アメリカ風中華料理
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歴史
19世紀、サンフランシスコの中国人が、主に現地の中国人により支援されることで洗練された豪華な中国料理店の経営を開始した。一方、小規模都市のレストランはポークチョップサンドイッチやアップルパイから豆や卵まで、地元の客の需要に答えた料理を提供していた。これらの小規模レストランはよりアメリカ人の舌にあった料理へと変更を加えていくことによりアメリカ風中華料理を発展させていった。当初アメリカ風中華料理の購買層となったのは鉱山労働者や鉄道労働者であり、中国人移民は中華料理について全く知られていないような町で新たな小規模食堂を建設し、地域の食材を用いて料理を作り客の要求に応えていた[1]。
次第に、チャプスイのような中国南部の料理が見られるようになり、中国本土では見られないようなスタイルの中華料理が生み出されるようになった。人種差別や、英語の流暢さに劣る点から中国人移民が賃金労働の機会を得ることができなかった時代、中華料理店は(洗濯屋とともに)彼らのような層が小規模な商売を営む余地を提供していた[2]。
2011年、国立アメリカ歴史博物館は「Sweet & Sour: A Look at the History of Chinese Food in the United States」の中で、アメリカ風中華料理に関するいくつかの歴史的背景や文化芸術面を明らかにした[3]。
中国本土の料理との違い
![](https://weblio.hs.llnwd.net/e7/redirect?dictCode=WKPJA&url=https%3A%2F%2Fupload.wikimedia.org%2Fwikipedia%2Fcommons%2Fthumb%2Fc%2Fc0%2FChinese_buffet2.jpg%2F300px-Chinese_buffet2.jpg)
![](https://weblio.hs.llnwd.net/e7/redirect?dictCode=WKPJA&url=https%3A%2F%2Fupload.wikimedia.org%2Fwikipedia%2Fcommons%2Fthumb%2F3%2F33%2FFriedWonton.jpg%2F250px-FriedWonton.jpg)
アメリカ風中華料理では通常野菜を副菜もしくは付け合わせとして用いるが、伝統的な中国料理では野菜が主役となることも多い。
炒める、揚げるはアメリカ風中華料理においては非常に多く用いられる料理技法であり、中華鍋(鑊、wok)を用いて行われる。
アメリカ風中華料理には風味を増すために大量にグルタミン酸ナトリウム(MSG)が使用されているという噂がある。中華料理店症候群もしくは「グルタミン酸ナトリウム症候群」とはMSGに過敏に反応する症状を指すが、MSGとこの症状の関連を否定する研究結果もある[4]。しかし、市場や消費者は多くのレストランに MSGを使用しないよう求めている。
アメリカ風中華料理は中国本土にはない食材や、中国本土ではほとんど使用することのない食材を頻繁に用いる。例として、アメリカ風中華料理では中国ブロッコリー(カイラン、芥蘭 - jièlán)の代わりに西洋ブロッコリー(xīlán、西蘭)が用いられる。
トマトは新大陸の植物であったため、トマトが中国料理に取り入れられたのは比較的最近である。トマトをベースにしたソースは「beef and tomato」のようなアメリカ風中華料理に見ることができる。アメリカ風中華料理における炒飯もまた作り方が異なり、香りづけのため中国本土の炒飯ではあまり使用しない醤油を多く加えている。点心(Dim sum)のような食事スタイルもまたアメリカ人の好みに合うよう導入されたものである。
アメリカ人の味覚に合わせた料理法のアレンジとしては、炒めものに衣をつける、醤油を多く使用するなどがある。炒めものでは白米の代わりに玄米を使用する。また、乳製品はほぼ必ず伝統的な中国料理では排除されているにも関わらず、粉チーズを混ぜた米を使用することもある[5]。
寿司や刺し身を含む日本料理とは対照的に、生もしくは調理していない材料を用いたサラダは伝統的な中国料理ではまれであった。しかし、アメリカ風中華料理店でも高級店を中心に客の要望に応えてこれらの食材を用いた料理を提供するようになっている。
マサチューセッツ州のウェルズリーで中華料理店を経営するミン・ツァイは、「アメリカ風中華料理は中国料理を単純化したものであり、アメリカ人に合うよう口当たりがよく、甘く、濃厚な味付けにしてきた」と語る[6]。
