あく‐い【悪意】
悪意
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/06/25 15:00 UTC 版)
悪意(あくい)とは、一般には、他人を憎み、害を加えようとする気持ち、また相手の発言や行動をよくない意味にとらえることをいう[1]。対義語は善意である。
法学、とくに私法上の用語としては、道徳的な意味での善悪とは異なり、法律上の効力に影響を及ぼす事情を知っていることを悪意という[1][2][3]。この意味での悪意は、相手を害しようとする心情や悪い動機を意味するものではない。
語義
一般語としての悪意には、他人を憎み、害を加えようとする気持ち、すなわち「わるぎ」という意味がある[1]。この意味では、「悪意を抱く」「悪意に満ちたまなざし」のように、他人や物事に対する否定的な感情や害意を表す語として用いられる。
また、悪意は「発言を悪意に取る」のように、相手の発言や行動をよくない意味に受け取ることも指す[1]。この意味では、相手の言動を好意的に解釈する「善意」と対比される。
対義語の善意は、一般語では、よい心、他人のためを思う親切心や好意、また相手の言動を好意的にとらえることをいう[4][5]。したがって、日常語における悪意と善意は、他者に対する心の向きや、相手の言動をどのように受け取るかに関わる語である。
日本語では、悪意に近い語として、敵意、憎悪、怨恨などがある。ただし、これらは完全な同義語ではない。害意は相手に害を加えようとする意図、敵意は相手を敵とみなす感情、憎悪は強い憎しみ、怨恨は恨みの感情を指す場合が多い。悪意は、これらと意味領域を重ねながら、他者への否定的な心情、害する意図、またはよくない意味に解釈する態度を広く含む語である。
法律用語としての悪意
法律用語としての悪意は、一般語としての悪意とは意味が異なる。法律上、悪意とは、ある事情を知っていることをいい、善意とは、その事情を知らないことをいう[1][4][2][3]。この用法では、倫理的な善悪という要素は含まれない[2][3]。
たとえば、ある取引について、相手方と通じて虚偽の意思表示がなされたことを第三者が知っていた場合、その第三者は法律用語では悪意であると説明される。この場合の「悪意」は、第三者が害意をもっていたという意味ではなく、問題となる事情を知っていたという意味である。
法律上の善意も、日常語の「よい心」や「親切心」とは異なる。法律用語としての善意は、ある事情を知らないことを意味し、私法上、原則として善意の行為は保護され、責任が軽減されると説明される[4]。
私法における機能
私法が善意と悪意を区別するのは、取引の安全を保護し、取引を円滑にするためである[3]。ある事情を知らない取引当事者を保護する必要がある一方で、その事情を知っている当事者は、通常、同じように保護する必要がないと考えられるためである[3]。
このため、私法上は、善意者が保護され、その責任を軽減されるのが一般原則であるとされる[2]。これに対し、悪意者は、事情を知っていたことを理由として、善意者に認められる保護を受けられなかったり、より重い責任を負ったりする場合がある。
もっとも、善意であれば常に保護されるわけではない。条文や制度によっては、善意に加えて、知らなかったことについて過失がないこと、すなわち無過失が要求されることがある[3]。したがって、法律上の判断では、ある人が事情を知っていたかどうかだけでなく、知らなかったことについて注意義務違反がなかったかも問題となりうる。
日本民法における例
日本民法には、善意または悪意によって法律効果が異なる規定が複数存在する。
虚偽表示に関する民法94条では、相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効とされるが、その無効は善意の第三者に対抗することができないとされる[2][6]。この規定では、当事者間の取引が虚偽表示であることを知らない第三者が保護される一方、その事情を知っている第三者は、同じ保護を受けない。
詐欺による意思表示の取消しについても、善意で、かつ過失のない第三者との関係で、取消しの効果を対抗できない場合がある[3][6]。この場合にも、事情を知っていた第三者は、善意無過失の第三者とは区別される。
代理に関しても、代理権があると信じた第三者の保護が問題となることがあり、民法112条などが善意・悪意の区別に関わる例として挙げられる[3][6]。
不当利得では、善意の受益者と悪意の受益者とで返還義務の範囲が異なる。善意の受益者は、利益の存する限度で返還すれば足りるのに対し、悪意の受益者は、受けた利益に利息を付して返還し、なお損害があるときはその賠償責任を負う[2][6]。
占有における悪意
一般には、ある事情の存否について疑いを抱いただけでは、その事情を知っているとはいえず、悪意にはならないと解されている[2]。しかし、占有について善意・悪意を区別する場合には、悪意の意味がやや異なる。
占有における善意とは、単にある事情を知らないことにとどまらず、自己に占有を正当化する権利、すなわち本権があると確信することを意味するとされる[2]。そのため、本権の存否に疑いを抱いている場合には、悪意占有となると解されている[2]。
悪意の占有者については、民法上、占有物から生じた果実の返還などが問題となることがある[6]。この場合の悪意も、日常語の害意ではなく、占有を正当化する権利がないこと、またはその点について確信を欠いていることに関わる法律上の概念である。
例外的な用法
法律用語としての善意・悪意は、通常、倫理的な意味での善悪を含まない。しかし、例外的に、法律上の「悪意」に倫理的な意味が含まれる場合もある[2]。
その例として、裁判上の離婚原因である「悪意の遺棄」がある[2][6]。この場合の悪意は、単に事情を知っているという意味ではなく、他人を害する意思を含むものと説明される[2]。
また、離縁の訴えに関する規定にも、「悪意で遺棄されたとき」という表現が用いられている[2][6]。これらは、私法上の悪意が常に「知っていること」だけを意味するわけではないことを示す例外的な用法である。
関連項目
脚注
参考文献
悪意
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/29 22:12 UTC 版)
詳細は「悪意 (小説)」を参照 単行本:1996年9月20日 双葉社 ISBN 4575232645 単行本:2000年1月5日 講談社 講談社ノベルス ISBN 4061821148 文庫本:2001年1月15日 講談社文庫 ISBN 4062730170(解説:桐野夏生) 小説全体が、野々口や加賀の手記、回想の形式で書かれており、「なぜ犯行に至ったのか」という、ホワイダニット(動機)に重点を置いて書かれている。
※この「悪意」の解説は、「加賀恭一郎シリーズ」の解説の一部です。
「悪意」を含む「加賀恭一郎シリーズ」の記事については、「加賀恭一郎シリーズ」の概要を参照ください。
悪意
「悪意」の例文・使い方・用例・文例
- 彼女に対してなんの悪意も持っていなかった
- 悪意があってしたのではない
- 悪意のない質問
- 悪意のないちょっとしたおふざけ
- 彼女はぼくに悪意を持っているに違いない
- 悪意を持って
- 悪意のないうそ
- あなたに対しては何の悪意もありません
- 彼女のことばにはちょっとした悪意があった
- 悪意のあるうわさ話
- 悪意のある笑い
- われわれはあなたたちになんら悪意を抱いていません
- 彼女の声にはかすかな悪意があった。
- そして彼女は悪意できらめく目を私に向けた。
- リピート客が多いレストランは、ネット上の悪意のあるレビューの影響を受けない。
- 誰に対してもない悪意
- あなたは彼のメールの内容に悪意はないことを理解ください。
- 彼女は私達のグループに対して悪意をもっている。
- 彼女は悪意からそれをしたのではありません。
- 彼女はうそを言ったかもしれないが、悪意はなかったのです。
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