同時に外交ゲームの有力な手段であることは否めない。その点においては、日本のTPP交渉参加をいかに積極的に、主体的に位置付けることができるかが、今後の交渉に向けた重要な文脈となる」と指摘している。
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自由貿易
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 03:20 UTC 版)
工業化と植民地の拡大は産業資本家、商人、投機家だけでなくイギリス国民に支持され、自由貿易が推進された。東インド会社のような特権を持つ企業は、自由貿易を支持するアダム・スミスによって批判された。その一方で他国からは、イギリスが自由貿易を進めるのは強い経済力を背景とした利己的な政策であると批判された。また、イギリスはいち早く工業化を達成した地位を利用して他国を搾取しているという意見も存在した。ナポレオン戦争が終わる1815年には、物流ではハンブルクとロンドンの競争でロンドンの優位が明らかとなり、金融ではアムステルダムとロンドンの競争でロンドンが優位となった。ナポレオン戦争中は食料品が値上がりをして地主の利潤が大きく、戦後も高値を保つために地主の働きかけで穀物法が制定されると、経済学者デイヴィッド・リカードはこの法律に反対し、リチャード・コブデンやジョン・ブライトは反穀物法同盟の運動を行う。やがて穀物法や航海条例など保護貿易のための法律は廃止された。1860年には、イギリスとフランスの2国間通商条約としてコブデン=シュヴァリエ条約(英語版)が結ばれる。大陸ヨーロッパでは自由貿易がイギリスに利益を与えるものと考えられたが、実際には大陸からのイギリスへの工業製品の輸出は増加しており、イギリスは貿易赤字国となっていた。イギリスの赤字は、植民地のインドによってまかなわれた。
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自由貿易
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/28 09:07 UTC 版)
イギリスは、主な競合国であるアメリカやドイツが(カナダがしたように)高い関税に変更した時でも、自由貿易政策を堅持していた。 アメリカの重工業はイギリスよりも速く成長し、1890年代にはイギリス製の機械やその他製品が世界市場から押し出されていた。ロンドンはしかしながら、その投資の多くがアメリカの鉄道に向けられていたとはいえ、世界の金融中心地であり続けた。アメリカ側は国際海運と保険の面でイギリスにだいぶ遅れをとっていた。 イギリス国内市場へのアメリカ経済の「侵略」には対処が求められた。関税は、盛んに検討が行われたものの、1930年代までは課されなかった。そのため、イギリスの事業者はその市場を失ったり或いは再考して業務を近代化せざるを得なくなった。製靴産業はアメリカ製履物の輸入増加に直面し、アメリカ人が製靴機械の市場を引き継いだ。イギリスの企業はこの競争で肩を並べる必要があることを理解し、仕事の伝統的なやり方、労働力の活用、労使関係を再検討し、流行の需要という観点から靴を販売する方法を再考することとなった。
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自由貿易
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 05:56 UTC 版)
「イギリスの欧州連合離脱」の記事における「自由貿易」の解説
ロンドン市長ボリス・ジョンソンは、EU離脱により英国の貿易の優位性が高まると主張した。「わたしたちが恐れなければならないのは、恐怖そのものだけだ。大きなチャンスがあると思う。自由貿易をしましょう、わたし達自身を信じましょう」と彼は訴えた。離脱派は、離脱が英国がヨーロッパやその他の国々と新らたな貿易協定を発展させることにつながると主張する。Vote Leaveは、EU加盟下において英国が「自分自身の貿易取引を交渉する」ことを許されていないとした。 「英国は現在、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカなどの主要同盟国、あるいはインド、中国、ブラジルなどの重要な成長国との間で貿易協定を結んでいない。(現状では)英国にとって最善の取引をする代わりに、他の27ヶ国が合意するのを待たなければならない」 さらに「EU外では、英国は世界貿易機関での独立した発言権を持つだろう」と同組織は付け加えた。
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自由貿易
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 23:51 UTC 版)
自由貿易は第3条で定められているが、ハリスにとっては最重要の項目であった。草案では専売制度や倹約令の撤廃も求めていた(何れも内政干渉に近いとされたためか、条約には含まれなかった)。幕府は急激な貿易の拡大は国内の混乱を招くとして、日蘭追加条約に準じた内容を希望したが、ハリスはこれを拒否し、最終的には幕府も自由貿易を認めた。幕府側からの希望で、軍需品は幕府にのみ販売すること、日本からの米・麦の輸出は行わないこと、銅は余剰がある場合に幕府の支払いとしてのみ輸出できることが加えられた。第4条では阿片の禁輸が定められているが、これはハリスの方から申し入れたものである。
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自由貿易
出典:『Wiktionary』 (2021/06/19 00:03 UTC 版)
名詞
発音(?)
- じ↗ゆーぼ↘ーえき
翻訳
- アラビア語: تجارة حرة (ar) (tijāra ḥurra) 女性
- イタリア語: libero scambio (it) 男性
- ヴォラピュク: lelivated (vo)
- 英語: free trade (en)
- オランダ語: vrijhandel (nl) 男性
- スウェーデン語: frihandel (sv) 通性
- スペイン語: comercio libre (es) 男性
- タガログ語: malayang baliwasan (tl)
- 中国語: 自由貿易 (cmn), 自由贸易 (cmn) (zìyóu màoyì)
「自由貿易」の例文・使い方・用例・文例
- 自由貿易
- 北米自由貿易協定は1994年に始まった。
- 日本はガット自由貿易体制における最大の受益者の一つだったということができる。
- 私達は自由貿易には反対である。
- 高関税が自由貿易への最大の障害になっている。
- その会社は自由貿易を支持している。
- サミット参加国は、自由貿易問題を協議事項のトップにおいています。
- あの候補者は自由貿易の擁護者である。
- 自由貿易.
- 自由貿易は好ましいことだ.
- 自由貿易派.
- 彼らは反旗[自由貿易の旗印]を翻した.
- 自由貿易の道を開く.
- 自由貿易は自由競争
- 自由貿易港
- 自由貿易とは自由競争のことである
- 帝国主義者の国は2つの小さい国の間の自由貿易を阻止したがっていた
- 米国、カナダ、メキシコの間の自由貿易のための合意
- 自由貿易と保護貿易主義の間の古典的な議論
自由貿易と同じ種類の言葉
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