ほとんどのアメリカ風中華料理店では非中国人利用者に向けて英語で書かれたメニューもしくは写真をつけたメニューを提供している。中国語メニューには、通常アメリカ人が敬遠するような臓物や鶏爪のような珍味、もしくはその他の肉料理も載せている事が多い。
料理
アメリカ風中華料理レストランのメニュー
アメリカ風中華料理店でよく見られる料理には以下の様なものがある。
- アーモンドチキン(Almond chicken) - 鶏肉にアーモンドを混ぜた衣をつけて揚げたもの。アーモンドや玉ねぎとともに供される。
- 左宗棠鶏(General Tso's chicken) – 鶏肉に衣をつけて揚げ、ショウガ、ニンニク、ごま油、ワケギ、トウガラシなどで作ったソースを掛けた料理。
- セサミチキン – 骨付き鶏肉に衣をつけて揚げた後、醤油、コーンスターチ、ビネガー、鶏がらスープ、砂糖から作る、赤もしくはオレンジ色の甘くほんのりスパイシーなソースを掛けた料理。
- チャイニーズ・チキンサラダ(Chinese chicken salad) – 通常、薄切りもしくは細かく刻んだ鶏肉、生の葉野菜、パリパリした麺(もしくは揚げたワンタンの皮)から作るサラダで、ごまを周りにまぶす。マンダリンオレンジを添えて提供するレストランもある。
- チャプスイ(Chop suey) – 中国語で「ごった煮」を意味する料理。豚肉などの肉と玉ねぎ、もやし、シイタケなどを炒めた後に茶色もしくは白いソースで煮込んだ料理。
- クラブ・ラングーン(Crab rangoon) – 蟹肉のすり身とクリームチーズをワンタンの皮に詰めて揚げた料理。
- フォーチュン・クッキー(Fortune Cookie) – 日本の辻占煎餅を西洋化した料理としてカリフォルニアで開発された[7]。フォーチュン・クッキーは甘い味付けがされており、多くのアメリカ風中華料理店で食後の口直しとして無料で提供される。
- ロイヤルビーフ(Royal beef) – 牛肉の薄切りを揚げた後ワインソースをかけた料理。ゆでたブロッコリーとともに供される事が多い。
- 青椒肉絲(Pepper steak) – 肉の薄切り、ピーマン、トマト、玉ねぎもしくは青ネギから作られ、炒めた後に塩、砂糖、醤油で味付けをして供される。モヤシを用いることはあまりない。
- モンゴリアンビーフ(Mongolian beef) - 下味を付けて揚げた牛肉を、海鮮醤を用いたとろみのあるソースで青ネギと共に炒めたもの。
- 揚げワンタン(Fried wontons) – クラブ・ラングーンに似た料理で、具材(豚肉を使うことがほとんど)をワンタンの皮に包み揚げた料理[8][9][10][11][12][13]
地方のアメリカ風中華料理
- チャーメン・サンドイッチ(Chow mein sandwich) – 炒麺にグレービーソースをかけたものをサンドウィッチにした料理(ロードアイランド州、マサチューセッツ南東部)
- チキンフィンガー(Chicken fingers) – 骨なしの鶏肉に卵を使用した衣をつけて揚げた料理。前菜として出され、糖酢醤(Sweet and Sour)のソースがかけて出されるもの、ソースは添えて各自でかける形式(ニューイングランド)などがある[14]。
- チャプスイ・サンドイッチ(Chop suey sandwich) – 鶏肉を使用したチャプスイをハンバーガーのバンズに挟んだサンドウィッチ。マサチューセッツ州北部にあるセイラムのGenghis SalemとSalem Loweが扱っており、リビアのRevere BeachにあるChina Romaでも扱うようになっている。
- セントポール・サンドイッチ(St. Paul sandwich) – 白いサンドウィッチのパンに芙蓉蛋を挟んだ料理 (ミズーリ州セントルイス)。
- スプリングフィールド・スタイル・カシューチキン(Springfield-style cashew chicken) – パン粉を付けて揚げた鶏肉にカシューナッツとオイスターソースを合わせたカシューチキンの派生料理。 ミズーリ州のスプリングフィールドで見られるためこの名前が付いている。
- ヤカメン(Yaka mein) - ニューオーリンズで見られる中華料理とクレオール料理が融合した料理。牛肉麺の派生料理。
- プープー・プラッター(Pu pu platter、宝宝盤) - はじめはニューイングランドで販売されていた。プープー・プラッターは中華料理店で販売されていた大皿料理の前菜である。大皿には通常蓮粉をつけて揚げた鶏肉の指、エビ、クラブ・ラングーン、豚肉の細切りもしくはポークリブにバーベキューソースをかけたもの、牛肉の照り焼き、 揚げた鶏手羽などが盛られる。しかし、大皿に盛られる料理の内容はレストランや地域によって大きな違いがある。
