トンガリロ国立公園 世界遺産

トンガリロ国立公園

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/28 09:11 UTC 版)

世界遺産

東半球における環太平洋火山帯最南端の場所(自然遺産)

トンガリロ山のエメラルド・レイク
ナウルホエ山とクレーター
ルアペフ山の火山湖

トンガリロ国立公園は、東半球における環太平洋火山帯の最南端に位置づけられる[4][5]。トンガリロ国立公園を起点に北東方向に181年に大噴火を起こしたタウポ湖1886年に大噴火を起こしたタラウェラ山ベイ・オブ・プレンティ沖合いのホワイト島までの火山群を総称した「タウポ火山帯」が伸びる。

トンガリロ国立公園内の3つの火山は、おおむね若い[5]。トンガリロ国立公園内で最初に噴火したのは、トンガリロ山で約26万年前のことである[5]。ナウルホエ山が最初に噴火したのは、約2,500年前のことであると考えられており[5]、伝統的に、ナウルホエ山の噴火周期は9年周期と考えられている[5]。もっとも、ナウルホエ山の最後の噴火は、1975年のことである[5]

トンガリロ国立公園の最高峰であるルアペフ山の最初の噴火は、トンガリロ山とほぼ同じ25万年前と考えられている[5]。ルアペフ山の頂上にほぼ近いところに、酸性の火山湖が存在する。この火山湖は、深さ100メートル、直径600メートルある[5]。水温の変化にしたがって、温度が上がるにつれ、から灰色へと変化する[5]。ルアペフ山が噴火する際には、火山湖の水がラハール_(火山泥流)と化す[5]。ラハールの発生は、ルアペフ山の噴火予知には欠くことができない[5]

1945年の噴火活動で形成された火山湖が、1953年クリスマス・イブに決壊し、ニュージーランドにおける最大の鉄道事故であるタンギワイ鉄道事故英語版の原因ともなったし、それ以後も、1995年から96年2007年にも噴火している。

1990年に世界遺産(自然遺産)に登録されるにあたり、ほかの火山との比較検討がされた。比較対象となったのは、スペインティマンファヤ国立公園英語版タンザニアキリマンジャロエクアドルサンガイ山英語版アラスカ州カトマイ山及びハワイ州の火山群である[4]。その中においても、トンガリロ国立公園は、マオリ族との文化的紐帯が強いと言う点で、ほかの火山群には見られない特徴を有していたと国際自然保護連合(IUCN)は結論付けた[4]

トンガリロ国立公園が世界遺産(自然遺産)として、登録されたのは、以下の3点の特徴を有していた点にある。第1点が、火山活動が活発であり、「理想的な自然研究室」であったこと[6]、第2点が、ルアペフ山の火山湖が頻繁な噴火によって形成されると同時に、氷河湖としての特徴をも有していたこと[6]、第3点が186年のタウポ湖噴火を初めとして、1800年間の噴火の歴史の状態が良好であった点である[7]

1990年時点での適合基準は以下の通りである。

  • 自然遺産7、8

マオリ族の聖地として(文化遺産)

ニュージーランド(マオリ語アオテアロア、Aotearoa)にポリネシア人が定住したのは、およそ1300年ごろとされる[8]。マオリ族の文化は、豊かな口承伝承によって残されており、その口承伝承は、人々とニュージーランドの織り成す風景との間の関係が中心的な役割を果たしてきた[8]

彼らのカヌー艦隊の中で、最も重要なカヌーがアラワ号英語版であり、アラワ号船員の子孫と伝えられるマオリ族の内のンガティ部族である。19世紀南オーストラリア州総督、2度のニュージーランド総督、ケープ植民地総督を歴任したジョージ・グレイは、以下のマオリ族の伝承を記録している[9][10]

ガティ部族の祖先で、アラワ号の航海者にして司祭であったナトロイランギ英語版は、探検者でもあった。ベイ・オブ・プレンティに上陸した彼は、北東内陸部へと探検する。ロトルアタウポ湖へ探検した彼は、タウポ湖の南の対岸に位置するトンガリロ山を見上げ、トンガリロ山登頂を企図した。しかし、トンガリロ山登頂時に、凍死寸前の状況にまで追い込まれた。その時に、ホワイト島に残っていた二人の妹に「火を持ってきてくれ」と頼んだ。その声が南風に乗り、妹のところまで届き、現在の環太平洋火山帯の山々が噴火し、彼のもとに、火が届いた。その結果、彼は一命を取り留めることができた[9][10]

この伝承より、マオリ語で冷たい南からの風を意味する「Tonga-riro」が山の名前につけられたのである[9]

マオリの聖地であるこの国立公園の文化的価値が評価されたことから、1993年に文化遺産登録基準が追加的に適用され、複合遺産となった。世界遺産となった文化的景観の第一号である[11]

世界遺産登録基準

この世界遺産は世界遺産登録基準のうち、以下の条件を満たし、登録された(以下の基準は世界遺産センター公表の登録基準からの翻訳、引用である)。

  • (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
  • (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
  • (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。

  1. ^ IUCN 1990, p. 58.
  2. ^ a b c d Maori history and the gift”. Department of Conservation. 2013年8月26日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j Tongariro Weather”. Department of Conservation. 2013年9月2日閲覧。
  4. ^ a b c IUCN 1990, p. 65.
  5. ^ a b c d e f g h i j k Central North Island volcanoes”. Department of Conservation. 2013年9月5日閲覧。
  6. ^ a b IUCN 1990, p. 66.
  7. ^ IUCN 1990, p. 67.
  8. ^ a b IICOMOS 1993, p. 136.
  9. ^ a b c Maori Legends of Tongariro”. ニュージーランド政府. 2013年8月28日閲覧。
  10. ^ a b Alpers 1997, pp. 286–291.
  11. ^ WCMC 1993, p. 1.
  12. ^ a b c d e WCMC 1993, p. 3.
  13. ^ National Geographic 2009, pp. 126–127.
  14. ^ a b c Flora and Fauna”. Department of Conservation. 2013年8月26日閲覧。
  15. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t Pests and weeds”. Department of Conservation. 2013年9月5日閲覧。
  16. ^ a b c d e f g h i Activities in Tongariro National Park”. Department of Conservation. 2013年9月5日閲覧。
  17. ^ Lord of the Rings Locations”. Virtual Oceania. 2013年9月5日閲覧。






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