ハダカムギ ハダカムギの概要

ハダカムギ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/05 02:16 UTC 版)

オオムギ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 単子葉類 Monocots
階級なし : ツユクサ類 Commelinids
: イネ目 Poales
: イネ科 Poaceae
: オオムギ属 Hordeum
: オオムギ H. vulgare
変種 : ハダカムギ H. vulgare var. nudum[1]
学名
Hordeum vulgare L. var. nudum Hook. f.[1]
和名
ハダカムギ
英名
Naked barley
Hulless barley

栽培

世界の栽培地域

オオムギは最古の栽培植物の一つであり、起源を遡るとまず原種に近いカワムギの栽培が西南アジアで紀元前7000年頃には始まり、次いでカワムギの変種であるハダカムギの栽培も紀元前6000年頃までには始まったことが考古学の研究で明らかになっている。歴史的には、ハダカムギは東アジア日本朝鮮半島)、ヒマラヤ地方(チベットネパール)、アフリカ東北部(エチオピア)などで主要な食用穀物の一つとして栽培されてきた。ヨーロッパでは、アルプス地方やベルギーノルウェーが主なハダカムギの産地であった。それ以外のオオムギ栽培地域では、カワムギの方が主に栽培されてきた。 近年は、世界のハダカムギの主な産地は、アメリカオーストラリアカナダチェコドイツなどである[2]

日本の栽培地域

日本では、ハダカムギは愛媛県香川県を中心とする四国九州で主に栽培されている。松前町(愛媛県。読みは、まさきちょう)の特産品で農林水産省の統計によると、平成19年度の日本におけるハダカムギの収穫量は14,300tで、都道府県別では愛媛が最も多く41.1%を占め、次いで香川の17.0%であった。

順位 都道府県 収穫量 (t) 全国に占める割合 (%)
1 愛媛県 5,880 41.1
2 香川県 2,430 17.0
3 大分県 2,260 15.8
4 福岡県 1,240 8.7
5 長崎県 614 4.3
6 滋賀県 574 4.0
7 佐賀県 404 2.8
8 山口県 285 2.0
9 埼玉県 227 1.6
10 岡山県 156 1.1
合計 日本 14,300 100.0

日本の作付面積

日本におけるハダカムギの作付面積は、明治10年代は40万ha台であった。最高だったのは大正初期の70万ha台で、その後は漸減したものの昭和30年代初期の作付面積は50万ha台を維持していた。その後、ハダカムギの作付面積は急速に減少し、昭和45年に10万haを割り、昭和61年には1万haを割り、平成6年に最低の3,230haをつけたが、その後やや回復し、平成19年産ハダカムギの作付面積は4,020haとなっている。

用途

日本の用途

ハダカムギは容易に皮を剥いで実が取り出せ食用に好適であることから、日本では第二次世界大戦前から精麦が食用に流通し、押麦(大麦の外皮を剥いで蒸気で加熱してローラーで平らに加工したもの)を白米に混ぜて麦飯にしたり、炒って粉に挽いてはったい粉(麦焦がし)にしたり、炒ったものを煎じて麦茶にしたりするなどして日常食として消費されてきた。また押麦が普及する大正時代以前は、粒のままでは米に比べて煮えにくいハダカムギは、予め茹でて水に浸けておいた「えまし麦」や、で荒く挽き割った挽割麦の形にして煮えやすくしたものを麦飯や雑炊などに調理して食される、米の不足を補完する主食の一つであった。

しかし、近年は米飯に比べて食味が劣る麦飯用のハダカムギの需要は少量に限られ、代わって麦味噌大豆とオオムギを発酵させた味噌)の適性が高く評価され、生産量の大半が麦味噌の原料に用いられている。また、流通する精麦の主流は、従来の押麦から、黒条線(麦種子が形成される際の水分や養分の通り道である腹溝由来の麦粒の黒い線)に沿って切断した切断麦や黒条線で切断して米粒状に剥いで米と混ざりやすくした米粒麦に変わりつつある。

大分県などでは、ハダカムギを麦焼酎の原料としても利用しており、一定の評価を得ている。

海外の用途

チベットではハダカムギを炒って粉に挽いたものがツァンパと呼ばれ、チベット人の伝統的な主食となっている。 チベット人はツァンパにジャ(チベット語バター茶のこと)を加えてこねて団子状にしたものを食べる。また発酵させてとし飲用する。

欧米ではハダカムギは主にブタニワトリなどの単胃動物の飼料用として利用されてきたが、最近では食物繊維β-グルカンを多く含むことなどハダカムギの健康機能性が注目され、新たに食用の需要が出てきている。

食味

オオムギは、コメやコムギに比べて粒に含まれるポリフェノール系のタンニン(渋成分)の含量が多い。オオムギに含まれる主なポリフェノールは、カテキンプロアントシアニジンである。ポリフェノールは精麦の白度を低下させ、米飯に比べて麦飯の食味や白度が劣る主な原因となる。麦飯の問題点として挙げられる炊飯後の変色(白度の低下)は、飯粒に含まれるポリフェノールが多いほど顕著になる。

麦粒のポリフェノール含量は、低ポリフェノール品種を用いたり精麦したりすることによって低下する。日本のハダカムギのポリフェノール含量は、品種によって差異があるが、世界の平均値に比べると低い。もっとも、食味に優れた品種が好んで育成・栽培されてきた水稲とは異なり、低ポリフェノール化によって食味を改善することは、ハダカムギの育成においてこれまでのところあまり重視されていない。オオムギの遺伝子資源の中にはポリフェノール含量が非常に低いものもあり、将来活用される余地がある。




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