アメリカ合衆国南部は中国系アメリカ人の人口が多いため、南部料理と中華料理が融合した料理が年月を経て形成されてきた。バーボン・チキンなどの料理がこれに該当する。
中国の料理をもとに発展してできた北米風中華料理
- ビーフ・アンド・ブロッコリー(Beef & Broccoli) - 牛肉を細かく刻んでブロッコリーとともに炒め、醤油とオイスターソース、コーンスターチから作るソースをからめた料理[15][16][17]。ブロッコリーをピーマンに置き換えれば「ビーフ・アンド・ペッパー(Beef & Pepper)」となる。
- 炒麺(Chow mein) – 炒めた麺を意味する料理。フライパンで焼き目をつけた茹で麺、あるいはパリパリに揚げた麺に肉と野菜から作る餡をかけて出される。餡には鶏肉、豚肉、エビ、牛肉などを使うことが多い。
- 芙蓉蛋(Egg foo young) – 野菜と肉を使用した中国風オムレツ。蟹を用いれば芙蓉蟹(かに玉)となる。通常は茶色の餡をかけて供される。オムレツは一般に中華鍋で作られるが、北米のレストランでは油で揚げて作ることもある。
- エッグロール(Egg roll) – シイタケ、タケノコ、その他の野菜を皮につめて揚げた春巻に対し、ニューヨークスタイルのエッグロールはアメリカ北東部で見られる(ただし、その他の地域では一般的ではない)料理であり、厚く弾力のある皮にキャベツや肉、エビなどの魚介類(卵は使用しない)を詰めて揚げた料理である。
- 姜牛肉(Ginger beef、生薑牛肉 - shēngjiāng niúròu、生姜牛肉) - 肉をショウガ、野菜とともに炒めた料理。
- ジンジャー・フライド・ビーフ(Ginger fried beef、乾炒牛肉絲 gānchǎo niúròu-sī) - 牛肉を細切りにして衣をつけて揚げた後、中国北部料理で一般的な甘いソースとともに中華鍋で炒めた料理。
- 胡辣湯(Hulatang) – 香辛料を使用した中国の伝統的なスープで、英語のメニューには「spicy soup」と書かれている事が多い。
- 宮保鶏丁(Kung Pao chicken) – 四川料理では麻辣味の辛い料理として有名だが、北米で供されているこの料理はこの傾向は薄く、花椒は通常使用されない。加えて、オリジナルの料理では骨を含む鶏のあらゆる部位の肉を使用するが、北米では胸肉のみ用いる。
- 拌麺(Lo mein) - 太めの中華麺を野菜(主にチンゲンサイやハクサイなどの中国野菜)及び肉とともに炒めた料理。上海炒麺や日本のソース焼きそばに類似し、この料理が炒麺として提供されることもある。
- メイフン(Mei Fun) - ビーフンを使用した料理。
- 木須肉(Moo shu pork) – オリジナルの料理ではキクラゲや金針菜(ワスレグサの蕾)などを含む中国独自の食材を用い、薄焼きの春餅を使用するが、アメリカ風中華料理ではアメリカ人に馴染みのある野菜を使用しており、焼餅も厚いものが使用される。アメリカ合衆国の中華料理店では非常に一般的な料理であるが、中国本土ではそれほど一般的ではない。
- オレンジチキン – ぶつ切りにして衣をつけて揚げた鶏肉に甘いオレンジ風味のソースをかけた料理。伝統的な調理法では炒めた鶏肉に乾燥させたオレンジピールを使用したソースをかける。同種の料理にレモンチキンやオレンジビーフがある。
- ワンタンスープ(Wonton soup) – アメリカ風中華料理店ではスープにワンタンのみ浮かべた料理として提供されるところがほとんどだが、中国の広東省ではワンタンと共に麺を入れて供されることもある(ワンタン麺)。ワンタンスープはそれ自体が立派な一品料理であり、卵麺や数種類の豚肉、ワンタンといった材料を豚肉もしくは鶏肉からとったスープで調理する。テイクアウトのレストランでは、特にワンタンは厚めの皮で作られることが多い。
- カシューチキン(Cashew chicken) – 鶏肉をカシューナッツとともに炒めた料理。
- 北京ビーフ(Beijing beef) – 牛肉とブロッコリーを使った料理。中国ではブロッコリーではなくカイランを使うことが多い。
- ^ Ch Six, "The Globalization of Chinese Food: The Early Stages," in J. A. G. Roberts. China to Chinatown: Chinese Food in the West (London: Reaktion, 2002) ISBN 1861891334.
- ^ Andrew Coe Chop Suey: A Cultural History of Chinese Food in the United States (New York: Oxford University Press, 2009).
