Dynamic Random Access Memory
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DRAM業界
装置産業
DRAM業界を含むメモリ半導体製造業界は、黎明期の1970年代以降では、他社との技術的な差別化の余地が比較的少ないものとなっている。メモリ半導体を製造するメーカーのうち、先行するメーカーは、半導体製造装置メーカーと共に、一部は既にCPU等で開発された最先端技術(半導体製造装置メーカーがCPUメーカーとのビジネスで得たノウハウ)も取り入れ、メモリー半導体製造装置を共同開発して導入することで、生産工場を整えることになっている。開発現場を提供したことの対価として、メモリー半導体メーカーは共同開発パートナーである製造装置メーカーから安価に共同開発済みの装置を複数調達導入する。半導体製造装置メーカーは、追随するメモリ半導体メーカーへ同じ装置を販売することで利益を得る。追随するメモリー半導体メーカーが新規の独自技術を開発することは比較的少なく、半導体を高い生産性で量産するための工夫と経験が各社の差別化での大きな要素となっている。「半導体製造装置を買える程の投資資金があれば誰でもメモリメーカーとして起業できる」[要出典]とは、あまりにも極論であるが、世界的にはほとんど同種の半導体製造装置が各社の生産ラインに並んでいる事実が示すように、製造装置での技術的な差異は少ない。
シリコンサイクル
現在では、メモリ半導体メーカー各社は、パーソナルコンピュータの需要が拡大する時期(新しいWindows OS製品が登場するときなど)に合わせて、量産体制を拡大している。一方、過去には「シリコンサイクル」と呼ばれるサイクルが、半導体業界の景気の好不況の循環を主導してきた。パーソナルコンピュータの需要拡大等でメモリ製品が不足すると、価格は上昇する。メモリ半導体メーカーは、上昇した価格と旺盛なメモリ製品への需要に基づいて、将来への投資といった経営判断を下し、生産設備への拡大投資を決定する。このとき、1社が生産設備の拡大を行うだけでなく、ほとんど全てのメモリメーカーが生産設備を拡大するので、生産ラインが完成して量産に移行する頃には需要拡大は既に終わっており、各社の生み出す大量のメモリ製品がほとんど同時期に市場にあふれて価格は暴落する。こういったサイクルを過去に数回繰り返してきたため、日本の総合家電メーカーのように多くの企業は、度々訪れる莫大な赤字に耐え切れず半導体ビジネスから撤退していった。このような経緯から、1990年代中期以降、生き残ったDRAMメーカー各社は、過去の失敗を参考に、将来の需要予測に対して細心の注意を払いながら設備投資を行い、かつ価格操作や供給コントロールを行うことで、シリコンサイクルが起こらないように努めてきた。
価格低迷と大幅赤字
2000年代中盤にはSamsung、Hynix、Qimonda、エルピーダ、Micronの大手5社で業界を寡占するようになっていた。2006年末頃、(DRAM価格操作談合事件による苦境、および規格の主流がDDR2からDDR3へ思うように移行せず依然として従来型製品のコストダウンを中心とした低収益に喘いでいた)DRAMメーカー各社は、2007年初頭に販売されるWindows Vistaの登場によってPC需要が大幅に拡大するだろうと予測し、各社生き残りを賭けて我先にと一斉に生産量を増やした(この独断専行とも思える各社なりふり構わぬ増産体制は、2004年に発覚したDRAM価格操作談合事件の余波で、各社横との連絡が完全に断たれ、これまでのように大手DRAMメーカー主導による共同歩調体制が全く取れず各社疑心暗鬼になっていたことも多分に影響している)。しかしこの増産は完全に裏目に出てしまい、需給バランスが大きく崩れDRAMでのシリコンサイクルを発生させてしまうこととなった。今回のシリコンサイクルは、Windows Vistaの予想外の販売不振(Windows XPに取って代わる存在になれなかった)、米国発の金融不況による大幅な消費減、NANDフラッシュ・メモリの生産との関連、等が同時期に運悪く重なり合ってしまったことが原因と云われている。DRAM価格は、2006年末から2007年中頃までと2008年中頃から2008年末までの2年程で20分の1以下[注 5]にまで値下がりした。 DRAMの価格は主力の1Gbit品では2007年の1年間に80%程も低下し、全てのDRAMメーカーが大幅な赤字となった。2008年第算四半期の決算でもDRAM最大手のSamsung社以外の各社は大幅な赤字を記録し[注 6][9]、2009年1月23日には大手5社の一角である独キマンダ社は破産し消滅する事態にまで追い込まれた[10]。
下がり続けていたDRAMの世界市場規模は、2009年にようやく回復した[11]。しかし、その後もDRAM価格の下落は止まらなかった。サムスンは、2011年度に唯一黒字を達成したメーカーであるが、それでもDRAMで大きな利益を得ておらず、フラッシュメモリで収益を確保している。大手各社とも、大幅な赤字を計上しながらもシェアを確保するためにDRAMを生産し続けざるを得ないチキンゲームと化している。
業界再編
キマンダの破産以降は、大手による市場での寡占がより進んだ。微細化に伴い、露光装置の導入費用がさらに高くなるため、資金面での競争力の差が顕著になり、2009年から2013年頃にかけてDRAM業界の世界的な再編が行われた。
