型システムとデータ型
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/17 21:54 UTC 版)
「C SharpとJavaの比較」の記事における「型システムとデータ型」の解説
Javaには大別して参照型(クラス型)とプリミティブ型(基本型)が存在する。参照型はjava.lang.Objectクラスから派生するが、プリミティブ型はスーパークラスを持たない。 一方、C#には大別して参照型、値型、ポインタ型が存在する。このうちポインタ型を除き、あらゆる型はすべてSystem.Objectクラスから派生する。クラス (class) は参照型であり、数値型や論理型を含む構造体 (struct) および列挙型 (enum) は抽象クラスSystem.ValueTypeから暗黙的に派生する値型である。 Javaの組み込み型 (built-in type) はプリミティブ型と呼ばれる。C#は組み込み型をJavaよりも多く持ち、すべての組み込み型はSystem名前空間に存在する型へのエイリアスである。組み込み型には以下のようなものがある。 整数型: Javaには符号付き整数のみをサポートし、符号なし整数が存在しない。C#では符号付き整数と符号なし整数の両方をサポートする。 浮動小数点数型: いずれの言語もIEEE 754準拠の32bit単精度浮動小数点数と64bit倍精度浮動小数点数を持つ。 C#ではさらに、10の累乗の形で指数部を表す浮動小数点数であるdecimal型をサポートする。decimal型は値型かつ組み込み型であるが、CLRのプリミティブではない。 文字型: いずれの言語もUTF-16ベースの文字型を持つ。 ブーリアン型: いずれの言語もtrue/falseのいずれかを表すブーリアン型を持つ。 オブジェクト型: C#では組み込み型としてobject型を持つ。Javaのオブジェクト型java.lang.Objectは組み込み型ではない。 文字列型: C#では組み込み型としてstring型を持つ。Javaの文字列型java.lang.Stringは組み込み型ではない。 文字列はいずれの言語においても不変 (immutable) なオブジェクトとして扱われるが、特殊な構築方法として文字列リテラルを利用することができる。C#ではエスケープ文字を処理しないような逐語的文字列リテラル(verbatim文字列: ヒアドキュメントを参照)をサポートする。 C#言語自体にはプリミティブ型という用語は存在しないが、.NET Frameworkの共通言語ランタイム (CLR) では、System.Type.IsPrimitiveプロパティによって、型がCLRプリミティブ型であるかどうかを判定できる。.NET言語組み込みの値型は必ずしもCLRプリミティブ型ではないが、CLRプリミティブ型はすべて値型である。 いずれの言語もプリミティブ型(もしくは値型)と参照型との間で変換するためにボックス化 (boxing) とボックス化解除 (unboxing) が可能である。これによってプリミティブ型(もしくは値型)は参照型のサブセットとみなすことができる。値型は仮想メソッドテーブルを持たず、したがってそのままでは多態性を利用できないが、C#においては、ボックス化によって値型で多態性を利用することが可能である(例えばobject型のToString()メソッドをオーバーライドすることができる)。C#では数値リテラルもオブジェクトであり、たとえば42.ToString()のようにint型のリテラルからメソッドを呼び出すことも可能である。Javaではこのような用途のためにプリミティブ型をラップするクラスが別に定義される。すなわち、42.toString()のようなインスタンスメソッド呼び出しでなくInteger.toString(42)のような静的メソッド呼び出しが必要になる。もう一つの相違点として、Javaではジェネリクスにおいてこのような型を多用するため、暗黙的なボックス化解除が可能になっている(C#ではボックス化せずにジェネリクスを利用できる)。このような変換はnullポインタ例外を発生する可能性があるが、Javaではそれがコード上で明白ではない。 C#では、structキーワードによって構造体を定義することができる。構造体にはフィールドやメソッド、プロパティなどの任意のメンバーを定義できる。引数を持たないデフォルトコンストラクタをプログラマが定義することはできないが、一つ以上の引数をもつパラメータ化されたコンストラクタを定義することはできる。デフォルトコンストラクタはすべてのメンバーを各々の既定値(通例ゼロ相当の値)で初期化する。また構造体を定義する際、メンバーのメモリレイアウトを属性によって細かく制御することができるため、P/Invokeなどによるネイティブコードとの相互運用にも便利である。また、構造体は継承元となる基底型を指定することはできず、派生型を定義することもできない。ただし任意のインターフェイスの実装は可能である。Javaには構造体が存在せず、ユーザー定義の値型を作成することはできない。 C#の列挙型は抽象クラスSystem.Enumから暗黙的に派生する値型の一種であり、組み込みの整数型をベースとしている。ベースとなる整数型のどの値も列挙型の値として有効になる(明示的なキャストは必要であるが)。このため、ビットフラグにおいてビットごとのOR演算で列挙型の値を組み合わせることが可能である。ただし構造体と違って任意のインターフェイスを実装することはできない。一方、Javaの列挙型は抽象クラスjava.lang.Enumから暗黙的に派生する参照型である。Javaの列挙型として有効な値は定義においてリストされたものだけである。列挙型の値を組み合わせるためには列挙セットクラスを使用する必要がある。Javaの列挙型では、値によって異なるメソッドの実装が可能である。JavaとC#はいずれも列挙型を文字列に変換することができるが、Javaにおいてはこの変換をカスタマイズすることができる。また、Javaの列挙型は任意のインターフェイスを実装することができる。 プリミティブ型(あるいは値型)は参照型(クラス)とは異なり、インスタンスはヒープ領域ではなくスタックに置かれる。また、(フィールドとして、あるいはボックス化された状態で)クラスの一部になることも、配列の要素になることも可能である。クラスのインスタンスはメモリ上で間接的に参照される必要があるが、プリミティブ型(あるいは値型)はその必要がない。プログラマの視点からは、C#の値型は軽量なクラスとみなせる。しかし、プリミティブ型(あるいは値型)には前述のように多数の制限がある。値型は通常nullの値をとることができないが、.NET Framework 2.0でnull許容型 (System.Nullable) が導入され、C#でも擬似的にnull値を取り得る値型が利用可能となった。 型そのものをコード上で表現するメタデータ型(メタクラス)として、Javaではjava.lang.Classを、C#ではSystem.Typeを利用する。これらはいずれもリフレクションやイントロスペクションで重要な役割を果たす。
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