- ^ “Sweet & Sour: A Look at the History of Chinese Food in the United States”. Smithsonian Asian Pacific American Center. Smithsonian National Museum of American History. 2013年12月17日閲覧。
- ^ “If MSG is so bad for you, why doesn't everyone in Asia have a headache?”. The Observer (2005年7月10日). 2013年12月17日閲覧。
- ^ “American Chinese cuisine”. Beijing Tourism Administration (2011年11月14日). 2013年12月17日閲覧。
- ^ “Chef Ming Tsai wants you to have a Chinese friend”. CNN (2011年1月19日). 2013年12月17日閲覧。
- ^ “Solving a Riddle Wrapped in a Mystery Inside a Cookie”. The New York Times. (2008年1月16日)
- ^ Fried Wonton, About.com
- ^ Fried Wontons Recipe, BlogChef.net
- ^ Fried Wontons Recipe, ThaiTable.com]
- ^ Fried Wontons (Zhá Yúntūn), Chow.com
- ^ Chinese New Year: Fried Wontons, FromAway.com
- ^ Fried Wontons Recipe, RasaMalaysia.com
- ^ Chinese restaurants ready for year's busiest night » Merrimack Valley » EagleTribune.com, North Andover, MA
- ^ History and Culture: Chinese Food : New University
- ^ Beef and Broccoli | Can You Stay For Dinner?
- ^ The Best Easy Beef And Broccoli Stir-Fry Recipe - Food.com - 99476
- ^ “Mu Shu Tortilla Flats: Chinese restaurant needs better mu shu wraps”. AsianWeek. (2004年2月27日). オリジナルの2007年10月7日時点におけるアーカイブ。 2013年12月17日閲覧. "Everything was well and good with one huge exception: The mu shu wrappers were flour tortillas!"
- ^ a b c d e f g h Tuchman, Gaye, and Harry G. Levine. "New York Jews and Chinese Food: The Social Construction of an Ethnic Pattern." Queens College. Web. <http://dragon.soc.qc.cuny.edu/Staff/levine/SAFE-TREYF.pdf>.
- ^ a b c d e f g Plaut, Joshua Eli. "We Eat Chinese On Christmas." The Jewish Week. N.p., 20 Nov. 2012. Web. 8 Apr. 2013. <http://www.thejewishweek.com/special-sections/literary-guides/we-eat-chinese-christmas>
- ^ a b c Miller, Hanna. "Identity Takeout: How American Jews Made Chinese Food Their Ethnic Cuisine." The Journal of Popular Culture 39.3 (2006): 430-65. Print.
- ^ “Locations - Panda Express”. Panda Restaurant Group. 2013年12月17日閲覧。
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