キマンダの消滅後、台湾5メーカー(Inotera、Nanya、Powerchip、ProMOS、Winbond)のうちNanyaがシェアを伸ばし、業界第5位となった。業界第4位のMicronは2008年にNanya及びInoteraと提携を結んだ。Nanyaは2012年8月に汎用DRAMから撤退した。ProMOSもグローバル・ファウンドリーズに買収されるなど、台湾5メーカーは汎用DRAMから撤退、または大手メーカーに吸収された。
かつての大手5社の中では、キマンダに続いてエルピーダも、2009年6月30日より産業活力再生特別措置法に基づいて再建を行っていた[12]が2012年2月についに力尽き会社更生法適用を申請し破綻[13]、2013年7月にMicronの子会社となった[14]。同時にエルピーダ傘下の台湾RexchipもMicron傘下に入った。業界第4位だったMicronは、業界第3位のエルピーダの買収の結果、業界第2位のHynixを抜いて新たに業界第2位となった。
こうして、2013年には業界はSamsung、Micron、Hynixの大手3社体制となった。Hynixは、2011年以来、大規模な赤字に苦しんでいたが、エルピーダ破綻後の2013年第2四半期には営業利益が1兆ウォンを超え、チキンゲームは終了したと報道された[15]。
注釈
- ^ CCDに代わる画像素子として、1988年にMicron Technology社よりOptic RAMという商品名で発売された。
- ^ 米インテルは、磁気コアメモリに代わるメモリとして、DRAM製造に着手していたが、ダイの状態では問題がないにもかかわらず、パッケージにするとソフトエラーが多発する問題に遭遇した。原因を究明すると、パッケージのセラミックスにアルファ線を放出する物質が含まれていることが判明した。インテルは、パッケージ製造元である京セラに対して、この現象を極秘にするよう要請し、DRAM用パッケージは京セラが作った特注パッケージを使用した。そのため、インテル自身がインテル・1と呼ぶ半導体巨大企業へ発展する第一歩は、ソフトエラーの対策ノウハウを秘密にすることにより、市場から競合メーカーを追い出すことから始まったとされる。なお、この事実は、電子立国日本の自叙伝 単行本において、インテル自身によって解説された。
- ^ 世界最薄DRAM開発、エルピーダメモリ。本県で生産、出荷へ 秋田魁新報 2011年6月23日
- ^ 韓国Samsung Electronics社は2009年6月17日に、サーバー向けにパッケージあたり16GビットのレジスタードDDR3モジュールを開発したと発表した。電源電圧は1.35Vで1つ4Gビットのダイを4枚内蔵している。
- ^ 512Mビット(64M語×8、DDR2 667Mビット/秒)製品の価格が2006年11月は6.5米ドルだったものが2008年12月8日0.31米ドルまで低下した。
- ^ 2008年第算四半期の決算では、Samsung社が前年同期比約78%減ながら1,900億ウォンの営業利益を、Hynix社が4,650億ウォンの、エルピーダメモリ社が245億円の営業損失を報告した。
出典
- ^ “How to "open" microchip and what's inside? : ZeptoBars” (2012年11月15日). 2016年3月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年4月2日閲覧。 “Micron MT4C1024 — 1 mebibit (220 bit) dynamic ram. Widely used in 286 and 386-era computers, early 90s. Die size - 8662x3969µm.”
- ^ 業界に痕跡を残して消えたメーカー DRAMの独自技術を持ちながらも倒産したQimonda
- ^ a b DRAM The Invention of On-Demand Data - IBM
- ^ 小林春洋著 『わかりやすい高密度記録技術』 日刊工業新聞社 2008年9月28日発行 ISBN 978-4-526-06129-5
- ^ “集積回路工学第2 講義資料: 第12回: DRAM”. ifdl.jp. 金沢大学 理工学域. 2022年1月15日閲覧。
- ^ a b c 菊池正典監修 『半導体とシステムLSI』 日本実業出版社、2006年7月1日初版発行、ISBN 4-534-04086-5
- ^ [1]
- ^ 神保進一著 『マイクロプロセッサ テクノロジ』 日経BP社 1999年12月6日発行 ISBN 4-8222-0926-1
- ^ 『負の連鎖から脱出せよ』 日経エレクトロニクス 2009年1月12日号 37-69頁
- ^ JETROニュースページ 『半導体大手キマンダが倒産−1万人の雇用に影響か−(ドイツ)』
- ^ computerworld
- ^ “エルピーダメモリ産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法の認定取得に関するお知らせ” (PDF). エルピーダメモリ株式会社 (2009年6月30日). 2011年2月12日閲覧。
- ^ エルピーダが経営破綻 会社更生法の適用申請へ - MSN産経ニュース
- ^ Micron、エルピーダメモリの買収を完了 - PC Watch
- ^ チキンゲーム勝者の笑顏…SKハイニックス、営業利益1兆ウォンの新記録 | Joongang Ilbo | 中央日報
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